ドイツが新型コロナ対応で行う『消費税引き下げを含む景気対策』を日本でも要求するなら、『財政改革の実施』が前提条件

 新型コロナウイルスが感染拡大をしたことで経済が悪化したことに対し、ドイツ政府は消費税率の引き下げを柱とする景気対策をまとめたと NHK が報じています。

 景気対策の規模は日本と同等ですが、『消費税率の引き下げ』に反応する人が(日本には)多くいることでしょう。

 残念ですが、日本で消費税率の引き下げは極めて困難です。ドイツが消費税率を引き下げても問題がないのは「財政黒字を継続していたから」であり、日本が同じ方針を採用するのであれば、『シュレーダー改革』や『メルケル改革』を実施して成果を出しておく必要があると言えるでしょう。

 

 ドイツの連立与党は3日、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の悪化に対応するため、2020年から2021年にかけて総額1300億ユーロ、日本円にして、およそ16兆円規模の新たな景気対策を実施することで合意しました。

 この中では、日本の消費税にあたる付加価値税を来月1日から半年間、19%から16%に引き下げ、食料品などに適用されている軽減税率についても、7%から5%に引き下げることが盛り込まれています。

 

良好な財政状況にあったドイツだから、(期間限定の)減税措置を採ることが容易

 まずは、ドイツ政府の財政状況を確認すべきでしょう。これは財務省が日本の財政との比較をする際の資料(PDF)で言及しています。

画像:ドイツの財政収支

 ドイツは2014年から財政黒字を継続し、2019年には債務残高対 GDP 比が 50% 強と良好な財政水準にあります。日本は「200% 強」ですから、立場が大きく異なっていると言わざるを得ないでしょう。

 つまり、ドイツの場合は「(一時的な)大盤振る舞いをするだけの余裕はある」が、日本にはその余裕はないのです。置かれている状況が違う国が採用している政策を真似るように訴えることはプラスにはならないと言えるでしょう。

 

日本の現状は『シュレーダー改革が実施される前のドイツ』と同じ

 日本の現状をドイツで例えると、『シュレーダー改革』が実施される前と評することが適切でしょう。なぜなら、シュレーダー改革は以下のものだったからです。

画像:シュレーダー改革の内容
  • シュレーダー改革の背景
    • 経済:
      • (同時多発テロやITバブル崩壊の)世界的な景気低迷で成長が鈍化
      • 失業率が高水準で推移
    • 財政:
      • 景気低迷による減収、失業者増大、少子高齢化で社会保障支出が増加
      • 財政赤字が拡大
    • 企業の競争力:
      • 手厚い労働者保護規制、高い税・社会保障負担
      • 企業の国際競争力を阻害

 今の日本が抱えている『問題』を2000年代初頭のドイツも抱えていたのです。ただ、ドイツは『シュレーダー改革』で結果を残し、リーマンショックで逆風にさらされるも、続く『メルケル改革』で成果を出しました。

 それがあるから、消費税率の引き下げを含む景気対策が打ち出せるのです。したがって、日本で同様の景気対策を望むのであれば、“聖域” と化している社会保障改革(= 高齢者世代への給付減)を断行することは不可避と言わざるを得ないでしょう。

 

「給与所得に対する料率30%の社会保険料」を無視して「消費税率10%」を問題視する層が抵抗勢力

 日本で「消費税率を下げろ」という主張が庶民に受け入れられる理由は「社会保険料の負担額を自覚していないから」でしょう。

 社会保険料は「所得の 30%」であり、消費税率の3倍です。しかし、給与から “天引き” されるため、給与明細で「手取り額」しか見ない人は 30% も引かれている現状に気づくことは稀です。

 しかも、負担は「労使折半」ですから、労働者が給与明細から確認できるのは(労働者が負担する分の) 15% だけというカモフラージュも存在しています。自分たちの負担分を正確に認識していない会社員や労働者は「最高のカモ」と言えるでしょう。

 また、社会保険による給付を受ける側の高齢者も「消費税率の引き下げ」を要求する立場です。

 高齢者は社会保障制度を使った所得移転で恩恵を受ける側であり、社会保険料が引き上げられて困ることはありません。むしろ、「社会保険料をもっと上げろ」と要求する側です。消費税しか負担していない高齢者ほど「消費税率を下げろ」と言うことでしょう。

 結局、消費税率の引き下げを要求するメリットが大きいのは「年金受給者」や「生活保護受給者」といった社会保障制度によって収入を得ている人々なのです。

 

 消費活動によって得られる対価は誰もが同じなのです。“生産性のない人々” を今以上に甘やかすために勤労者から搾取するのはプラスにならないことは「社会主義国家の失敗」が証明済みです。歴史から学び、その愚行を繰り返さないための決断が必要なのではないでしょうか。