カルロス・ゴーンが逃げ込んだレバノンが実質的なデフォルト(債務不履行)に陥るも、国際支援を得にくい状況に見舞われる

 日経新聞によりますと、レバノンが「3月9日に償還期限を迎えていた外貨建て国債の支払いを延期する」と表明したとのことです。

 期日までに支払いができなければ、債務不履行(= デフォルト)となります。「債務再編」が立て直し策の常套手段ですが、主要国は新型コロナによる経済的な大打撃を受けているため、レバノンの面倒を見る国が現れる可能性は少ないと考えられます。

 

 レバノンのディアブ首相は7日、まもなく償還期限を迎える12億ドル(約1260億円)の外貨建て国債について、支払いを延期すると表明した。経済の低迷や放漫な歳出で長らく財政危機に陥っていた。政府は債務再編による財政再建を目指すが、すでに破綻寸前の経済や政治混乱がさらに悪化する恐れがある。

 返済期限は9日に迫っており、初めての債務不履行(デフォルト)となる。

 

4月と6月にも償還期限を迎える国債がある

 レバノンは3月9日に返済期限を迎える「外貨建て国債」の支払いができずに “事実上のデフォルト” となりました。ただ、他にも期限を迎える債務があるのです。

  • 2020年に返済が必要となる債務と利息: 46億ドル
    • 3月9日: 12億ドル
    • 4月: 7億ドル
    • 6月: 6億ドル

 2020年の上半期で約25億ドルの返済が必要となるレバノンで、3月に期限を迎える「12億ドル(約1260億円)の返済」ができなくなりました。そのため、来月以降に期限を迎える債務についても同様の措置を採らざるを得ないでしょう。

 債権者が債務放棄などに応じてくれれば、再建の可能性は高くなります。しかし、それは出資者が損失を被ることになるため、拒絶する金融機関が出ることが予想されます。したがって、レバノンの情勢はさらに混乱することになると思われます。

 

「国家財産を差し押えることは違法」とレバノンの経財相は牽制

 レバノン政府が期待する「債務再編」ですが、レバノン国内の金融機関は『協議』に応じるでしょう。なぜなら、国が強権発動を匂わせれば、免許制である国内金融機関には従うしか選択肢は残っていないからです。

 しかし、レバノン国外の金融機関にとっては関係のないことです。

 “レバノン国外の金融機関” の生殺与奪権を握っているのは「取引に必須なドルを管理するアメリカ」と「自国の金融当局」です。レバノン当局の顔色を伺う必要はないのですから、「レバノン政府資産の差し押さえ」を匂わせて返済させる手段に出ても問題はないのです。

 もし、レバノン政府から返済させることが困難なら、その道の “プロ” に債権を売却することも選択肢です。エリオット・マネジメントのようなファンドがあるのですから、「不利な提案」は拒絶した上で誠意を要求することが金融機関の出方となるでしょう。

 

日本に支援要請が来た場合は「カルロス・ゴーンを匿い続ける国に援助は不可能」と表明すべき

 レバノンは「初めてのデフォルト」ですから、IMF (国際通貨基金)などからの支援を得て債務再編などに取り組むはずです。

 先進国が面倒を見ることになるでしょうが、多くの国が新型コロナウイルスによる影響で「国内の経済対策」が最優先課題となっている状況です。そのため、レバノンの経済破綻を回避するために尽力する国が現れることはあまり期待できません。

 なぜなら、「国内対策よりも外国のレバノンを優先するのか」と自国民(≒ 有権者)からの突き上げを受けることになってしまうからです。したがって、レバノン政府からの要請は後回しにされることでしょう。

 もし、日本政府に何らかの要請が来ることがあれば、「カルロス・ゴーンの身柄が引き渡されることが先」と難色を示すべきです。「逃亡者を匿う国を援助する行為は国民の理解が得られない」という正論が使えますから、圧力はかけておくべきと言えるのではないでしょうか。