新聞業界の闇である「押し紙問題」で販売店主側が新聞社に対する判決が佐賀地裁で下され、業界への逆風要素と化す

 購読者数を大幅に超過する部数の買取を求められていたことで廃業に追い込まれたと新聞販売店主の男性が佐賀新聞を訴えていた件で「地裁が『押し紙』と認定して賠償を認めた」と NHK が報じています。

 押し紙問題は「新聞業界全体が結託した詐欺行為」ですから、これが明るみに出た影響は大きいと言えるでしょう。なぜなら、広告主から代金返還訴訟を起こされてしまうリスクを高めることになったからです。

 

 佐賀県吉野ヶ里町で新聞販売店を営んでいた男性は、購読者数を大幅に超える部数の買い取りを求められる「押し紙」によって廃業に追い込まれたとして、佐賀新聞社に1億円余りの賠償を求めていました。

 裁判で佐賀新聞社は「合意のうえで販売目標を設定していて、部数を減らす具体的な申し出もなかった」などと主張していました。

 15日の判決で、佐賀地方裁判所の達野ゆき裁判長は「独占禁止法に違反し、購読料を得られない数百部を仕入れさせた」として「押し紙」にあたると指摘し、佐賀新聞社に1000万円余りの賠償を命じました。

 

『押し紙』が抱える問題

 押し紙とは「新聞社が各販売店に押し付ける形で売りつけている聞」のことです。

 新聞は読者の手元に渡るまでに「破損」や「配達漏れ」が一定の割合で生じるため、ある程度の予備を購入することに問題はありません。しかし、これが “明らかに予備の限度を超える” となれば、『問題』となるのは当然です。

 新聞社は「各販売店に下した部数を販売部数」から算出した代金を広告主に請求します。ところが、押し紙は “実際の読者に販売されている部数” を水増ししているのです。

 業界ぐるみで広告主に対して実態とはかけ離れた代金請求を行っているのですから、新聞業界の闇は深いと言わざるを得ないでしょう。

 

実売部数の減少で業界内での立場が下だった新聞販売店の経営が行き詰ったことで延焼

 この問題が明るみに出始めたのは「新聞の実売部数が減少したため」です。『新聞社が売りたい部数』と『販売店が売れると見込む部数』の乖離が大きくなり、立場が強い新聞社が売上高維持のために部数の押し付けが始まったことが発端です。

 「これだけの部数を引き取ってもらわないと契約を続けることは難しい」と間接的に仄めかされると、下請けに過ぎない新聞販売店は “了承” せざるを得ません。

 『下請けいじめ』と大企業を批判していたマスコミが実は自分たちもやっていたことが明るみに出ただけなのです。

 以前は「実売部数に基づく講読料収入」があったため、販売奨励金などで各販売店に “キックバック” がされていました。しかし、読者の絶対数が減少すると講読料収入を販売店に回すことが難しくなります。その結果が販売店に経営難として現れるのです。

 新聞業界の奇妙な金の流れが『押し紙問題』を生み出す温床であると言えるでしょう。

 

「配送と集金に特化した呉越同舟モデルの新聞販売店」が存在を否定されていることが全てだろう

 新聞販売店のビジネスモデルが行き詰まるのは「1社のみを取り扱うこと」という制約があるからです。だから、新聞社からの “お願い” が事実上の命令となってしまうのです。

 現実的には「複数社の新聞を配送・集金するモデル」への変更が落とし所になると考えられます。

 要するに、読売・朝日・日経・地方紙など複数社の新聞を配送する “代理店モデル” で生き残りを図るのです。保険業界では『ほけんの窓口』という代理店ビジネスがありますから、このモデルをベースに新聞販売店網を構築することで生き残りを図るべきでしょう。

 新聞社側にも「代理店を使うか」と「直営店を出すか」の選択肢がありますから、“下請けいじめ” ができなくなるだけで経営力次第で業績を保つことは可能と言えるはずです。

 軽減税率の恩恵を受けている新聞社ですが、報道内容だけでなくビジネスモデルにおいても優遇措置を受けるに値しないと考えられます。コロナ禍で税収の落ち込みが深刻となることが確定的なのですから、新聞社に対する軽減税率を剥奪すべきと言えるのではないでしょうか。