韓国で採用済みの「スマホを使った濃厚接触者の洗い出し」に日本やアメリカも乗り出す意向を示すも、プライバシー権が立ち塞がる

 NHK によりますと、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために日本政府はスマートフォンの機能を使って濃厚接触者を洗い出す仕組み作りに着手するとのことです。

 韓国は「アプリ(や市中の監視カメラ)を使った徹底的な監視システム」を確立済みですが、日本などでそのまま導入することは困難でしょう。なぜなら、プライバシー権が立ち塞がるからです。

 『マイナンバー』などの紐付けを徹底的にマスコミや野党が拒絶してきた結果なのですから、「自粛」による結果を出さなければならない状況に変わりはないでしょう。

 

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大防止に情報通信技術を活用するため、スマートフォンの通信機能を使って、感染した人の濃厚接触者を把握できるアプリの導入を検討しています。

 このアプリはシンガポールで開発・導入されているもので、アプリを入れたスマートフォンを持っている人どうしが一定の距離に近づくと、相手の電話番号を暗号化したデータを互いに記録します。

 そして、仮にアプリを利用している人が感染した場合、政府の担当者が記録されたデータを解析して濃厚接触者を洗い出す仕組みです。

 政府は民間団体による日本版の開発を待って、近く実用実験に乗り出すことにしています。

 

準戦時下の韓国では国家が市民の生活を監視することが可能

 新型コロナウイルスの感染拡大を抑制している韓国ですが、その原動力は「スマホアプリによる監視」です。

 韓国は北朝鮮と戦争中という位置付けであり、大統領が強大な権限を行使することが可能です。また、過去に MERS が国内で猛威を振るった歴史から、パク・クネ政権で防疫体制が整備されている状況にありました。

 テグ(大邱)で発生した巨大クラスターの対処には失敗して医療崩壊を起こしてしまったものの、ソウルやプサンなどの主要都市圏では『アプリによる監視』が効果的に機能し、新規の感染者は散発的に封じることができています。

 ただ、韓国式には「個人のプライバシーが無視される」という問題点があります。『自由権』が著しく封じられるため、どのように折り合いを付けるかが日本やアメリカなど他国で導入する際のポイントとなるでしょう。

 

『住民番号』にすべてが紐付けられた韓国の制度

 韓国の対応策を導入するにはハードルが高いことも事実です。

  • 『住民番号』がカルテ・パスポート番号・携帯電話番号などと紐付け
  • 街中に高性能の監視カメラが多数設置
  • 感染者が発生した場合は「動線」が公表され、動線上にいた人々に『注意喚起の連絡』が来る

 韓国で『住民番号』の制度が導入された大きな理由は「北朝鮮のスパイ」をあぶり出すためです。“スパイ天国” と揶揄される日本では同様の手法を採ることは法的に不可能ですし、世論の賛同も得にくいでしょう。

 さすがに韓国でも実名は公開されませんが、「勤務先に向かう」や「帰宅する」で対象者が絞られます。また、「〇時〇分XXに入店。〇分後に退店。マスク着用あり」と足取りも言及されるのです。

 「個人のプライバシー」よりも「防疫」が優先されている状態ですから、この手法を日本にそのままの形で導入することは大きな反発が予想されます。したがって、どのようにアレンジするのかがポイントになるでしょう。

 

アップルとグーグルも開発を表明したが、『プライバシーの課題』に直面している

 スマートフォンのアプリを使った濃厚接触者の洗い出しについてはアップルやグーグルも取り組むことを表明したと日経新聞が伝えています。

 両社は「プライバシーや透明性、同意は何よりも重要だ」としている。新技術は利用者による事前の同意を前提にデータを収集する。全地球測位システム(GPS)などの位置情報は収集せず、スマホの識別情報を匿名化した上で一定間隔で更新する。誰が新型コロナに感染したかはアップルやグーグルでも把握できないという。

 日本では感染経路の洗い出しを「保健所の職員が聞き取り調査」で行っています。ただ、“言いたくない場所” を訪れたことに言及しない人が一定数でいるため、感染経路を負うことが難しい状況にあります。

 したがって、開発したスマホアプリが世間一般でどれだけ使用されるかがハードルとなるでしょう。活動家界隈は「アプリのインストール」を断固反対するでしょうし、『マイナンバー』が『(免許書や保険証など)他の証明番号』と紐付けられることにも反対すると予想されます。

 「有事を想定した議論」を拒み続けて来た “ツケ” を新型コロナウイルスの感染拡大によって払うことを余儀なくされているのですから、ひと段落が付いた後に結論を出すことが国民の責務と言えるでしょう。

 まずは外出自粛によって医療崩壊を防ぎ、対応策を打ち出せる状況を回復させることが最優先と言えるのではないでしょうか。