2020年7月に “満員の観客が見守るスポーツイベント” が開催できないなら、オリンピック用の巨額予算の大半が不要になるのでは?

 読売新聞によりますと、東京オリンピックの追加費用(の一部にあたる700億円)を IOC が負担するとのことです。

 ただ、大会が開催できるかが不透明である上、新型コロナウイルスへの感染対策を踏まえると「観客」が不在となる可能性も否定できません。状況によっては『巨大施設』への投資そのものが不要となるでしょう。

 

 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は14日、新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期された東京五輪に、追加で6億5000万ドル(約700億円)を負担することをテレビ会議による理事会で決めたと明らかにした。このほか、1億5000万ドルを国際競技連盟や各国・地域のオリンピック委員会の支援に充てるとし、感染拡大への対策で計8億ドル(約860億円)の支援になると説明している。

 (中略)

 IOCと東京大会組織委は、大会延期で生じる数千億円規模の追加費用の負担について協議しており、組織委は開閉会式の簡素化などの経費節減策を検討している。新型コロナウイルスの感染拡大という前例のない事態を受け、組織委はIOC側に応分の負担を求めている。

 

今冬に第2波が来る前提なら、五輪本番が行われる7月の国内状況が指標となる

 2020年に行われる予定だった東京五輪は「2021年7月」に延期となりました。本番は2021年7月ですが、延期になった理由は「新型コロナウイルスが世界中で感染拡大を起こしたことです。

 「今冬に “第2波” が来るのでは?」との予想も出ており、仮にそうなった場合の備えも必要になります。

 日本国外で発生している場合は「水際対策の徹底」が前提です。事前に入国ビザを申請させた上、「14日間の隔離」を義務付ける法改正などが課題となるでしょう。

 面倒なのは「日本国内で今冬に新型コロナウイルスが再流行した場合」です。この場合は「五輪本番までに収束させていること」が条件となります。

 “正常化に要する時間” は2020年での対応が先行指標です。

 したがって、今年7月に観客を入れたスポーツイベントを開催することができない状況にあるのであれば、2021年5月に新型コロナウイルスの患者が発生した時点でオリンピックは無観客を覚悟する必要があるでしょう。

 

『新しい生活様式』では「マスコミの囲み取材」が不可能となる上、五輪用のメディアセンターなど “以ての外”

 世界の感染症対策は「封じ込め」と「接触機会の削減」の徹底が基本になっています。

 「(獲得免疫と自然免疫の合わせ技である)集団免疫」を主張する非主流派もいますが、こちらが主流派になる可能性は現時点では低いでしょう。したがって、2021年の時点では『新しい生活様式』に則った大会運営を余儀なくされることが濃厚です。

 そうなると、観戦や取材で困ったことが発生します。

 まず、8万人を収容できる陸上競技場は不要です。多数の観客が集まって密集する環境は集団感染(=クラスター)の発生源になり得るからです。ビールを飲んだ観客が大声援を送る野球やサッカーが無観客ですから、同じ条件のオリンピックも無観客で実施すべきは当然です。

 また、取材についても「不特定多数の記者が選手にコメントを求めることは困難」です。そのため、代表記者1名(と通訳)による試合直後のコメント取りのみに限定されるべきでしょう。

 サッカーのリーグ戦を再開させたドイツや再開に向けて動いているイタリアでは取材班の人数を極力限定しています。世界最高峰の感染症対策が求められるオリンピック取材では「最低でも同等」とせざるを得ません。

 したがって、『三密』の条件が揃う “オリンピック取材のためのメディアセンター” は論外となりますし、日本の各テレビ局が「メダリストを自局ブースに呼ぶ」という手法も改める必要が出ているのです。

 コロナ禍によって厳しい状況に置かれているのはワイドショーで好き勝手に放言を垂れ流しているテレビ局も同じと言えるでしょう。

 

「密集不可」なのだから、開会式や閉会式も根底から覆されることになる

 オリンピック(やパラリンピック)では競技中の懸念も去ることながら、開会式や閉会式も問題となるでしょう。なぜなら、選手などが密集・密接した状態が長く続くからです。

 「それでも問題ではない」と言える根拠があるなら、オリンピックが実施される前に他のスポーツイベントがコロナ禍が発生する前の状態に戻っているはずです。

 しかし、現状ではその見通しすら立っておらず、開会式や閉会式の演出そのものを見直さざるを得ない状況です。

 選手・役員・来賓などの V.I.P. は『密』を回避するための措置が重点的に採られることは予想されます。

 その一方で “大会運営に欠かせない” ボランティアにまで配慮が行き渡る可能性は低いことでしょう。「ボランティアの待機場所」は『密』の条件が揃うはずですから、クラスター対策班が成果を出す必要があるのはこうした分野であるべきです。

 感染症対策的には「オリンピックは開催すべきでない」が現状での結論なのです。

 「 “コロナ禍の第1波” を今年7月の時点で終息させてスポーツイベントを正常化させられないなら、今冬に第2波が来た時点でオリンピックは中止とすべき」と専門家会議は提言しておくべきなのではないでしょうか。