『GPS機器の装着義務化』の対象するのは「性犯罪(の有罪判決確定)者」よりも先に「入管からの仮放免者」であるべき

 時事通信によりますと、自民党の司法制度調査会が「性犯罪の有罪判決確定者にGPS機器の装着義務化などによる再発防止策」を求める提言書を森大臣に手渡したとのことです。

 欧米で用いられている方法ですが、日本で導入するには順序が問題になります。なぜなら、『性犯罪の有罪判決確定者』よりも『犯罪に手を染めるリスクの高い人物』への対応が後回しになるからです。

 また、刑罰を終えた人の人権への配慮をリベラル派が無視していることは懸念事項と言わざるを得ないでしょう。

 

 自民党司法制度調査会の上川陽子会長(元法相)らは8日、法務省で森雅子法相と会い、性犯罪の有罪判決確定者に全地球測位システム(GPS)機器の装着を義務付けることなど再犯防止策や被害者支援策の充実を求める提言書を手渡した。森氏は「しっかり受け止め、強力にスピーディーに取り組む」と応じた。

 

監視社会の典型例である『GPS機器の装着義務化』には制限を設けることが必須

 GPS(全地球測位システム)を使って個人の行動を追うのですから、人権に配慮する必要があります。提言は「性犯罪の有罪判決確定者」を対象にしていますが、この条件だけでは不十分でしょう。

 例えば、初犯でも『GPS機器の装着』が必須なのでしょうか。これは疑問符が付くことでしょう。なぜなら、更生の見込みは性犯罪者にもあると考えなければならないからです。

 殺人で服役していた人でも(死刑ではない限り)刑期を終えれば出所します。そうした人は『GPS機器』による監視対象にはなっていません。

 そのため、性犯罪歴だけを理由にした装着義務化には「反対」をせざるを得ない状況です。

 

まずは全国に2000人以上もいる「仮放免中の外国人」に『GPS機器の装着』を義務付けるべき

 『GPS機器の装着』を義務付けるなら、「刑期を終えていない人物」や「収容されている人物」が “何らかの理由” で世に出ている場合でしょう。前者は仮出所、後者は仮放免と呼ばれる立場の人々です。

 こうした人々への監視は現在の日本にはありません。司法が抱えている問題なのですが、それはカルロス・ゴーンの逃亡劇にも集約されていると言えるでしょう。

 カナダで拘束されたファーウェイの孟晩舟副会長は保釈の条件として「GPS機器の装着」が課されています。しかし、日本ではカルロス・ゴーン容疑者を(実質的に)無条件で保釈しました。

 これでは「逃亡して下さい」と言っていることと同じですし、入管から仮放免をした(不法滞在中の)外国人が姿を消すのは当たり前です。

 その結果、日本の治安にマイナスを与えるのですから、「本人負担によるGPS機器の装着」を条件にする法的根拠作りが必要な状況にあると言えるでしょう。

 

『カルロス・ゴーンの人権』を守ったように『性犯罪歴を有する人の人権』も同じ基準で守らなければならない

 再犯防止策として『GPS機器の装着義務化』を正当化するなら、窃盗犯(≒ 万引き犯)も対象にすべきでしょう。

 性犯罪への厳罰化を求める運動を応援する記事には “加害者による告白” という体で「やめたくてもやめれない」との発言が紹介される場合があります。それを根拠に「(有罪確定歴を持つ性犯罪者への)『GPS機器の装着義務化』は止むを得ない」と言うなら、万引き犯にも適用できるはずです。

 それができないなら、アンフェアと言わざるを得ません。高齢者の万引き常習犯は「認知症が原因かも」と擁護して被害者である店舗に泣き寝入りを強いているからです。

 だったら、万引き常習犯には『GPS機器』を義務付けさせて、店側が「要注意人物の来店」を知り、自衛策を講じる権利を与えるべきでしょう。「性犯罪歴を持つ人による再犯を防ぐ」という名目が通るなら、「万引き常習犯による再犯」も同じロジックで防ぐことが許されているべきです。

 この考えは性犯罪や窃盗犯罪に限ったことではありません。粗暴犯にも適用されるべきことですし、「訪問詐欺を働いた人物についても同様にすべきではないか」との意見とも整合性を取る必要があるからです。

 

 『GPS機器の装着義務化』をするなら、最初は「本来なら入管や刑務所に収容されていなければならない人物」でなければなりません。そこで問題がないなら、性犯罪の常習犯などに対象を広げることの議論を始めるべきなのです。

 順序のおかしさが強調されることになる動きだと言えるのではないでしょうか。