左派が絶賛するクオモ知事に「データに基づく透明性と判断力」があったなら、ニューヨークでの新型コロナの感染大爆発は起きていない

 ニューヨーク在住の津山恵子氏がアンドリュー・クオモ州知事(民主党)の新型コロナウイルスへの対応を「データに基づく透明性がある」と絶賛する記事を執筆し、Yahoo! が転載しています。

 ただ、クオモ知事は自らの判断ミスで「ニューヨークを “火の海” にした張本人」でもあるです。左派やリベラルは「クオモ知事が失政挽回のために行っている PR」を絶賛する一方で、「判断を誤った事実」を隠蔽しています。

 ニューヨークのような医療崩壊を引き起こしたいのであれば、クオモ知事の “リーダーシップに溢れる対応” を参考にすべきと言えるでしょう。

 

 3月7日 緊急事態宣言を発動。州内感染者数は76人。消費者保護局にホットラインを設け、マスクや消毒液などの便乗値上げを通報できるようにした

 州内で初めての感染者が発表されて5日目、感染者数76人で緊急事態宣言が発動されている。

 (中略)

 クオモ州知事の「自信」と「リーダーシップ」の目玉とされているのが、データに基づいた透明性だ。

 「私は医師、米連邦捜査局(FBI)、米疾病対策センター(CDC)などの専門家と毎日話している。そしてデータに従って、感染拡大の推定をしている。『どう思うか?』と聞く人がいるが、『思う』ではなく『認識している』ことを伝えている」(3月31日会見)

 

『緊急事態宣言』とは「正規の手続きを期間限定で無視できる独裁宣言」

 津山恵子氏は「ニューヨーク州の患者が76人の時点で緊急事態宣言が発動された」と初動を褒め称えています。ただ、この『緊急事態宣言』には注意が必要です。なぜなら、欧米では『緊急事態宣言』が発動されるのは珍しくないからです。

 例えば、トランプ大統領は昨年3月に『国家非常事態宣言』を出し、連邦議会を通さずに「メキシコとの壁の建設費」を通しました。つまり、これと同じ独裁権限が州知事にもあるのです。

 クオモ知事が3月7日に発表した『非常事態宣言』は「拡散防止に必要な措置を取る上で州の法規制などが措置実施の妨げや遅れにつながる場合には法規制順守を一時的に免除する」というものです。

 アメリカでは検疫に関する権限は州知事が保持しています。クオモ知事は3月7日の時点で『非常事態宣言』を発令し、自らの権限を平時よりも大きくしたのですから、3月7日以降の『新型コロナウイルスの拡散防止策』が適切か否かの責任を負う立場にありました。

 したがって、拡散防止策の内容が厳しく査定されることになるのは避けられないのです。

 

19日の時点で「ニューヨーク市に外出禁止令など出させない」と啖呵を切っていたクオモ知事

 もし、「『非常事態宣言』が出された3月7日の時点で “外出禁止令” も発令されており、その状況下で新型コロナが感染爆発を起こしてクオモ知事が必死に対応をしている」と思っているなら、それは大きな間違いです。

 なぜなら、3月19日の記者会見でクオモ知事が「外出禁止令の発令を求めるニューヨーク市長を牽制していたから」です。

 ニューヨーク市のデブラシオ市長が外出禁止令を求めたのは3月17日のこと。ニューヨーク市が発表している感染者は16日が2028人と前日15日に確認された1004人の2倍となっています。

画像:ニューヨーク市の新型コロナウイルス感染者数

 ただ、ニューヨーク市も動きが鈍かったことは事実です。これは9日時点で53名だった陽性反応者が11日は156名、12日は356名と急増しているからです。

 このデータがあっても、クオモ知事は「ニューヨーク市に外出禁止令は出させない」と述べているのです。要請があったのは "shelter in place" ですから、自宅待機や外出自粛程度の軽いものです。それすら出していなかった州知事の責任は重いと言わざるを得ないでしょう。

 

『感染拡大を抑える政策』を軽視して『検査件数を増やす政策』に突き進むと医療崩壊が起きる

 ニューヨークが新型コロナウイルスで “火の海” と化した大きな理由は『感染拡大を抑える政策』が実施されることが大幅に遅れたからです。

 感染爆発が発生すると患者数が 2〜3 日で倍になります。そのペースが続くと1週間ほどで空き病床が埋まり、医療崩壊の寸前にまで追い込まれることでしょう。だから、『感染拡大を抑える政策』をどのタイミングで実施するかが重要なのです。

表: 2の累乗数
累乗数 備考
0 1 『積極的な検査』で患者を早期に見つけ出す価値がある段階。医療リソースにも余裕があると考えられることが理由
1 2
2 4
3 8
4 16
5 32
6 64 『検査の見切り時期』を考えなければならない段階。“爆発路線” に乗っていると、猶予は1週間も残されていない
7 128
8 256
9 512 重症者だけに専念したとしても、病床不足が深刻になる段階。『検査』に労力を割り当て過ぎたことを後悔するフェーズ
10 1024
11 2048
12 4096
13 8192

 マスコミは「とにかく検査だ」と主張しますが、検査をしたところで『感染者を減らす政策』を実行していなければ、「感染者が累乗数で増えている」という結果が出るだけです。

 その結果を見たマスコミが今度は「感染者が急増しているのではないか」と騒ぐでしょう。だったら、感染者数の爆発的な兆候が見られた初期の段階で「自粛要請」など『感染拡大を抑える政策』を採ることが合理的です。

 ただ、危機管理が軽薄な人物が多い業界・界隈ほど初動が遅れがちになるため、被害が大きくなり、取り返しのつかないことになってしまいます。

 

 もし、ニューヨーク州のクオモ知事が本当にデータに基づく判断を下していたなら、「19日まで『外出自粛要請』を出さずに静観する」ようなことはなかったでしょう。「リーダーシップがある」との評価は噴飯物です。

 累計の陽性反応者数が120名ほどで徐々に増加していた3月20日からの3連休を前に『兵庫県との往来自粛要請』を出した大阪府や大阪市の首長の方がよっぽどリーダーシップがあると言えるのではないでしょうか。