ローマ法王フランシスコよ、トランプに苦言を呈する前にEU主要国首脳を批判せよ

 ローマ法王フランシスコがアメリカ大統領選で共和党で支持率トップであるドナルド・トランプ氏による発言を批判する事態が発生しています。

 今回はローマ法王の発言は “余計な口出し” となる可能性が高いと思われます。なぜなら、法王が生活する拠点であるヨーロッパでもトランプ氏の発言内容と同様のことが起きつつあるからです。

 

 ことし11月のアメリカ大統領選挙に向けて、共和党で支持率がトップのトランプ氏は、移民政策を巡り、「隣国のメキシコからの不法移民を防ぐために国境に壁を築くべきだ」と述べるなど、過激な発言を繰り返しています。

 こうしたトランプ氏の発言について、メキシコを訪れたローマ法王のフランシスコ法王は、18日、バチカンに戻る機内で記者団の質問に答え、「壁を築くことを考え、橋を架けることを考えない人は、キリスト教徒ではない」と述べました。そのうえで、アメリカ国内のカトリックの信者がトランプ氏に投票するかどうかについては干渉するつもりはないとしながらも、「同じような発言を続けるなら、キリスト教徒ではない」と重ねて強調しました。

 NHK は上記のように報じています。

 

 さて、ここで考えるべきは欧州を揺るがしている “難民問題” でしょう。(キリスト教の価値観と一致する)人道主義を掲げる EU に大量の(自称を含む)難民が流れ込み、大混乱が発生しました。

 きっかけはドイツ首相のメルケルが「難民の受け入れを拒まない」と述べたことです。これはローマ法王フランシスコが言う “橋を架けること” と一致すると見ることができます。

 その結果として何が起きたのか?

 ヨーロッパで活動する人権団体が “橋の維持・管理” を買って出たことで、当局の想定をはるかに超える難民がその橋を利用してヨーロッパに流れ込みました。そして、“橋を作った” ドイツは受け入れの分担を他国に求めていますが、反感を招く事態に陥っています。

 

 今、EUが検討していることは「これ以上の難民は受け入れない」という “橋そのものを消す” 行為です。また、「シェンゲン協定そのものも廃止への動いている」のですから、これはローマ法王が問題視している “壁を築くことを考えている” ことそのものです。

 イタリア・ローマ市内に存在するバチカンで暮らす法王ともあろう人物がそのことから目を背け、アメリカ大陸にいる大統領選の1候補者を問題視すること自体が由々しきことでしょう。

 彼がすべきことはドナルド・トランプ氏の口にした実効性が疑わしいマニュフェストに反応することではなく、実際に “見えない壁を築こうとしている” 欧州の主要国首脳にその考えを転換させることに他なりません。

 

 いずれにせよ、ローマ法王フランシスコがトランプ氏に対して行った発言は「本物のキリスト教徒であれば、難民受け入れの橋渡しをする」と難民歓迎派や自称・難民に都合良く利用されることになるでしょう。

 そして、そのツケを支払うことになるのはキリスト教徒の教えを真摯に受け止めて来た信者という皮肉な結末を迎える未来が既に描かれているという救いようのない結末が待ち受けているのです。世間の問題に対して、現実的な解決策を提示できない指導者たちは黙っていた方が良い場合もあることを学ぶ必要があると言えるのではないでしょうか。