日本が新型コロナウイルス対策に奮闘して結果を残すほど、『(医療の)2025年問題』で窮地に追い込まれる現役世代

 多くの国が「新型コロナウイルスの感染拡大を抑制する」という『喫緊の目標』から「経済再始動」へと推移しつつあります。

 日本もその方向に推移していくものと考えられますが、諸外国より経済を止めておく余裕はないことを認識しておかなければなりません。なぜなら、『2025年問題』という日本だけの問題が待ち構えているからです。

 外出自粛によって経済を止めたことで『2025年問題』の発生が “前倒し” されたことは否めません。5年後には確実に発生する問題への指摘が欠如しているのは政治およびマスコミの怠慢と言わざるを得ないでしょう。

 

2025年問題とは何か

 『(医療の)2025年問題』は「団塊の世代が後期高齢者である75歳以上になったことで生じる諸問題」です。これは2017年4月に NHK が時論公論で取り上げるほど、知っている人は知っている問題です。

  • (2025年には)75歳以上だけで約2200万人になる
  • 社会保険料(医療・介護・年金)の大部分は75歳以上が消費
  • 病院を必要とする患者数が増加し、病床不足が懸念材料

 特に影響が大きいのは「社会保険料の負担」です。政治が対策を講じることができない約150兆円ほどの規模にまで増加することになるでしょう。

画像:巨額の財政負担になることが確定的な社会保障費

 そうなってしまう理由は75歳以上の国民は1人あたり「90万円の医療費」と「50万円の介護費」(それに年金)が必要になるからです。

画像:高齢者に費やされる社会保障費

 しかも、75歳以上は後期高齢者ですから、医療費の自己負担分は1割です。現役世代と同じ「3割」にするだけでも社会保障制度は “延命” できるのですが、どの政党・マスコミも消極的です。

 したがって、現役世代には「増税」と「社会保険料(または比率)の引き上げ」という “さらなる地獄” が待ち構えていると言わざるを得ないでしょう。

 

「高齢者の生活費」を国債を使って「将来世代から前借りすること」が常態化していたのが問題の発端

 なぜ、日本だけが『2025年問題』を抱えることになったのかと言いますと、高齢者の生活費を国債で賄うことが常態化しているからです。

 国債は「将来世代からの前借り」であり、実際に借金の返済義務である将来世代は「今の現役世代の決定事項」に対する拒否権はありません。だから、「国債を発行して予算編成をしよう」という主張が全会一致に近い形で通ってしまうのです。

画像:歳入と歳出の変化(1990年と2014年)

 2014年に厚労省が発表した資料(PDF)でも、社会保障費の増加を賄うための赤字国債が増加していることへの言及があります。常態化している根拠は税収の推移(PDF)を見れば一目瞭然でしょう。

画像:歳入と歳出の推移

 実は平成元年度(1990年度)に記録した歳入額は平成31年度(令和元年度)に安倍政権が破るまでは歴代トップの数値でした。つまり、税収が落ち込んでいる中で「高齢者を保護するために赤字国債が発行され続けてきた」のです。

 これが “今も” 財政難に苦しむ最大の要因となっているのです。前提となっている部分を変えようとしないのですから、行き着く先は『破綻』しか残されていないでしょう。

 

高齢者を “天然記念動物” 並みに法で守ったら、数が増え過ぎて “害獣” になっただけのこと

 昔は高齢者の絶対数は少なかったでしょう。事件や事故に巻き込まれたり、現代医療では当たり前のように救われる疾患でも命を落としていたからです。そのため、当時は天然記念動物と変わらない水準で(資金を出してでも)守る価値はありました

 しかし、現代は違います。高齢者がいるのは当たり前。絶対数が増え過ぎたことで社会保障費が莫大となるなど弊害が無視できないレベルに達していることは厚労省の資料(PDF)からも明らかです。

画像:人口ピラミッドの推移と将来推計
  • 1990年度(実績)
    • 75歳以上: 599万人(5%)
    • 65〜74歳: 894万人(7%)
  • 2017年(実績)
    • 75歳以上: 1748万人(14%)
    • 65〜74歳: 1767万人(14%)
  • 2025年
    • 75歳以上: 2180万人(18%)
    • 65〜74歳: 1497万人(12%)

