営業再開の目処が全く立たない状況のディズニーが “キャスト” に対する給与の支払い停止するのは理解できること

 アメリカのディズニーが従業員に対する給与支払いを停止することが明らかになったと BBC が報じています。

 ディズニーの収益源の1つはテーマパークですから、新型コロナウイルスの影響で営業ができない状況が続く現状ではテーマパークで働く従業員を雇用し続けることは不可能です。したがって、給与の支払いを停止する措置は理解できるものと言えるでしょう。

 

 米ウォルト・ディズニー・カンパニーが20日以降、従業員10万人以上に対する給与支払いを停止することが明らかになった。アメリカや欧州、アジア各国でテーマパークやホテルを運営する同社だが、新型コロナウイルスの影響で経営難に見舞われている。

 給与が停止されるのは、「キャスト」と呼ばれる全従業員の約半数。英紙フィナンシャル・タイムズによると、これによってディズニーは1カ月あたり5億ドル(約540億円)を確保することができるという。

 

「営業再開の時期が不透明」の状況で “平時の稼動状況” を前提にした雇用は不可能

 ディズニーの主な収益源は「制作した映像コンテンツ」と「コンテンツを具現化したテーマパーク」の2つでしょう。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、ディズニーでは収益源の明暗が分かれる結果となりました。

 自宅でも楽しめる映像コンテンツは好調です。これは『ディズニー+』の加入者などにも現れており、事業全体の存続が危ぶまれる状況ではありません。

 しかし、テーマパークやホテル事業は大逆風です。ディズニーの場合は “人気テーマパーク” ですから、人手が仇となっています。

 感染が収束に向かえば、来場者は回復するでしょう。ただ、いつ収束するのかが(現時点で)誰にも分からない状況であり、ディズニーであってもテーマパーク事業からの売上高はゼロです。

 したがって、普段の稼動状況を前提にした “キャスト” の雇用を続けると、企業は赤字を計上し続けることになります。だから、「給与支払いの停止」を実行せざるを得ないのです。

 

プロスポーツ選手に対し、所属チームから年俸削減の要求が出ることと同じ

 ディズニーの “キャスト” が置かれている立場は「所属チームのあるプロスポーツ選手と同じ」です。

 要するに、興行が不可能になったことで収入から対価を支払うことができなくなってしまったのです。契約によっては「給与(または年俸)を支払え」と言える立場の人も中にはいるでしょう。

 ただ、給与や年俸を支払う側の企業は収入源が途絶えている状況です。そのため、(従業員や所属選手への)支払いが “最後の仕事” となり、破産する可能性が現実味を帯びています。

 新たな雇用先があるなら良いのですが、不況が予想される現状では簡単には見つからないでしょう。しかも、「破産の引き金を引いた1人」と認識されてしまうと、企業から敬遠されるという副作用が生じることも忘れるべきではありません。

 

「来場者同士の “間合い” をどう確保するか」が人気テーマパークの大きな課題

 ディズニーだけでなく、多数の来場者が訪れるエンターテイメント業は「間合いをどう確保するか」が大きな課題になると予想されます。

 新型コロナウイルスが蔓延する以前の “きつきつ” や “ぎゅうぎゅう” はリスクが高すぎるため、余裕を持たせることが不可避な状況です。しかし、「以前よりも収益性が悪化する」と予想されるため、単価を上げるなど何らかの工夫を施す必要があるでしょう。

 来場者の人数を絞り、行列に並ぶ人同士の間合いに余裕を持たせることも現実的な対応策です。

 その場合は “キャスト” や係員の絶対数を減らすことで収益性の悪化を最小限にすることがセットになるでしょう。「ワクリンの開発」か「集団免疫の獲得」がなければ、コロナ禍が『終息』することは期待できません。

 コロナ禍が『収束』したタイミングでビジネスは再開へと動き出し、エンターテイメント業も再始動するはずです。その時に向けた準備を経営陣がするだけの余裕があるかが注目点と言えるのではないでしょうか。