カーニバル社が運航するクルーズ船(サンフランシスコ発着便)で新型コロナが発症、 “アメリカの対応” が問われる状況となる

 横浜港に寄港した『ダイヤモンド・プリンセス』を運航するカーニバル社(アメリカ)のクルーズ船『グランド・プリンセス』でも新型コロナウイルスの症状を訴える乗客・乗員が発生していると日経新聞が伝えています。

 日本の1ヶ月後にアメリカのサンフランシスコで同様の事態が発生してしまいました。マスコミは「即座に下船させるべきだった」と日本の当局による対応を “糾弾” しましたが、『先行事例』を学習済みのアメリカ当局がどう対処するかが注目点と言えるでしょう。

 

 米カーニバルは4日、同社の大型クルーズ船「グランド・プリンセス」を米サンフランシスコに緊急帰港させると発表した。2月中旬に新型コロナウイルスの感染者が乗船していたことが判明し、船内を調査する。カリフォルニア州のニューサム知事は同日の記者会見で、乗客11人と乗員10人が症状を示していると明らかにした。

 カーニバルは新型コロナの集団感染が発生して多数の乗客が横浜港で隔離された「ダイヤモンド・プリンセス」も運航していた。

 

クルーズ船『グランド・プリンセス』の運航状況

 カーニバル社が運航するクルーズ船『グランド・プリンセス』の直近の運航状況は以下のとおりです。

2月11日
〜 21日
  • サンフランシスコからメキシコへのクルーズ
  • 3月4日に新型コロナで死亡する71歳の男性が乗船
2月21日〜
  • ハワイに向けて出航。サンフランシスコ帰港は3月7日の予定
  • 4日に “前回クルーズの乗客” が新型コロナでの死亡が発覚したため、予定を早めて帰港中
  • 現在の乗客2383名、乗員1100名
  • 35名が風邪の症状を訴える
  • “前回クルーズ” に引き続き参加中の乗客は62名
    → 室内に留まるよう要請

 状況としては「『ダイヤモンド・プリンセス』と同じ」と言わざるを得ないでしょう。『ダイヤモンド・プリンセス』は “香港で下船した男性” が新型コロナウイルスに感染していたことが発覚したのを機に検査したところ、多数の感染者が確認される事態となりました。

 『グランド・プリンセス』も “前回クルーズに乗船していた男性” が感染していたことが確認された時には「特段の措置が講じられずに通常どおり航行中」という状況にあるのです。

 同じ運航会社のクルーズ船ですから、ホスピタリティーやイベントも似た内容であるはずです。したがって、全乗客・乗員を対象にした『PCR 検査』を実施すれば、同様の検査結果が得られることになるでしょう。そのため、アメリカ当局がどう対処するのかが大きな注目点となるのです。

 

CDC は「結果が出るまで下船拒否」と「検査キットの空輸」で “部分対処” の予定

 検疫を行うのであれば、理想は「乗客・乗員を全員下船させた上での隔離」です。しかし、対象者が約3400人であることがネックになります。

 なぜなら、1度に3400人もの感染予備群を適切に隔離することが可能な施設は存在しないからです。

 現にカリフォルニア州は非常事態を宣言し、『グランド・プリンセス』のサンフランシスコ接岸を拒否しています。CDC は新型コロナウイルス検査キットを空輸しましたが、検査対象は「前回クルーズからの乗客」や「風邪の症状を訴えた乗客」などに限定されるでしょう。

 そこで陽性反応が出なければ、全員を(速やかに)下船させて知らぬ存ぜぬの姿勢を貫くことが濃厚です。クルーズ船は空間的な隔離を実施するに適した構造ではないため、検疫中に陽性が確認される可能性は十分にあります。

 マスコミは “隔離前の感染” であっても、検疫対応者を批判することは目に見えています。それなら、下船させた上で「クルーズ船で感染したかは不明」との姿勢を採った方が当局のダメージは小さくなるでしょう。

 医療費が自己負担のアメリカで感染者や感染経路を把握することは現実的に不可能ですから、『弱肉強食の価値観』に基づく対応が採られたとしても何の不思議もないからです。

 

朝日新聞の尾形聡彦・サンフランシスコ現支局長がジャーナリズムに基づく取材記事を執筆してくれることだろう

 サンフランシスコへの帰港に支障が出ているクルーズ船『グランド・プリンセス』ですが、日本向けの詳細な続報は朝日新聞が掲載してくれることでしょう。

 なぜなら、『ダイヤモンド・プリンセス』への日本当局の対応を批判し続けた尾形聡彦・朝日新聞サンフランシスコ支局長の “お膝元” に同様の問題を抱えている(であろう)クルーズ船が到着しようとしているからです。

画像:尾形聡彦支局長のツイート
  • クルーズ船の乗員・乗客を速やかに下船させ、密閉されていない広い空間に隔離すべき
  • 検査漏れはショックの大きいミス
  • (陰性で)下船後に感染が確認されたのは非常に重い事態
  • 再隔離せずに下船させて感染リスクを拡大した責任は大きい

 尾形記者は「『ダイヤモンド・プリンセス』への対応」を上述の主張を展開して批判していました。これらの基準で『グランド・プリンセス』への対応を批判するかが大きな注目点と言えるでしょう。

 サンフランシスコ近郊にある「隔離先候補」への言及があるはずですし、下船させた後の全乗客・乗員に対する『再隔離』を声高に要求してくれるはずです。現時点では一部の乗客にだけ室内に留まるよう要請がされているだけですから、批判要素はすでに存在しているのです。

 

 アメリカ当局やカリフォルニア州の対応およびマスコミが『グランド・プリンセス』での新型コロナウイルス発症確認事例に対して、どのような姿勢を見せるのかが注目点です。

 また、『ダイヤモンド・プリンセス』への対応とは異なる基準で論評しているなら、厳しい批判を浴びせる必要があると言えるのではないでしょうか。