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エア取材が常態化しているメディアがエアインタビュー記事を掲載しても驚きはない

スポーツ

 「取材対象にインタビューしていないにもかかわらず、インタビューをしたような誌面を掲載した」として、日本のサッカー専門雑誌を刊行する2社が互いにネット上で批判する展開となっています。

 新聞社や週刊誌でもエア取材に手を染めるケースが存在するのですから、仮にエアインタビューが(サッカー専門誌に)掲載されたとしても、驚きはほとんどないと言えるでしょう。

 

 エア取材のパイオニアは朝日新聞です。1950年(昭和25年)9月27日付で「日本共産党幹部の伊藤律氏と宝塚山中でインタビューした」と書いた記事が有名でしょう。

 また、2012年には任天堂の岩田聡社長(当時)にインタビューしていないにもかかわらず、公式サイトに掲載されていた岩田社長の発言内容をまとめて、インタビュー記事として掲載するという失態を演じています。

 では、今回のエアインタビュー疑惑について確認することにしましょう。

 

 エアインタビューをしていると名指しされたのは『ワールドサッカーキング』ですが、編集長を務める岩本義弘氏は「全くの事実無根である」と反論しています。

 しかし、反論内容で墓穴を掘ってしまっています。

 

 ジダン監督だが、ホセ・フェリックス・ディアス氏が明らかにしてくれた詳細によると、ジダン本人とマンツーマンでインタビュー取材をした上で、ボリューム的に足りないところを、囲み取材及び記者会見のジダンの言葉から補足しているとのこと。

 (中略)

 ハメス・ロドリゲスのインタビューに関しては、代理人のホルヘ・メンデスの承認を得て、本人へのマンツーマン取材したものに囲み取材のものを一部つけ加えているとのこと(もちろん、選手本人、代理人ともに了承済み)

 インタビュー記事として雑誌には1問1答形式で構成したいたにもかかわらず、実際にインタビューを行ったのはその中の一部だと認めているのです。割合こそは違いますが、任天堂の岩田社長への架空インタビュー記事を掲載した朝日新聞と同じと言えるでしょう。

 “インタビュー+囲み取材” による記事であれば、編集部が手を加えた部分を明記すべきです。読者に対し、100% インタビュー記事であるように誤解を与える構成は捏造記事と同じであり、一線を越えた行為です。

 

 しかし、このような手法による取材記事は多く蔓延しているはずです。なぜなら、既存メディアを経由しなくても、ファンに直接アプローチする方法を選手自身が手にしてしまっているからです。

 インターネットの普及により、SNSが一般的となりました。これにより、誰もが情報を発信する側になれるようになったのです。

 取材する側の既存メディアは「選手とはギブ・アンド・テイクの関係」と主張し、ギャラの支払いは不要との認識が依然として多数派でしょう。ですが、メディアから選手に与える “ギブ” の部分がSNSの定着などによって少なくなっていることを認識しなければなりません。

 取材対象としたい選手やチームが情報発信を自分たちのSNSアカウントからすることを徹底するとどうなるか。

 メディアは “引用” の形を取るか、著作権料を支払って掲載許可を得るかの2択を迫られることになります。「取材コストはタダ」と決めつけている既存メディアにとっては到底受け入れられないことと言えるでしょう。必要なコストすら削ろうとするメディアほど、エア取材やエアインタビューが横行していると見るべきです。

 

 エアインタビューを問題視する掲載した『フットボール批評』を発行するカンゼン社は運営する『フットボールチャンエル』というサイトで、「大宮vs川崎で逮捕者が出る騒ぎに」や「大宮アルディージャが不正会計?」というエア取材に基づく記事で謝罪する失態を演じています。

 「編集者が浦和出身で大宮のことが嫌いだからです」という言い訳はパロディーサイトを運営しているのであれば、通用したでしょう。しかし、サッカージャーナリストたちが取材に基づく記事を掲載しているというのであれば、自浄作用があることを示すことも不可欠です。

 現状では “脛に傷がありそうなサッカー専門誌” が互いに批判をしているだけで、どんぐりの背比べみたいだと言われるだけなのではないでしょうか。