 30% 弱を占める高齢者の面倒を見ながら、現役世代が子育てなどにも余裕を持って当たることは不可能です。昔は『養育費』だけだったから少子化が進まなかっただけです。

 今の現役世代は “スタートの段階” で『高齢者の生活費』を背負っているのですから、子供を持てるのは「ハンデを背負った上で養育費を出せる人」か「先のことをあまり考えていなかった人」が多数派でしょう。

 将来のことを考えられる人は「子供は欲しいけど金銭的に無理」と判断することは当たり前です。現役世代や将来をより長く担って行くはずの若者を絶望の淵に追い込んでいるのは「年金受給資格を得る年齢に達した高齢者」であることを知っておくべきでしょう。

 

新型コロナウイルスが開いた “地獄の釜の蓋”

 新型コロナウイルスの感染拡大は「国民の協力」により、日本では(欧米諸国と比較して)大きな被害を出さずに乗り切ることになることが濃厚です。ただし、その先に待っているのは地獄です。

 まず、感染拡大を抑制することで経済活動を止めました。これにより、社会保障費の財源であった保険料が(経済活動が停滞したことによる)減収によって落ち込むことが濃厚です。

画像:社会保障の給付と負担

 社会保障制度の財源は「現役世代の所得にかけられた保険料率」であることは厚労省(PDF)も認めており、その合計額は約 30% です。

画像:社会保障各制度の保険料率

 この所得水準を維持することができていれば、『2025年問題』で団塊の世代にかける社会保障費の負担が問題になるのは「2025年以降」だったことでしょう。しかし、自粛で所得が落ち込むことは確実ですから、『2025年問題』が表面化するのは「2025年よりも前倒し」となる可能性が大です。

 おそらく、「次のパンデミックに備えるための予算を出すべき」との大合唱が起きるでしょうが、そうしたことに費やすことができる予算はありません。

 しかも、政府は増え続ける社会保障費を「GDP の割合で見れば変わっていない」との説明で乗り切る考えでした。

 これを満たすには2025年度の GDP は645兆円にしなければなりません。2018年度の GDP が564兆円で、2019年度は(名目で)554兆円と黄信号が灯っている状況でなのです。官僚に “霞ヶ関文学” を要求したところで「無理なものは無理」と言わざるを得ないでしょう。

 

コロナ禍に乗じて高齢者の死者を増加させる環境を作って “一掃” する冷徹さを持った政治家はいないだろう

 『2025年問題』は団塊の世代が後期高齢者となることで「病床不足から必要な治療が受けれないこと」も問題となっています。だったら、今回のコロナ禍を悪用する冷酷な政治家が1人はいて欲しいところです。

  • 自粛要請で一般病院を経営難に追い込み、(物理的な)病床不足を起こす
  • 新型コロナ対応で医療従事者を叩き、(人的な)病床不足を起こす

 絶対数が増え過ぎた高齢者を延命するための予算を惜しげもなく費やすから、財政危機に陥るのです。現実的には「後期高齢者であっても自己負担は3割」、「治療は現役世代から優先のトリアージを法として規定」、「高齢者への社会保障費は総額規定」が “落とし所” でしょう。

 しかし、政治家やマスコミはこうした『主張した人が大きな反発を受ける議論』から逃げてばかりです。

 「解雇など許さない」という論調が支持される国ですから、「高齢者の切り捨ては許さない(= 現役世代が我慢をしろ)」となり、最終的には国民全員が財政破綻国家で生活を強いられることになるのは規定路線です。

 2017年の実績で1748万人もいる75歳以上の高齢者を(ノーガードの場合は42万人が死亡と見積もられた感染症から)主に守るために経済を止める決断をする国なのです。

 

 瓦解する前に「損切り」をする必要がありますが、そうした対応が採られることはないでしょう。

 “20年以上の先の有権者” を見据えた決断をできる政治家は滅多にお目にかかることはできません。「ほとんどが目先の選挙を気にする政治屋」と「高齢者を相手に商売をするマスコミ」なのですから、現役世代にとっての地獄はこれからが本番と言えるのではないでしょうか。