新型コロナの影響で需要減に見舞われた産油国の協調体制が決裂し、価格競争が生じたことで原油価格が暴落

 日経新聞によりますと、(新型コロナなどの影響で)減産が必要となっている産油国間での協調交渉が決裂し、価格競争が勃発したとのことです。

 エネルギー資源を消費する工場の稼働が止まっていますし、航空機も便数が激減しています。そのため、原油需要の減少に対処しなければならない状況ですが、自国への影響を最小限にしたい産油国同士の仲間割れが起きていると言えるでしょう。

 

 産油国による市場シェアの争奪戦が本格化する。価格下支えの協調をやめたサウジアラビアとロシアに続き、アラブ首長国連邦(UAE)やイラクが生産を増やしたり、売値を下げたりしはじめた。ロシアとの協調減産が決裂したことで、石油輸出国機構(OPEC)内部の協調も事実上くずれた。新型コロナウイルスの感染拡大で需要が減るなか、原油価格には下押し圧力が増す。

 国際指標の北海ブレント先物価格は足元で1バレル34ドル近くで推移する。OPECとロシアなど非加盟産油国による協調減産の決裂でサウジが大幅な増産を表明。価格は一気に30%も下がり、年初のピークの半分となった。

 

新型コロナウイルスの感染拡大で石油資源への需要が激減

 産油国が減産に直面した理由は「新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大し、経済活動が止まってしまったから」です。

 経済活動が止まるということは「エネルギー資源を消費する工場の稼働が止まっている」ということです。つまり、需要が普段よりも大きく減少している上、元に戻る時期の目安が全く立っていない状況なのです。

 また、感染拡大の現実に直面した多くの国が「封鎖」を決断し、航空機の利用ニーズが激減。燃料需要も減少し、原油の需要をさらに押し下げることになりました。

 石油は「価格によって消費量が大きく変わる商品ではない」ため、産油国にとっては頭の痛い問題と言わざるを得ないでしょう。

 

「アメリカのシェール産業を潰したいが、自国の石油権益は確保し続けたい」が産油国の本音

 OPEC (石油輸出国機構)やロシアは「アメリカのシェール産業を潰したい」という思惑では一致しているでしょう。なぜなら、超大国アメリカという巨大市場で存在感を発揮する “(産油国にとって)迷惑な売り手” だからです。

 ただ、アメリカのシェールガスには「コストが高い」という問題点があります。需要が減少したタイミングで産油国が “結託” すれば、アメリカのシェール産業に致命的なダメージを与えらますし、市場を奪還することが可能になります。

 そのため、生産量の維持で方向性が進んだのでしょう。

 ところが、原油価格が当初見込んでいた価格よりも下がっていますと、産油国が得ている石油権益を自国に還元することが困難になります。これを防ぐためには「自分だけが増産」をする必要がありますが、それをされると他国の利益が吹っ飛ぶことになります。

 だから、どの国も「増産」を表明することになり、原油価格をさらに押し下げることになっているのです。これは産油国の経済に悪影響を与えることに直結するため、余波が生じる可能性もあると言えるでしょう。

 

産油国が「投資先から資金を引き上げること」で市場のネガティブ要素が強くなる

 原油価格が下落すると、産油国が当初目論んでいた収入額を確保することができなくなります。収入が減少するのですから、支出も減らして帳尻を合わせなければ財政赤字が膨らむことは避けられません。

 ただ、支出先の1つである「自国民への社会保障」を削ると政権への不満が大きくなるため、この分の予算は確保することが至上命令と言えるでしょう。

 そうなると、「国外に投資している資金を引き上げること」が有力な選択肢となります。つまり、市場に『売り』を注文することになるため、株価下落などに拍車をかけることになるのです。

 産油国は原油価格が戻れば、投資を再開することでしょう。しかし、投資先がそれまで持ち堪えられる保証はどこにもありません。IT 系のユニコーン企業への投資額も相当なものになっているはずですから、思わぬ形で逆風が強まることは起こり得るでしょう。

 産油国の潰し合いにも注意する必要があると言えるのではないでしょうか。