「『陰性証明書』を活用して入国制限を緩和しよう」と呼びかける中国からの提案に現時点で乗ることは得策ではない

 日経新聞によりますと、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために各国が採用している入国制限に対し、中国が『陰性証明書』を活用することで制限の緩和を打診しているとのことです。

 この提案に日本は乗るべきではないでしょう。「検査日の陰性」は「来日時の陰性」を証明しないものだからです。

 新型コロナウイルスは “海外から持ち込まれた感染症” である以上、現状の「14日間の隔離」を緩和するメリットはありません。少なくとも、現時点での緩和は時期尚早と言わざるを得ないでしょう。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための入国制限について、中国が感染していないことを示す「陰性」などの条件付きで日本側にも緩和を打診したことがわかった。中国は韓国にすでにビジネス目的の入国を認め、正常化を徐々に進めている。日本は緊急事態宣言の延長などに踏み切っており、中国側の提案に慎重姿勢を崩していない。

 (中略)

 出張者はまず出発の72時間以内に韓国内の保健当局が指定する医療機関でウイルス検査を受け、陰性を証明する確認証の発行を受ける。中国への入国後に再びPCRなどの検査を受け、再び陰性と判断されれば入国が認められる。中韓が「ファスト・トラック」と呼ぶ仕組みだ。

 

「14日間の隔離」を受け入れれば、現状でも入国は可能

 まず、日本と中国を行き来することは現状でも可能です。ただし、「14日間の隔離」が必須であり、ここがネックになっています。

 この方式が採用されている理由は「偽陰性が起こり得る『PCR検査』では “真の感染者” を捕捉し切れる保証がないから」です。

 一方で「14日間の隔離」なら、対象者が発症してもウイルスを撒き散らす範囲は最小限に抑えることが可能です。無症状者であったとしても、14日後に周囲を感染させるだけのウイルスを撒くリスクは「ほぼゼロ」ですから、対応は合理的です。

 今の日本に中国が韓国との間で運用を始めた『ファスト・トラック』に歩調を合わせるメリットは皆無であるため、スルーすべき案件と言えるでしょう。

 

中国と韓国は『(精度の乏しい)自国製PCR検査キット』の需要を増やしたい思惑がある

 中国と韓国に共通するのは「自国製の PCR 検査キットを他国に売り込むことで需要を作りたい」という点です。ただ、精度が乏しいため、売り込み先から酷評されていることが現状です。

 もし、希望者が『PCR 検査』を受けられるなら、検査キットの販売を手がける企業が群がることでしょう。『PCR 検査』は保険適用ですから、(楽天やソフトバンクなどの)販売を熱望する企業は大儲けができます。

 検査希望者は「陰性結果」で安心を手にし、検査キットの販売に携わった企業は “少しばかりの対価” を手にするだけですから、押し切ることは不可能ではありません。

 なぜなら、ビジネス客で『前例』を作ってしまえば、「次は観光客も同じ基準で入国制限を緩和しよう」となるからです。中国は「中国人観光客によるインバウンド収入」で他国に圧力をかけたいのですから、そうした動きが含んでいることを見落とすべきではないでしょう。

 ちなみに、希望者全員に『PCR検査』を保険適用のまま実施した場合に泣きを見るのは「保険料率がアップする一般的なサラリーマン」と「防護服などの医療資源を浪費する医療従事者」です。

 中国や韓国に強い親しみを持っているマスコミは日本を平気で売り渡しますから、『中国からの提案』に理解を示した先に待ち受けているのは「日本にとって良くない未来」と言わざるを得ないでしょう。

 

入国制限を緩和するのは日本国内での新型コロナウイルス対策が固まった後で十分

 中国はコロナ禍でも尖閣諸島にある日本領海内に船舶を送り込み、日本の漁船を追い回すなどの行為をしているのです。そのような国と関係強化に動く時期ではないことは明らかです。

 したがって、入国制限の本格的な緩和は日本国内の新型コロナウイルス対策が固まった後で段階的に行われるべきです。

 日本は感染症の発症事例が少なく、第2種感染症病床は全国で約2000床です。「少なすぎるのでは?」との印象を持つ人が多いと思われますが、「8日ほどの病床滞在期間」で「使用率は 5% を下回る」ことが現状なのですから、十分確保されていたと言えるでしょう。

 そのため、対応の基本となるのは『水際対策』であり、水際対策に法的根拠を持たせることが喫緊の課題となります。

 「訪日外国人観光客は本人が知らない間に感染症を持ち運ぶ可能性がある」との懸念は以前から出ていたでしょう。ただ、左派界隈が「差別だ」などと騒ぐこともあってか具体的な対応が採られていたとは言えません。

 「観光地の医療資源は脆弱であること」は感染症に限らず問題になっていたことです。コロナ禍を機に「医療精度のあり方そのもの」を見直さなければならないはずです。「中国からの『陰性証明書』を使った規制緩和は現状では後回しで十分」と言えるのではないでしょうか。