待機児童問題で対案やロールモデルを示せない民進党ができるのは騒ぐことだけ

 「保育園落ちた日本死ね」と民進党とマスコミが騒ぎ立てた待機児童問題について、民進党は世間に認知されてから1年が経過したと公式サイト上で振り返っています。

 問題に取り組んでいるのであれば、民進党が打ち出した提案などによる “成果” が強調されているはずなのですが、「ヒアリングを行った」と報告している有様です。高額な議員歳費を得ておきながら、結果を出せていないことは致命的と言えるでしょう。

 

 Youtube でもヒアリングの様子は公開されていますが、出席議員は寂しいものです。

画像:ヒアリング開始時の状況

 

 当初は5名の議員が出席し、途中では6名にまで増えましたが、1時間を経過する頃には待機児童問題で名前を売り出すことに成功した山尾議員だけになっている有様です。

画像:ヒアリング開始から1時間後の様子

 この状況では、ヒアリングは活動をしていることをアピールするためのパフォーマンスに過ぎないと言えるでしょう。なぜなら、ヒアリングが問題がメディアに取り上げられた時点から何度も行えることであり、問題点はほぼ洗い出されている状況にあるからです。

 また、民進党が問題を解決するための行動に対するイニシアチブ(主導権)を持っていないように映ります。

 

 民進党は厚労省や内閣府の担当者から次のような課題があるとの説明を受けたと報告しています。

  1. 市区町村の取り組みの底上げ
  2. 保育の受け皿整備
  3. 土地の確保
  4. 保育人材・質の確保
  5. 地域住民の協力
  6. 多様な働き方への支援

 現状での対策として、「ロールモデルとなる好事例の横展開」や「賃金面での待遇改善」「育休期間の延長」が出されています。しかし、いずれも根本的な解決策とはなりません。

 なぜなら、待機児童問題の核心部は“保育園が受け入れられる上限数” より “入園希望の児童数” の方が圧倒的に多いということだからです。

 倍率が1.5倍を下回るぐらいで推移しているなら、現状の対策を推進することで待機児童問題は解決する見込みはあるでしょう。ですが、実状は競争率の桁が異なっているのですから、この対策案では「焼け石に水」なのです。

 

 待機児童問題が起きやすい地域は “住みたい街ランキング” などで人気上位に入っている都市がほとんどです。

 これは住みやすく、通勤・通学にも便利という理由で人気が生じ、高層マンションなどの都市開発が進むことが理由です。それによって若い世代が流入し、その結果として保育所・保育園不足が生じることになるのです。

 住民税を支払う人の数が増えることは自治体にとってプラスですので、人口流入を歓迎しない自治体は存在しないと言えるでしょう。

 その結果、“入園を希望する児童の数” は自然増することになるのですから、「増加のペースを緩める政策」と「受け入れ可能の上限数を増やす政策」の両方を同時に取り組む必要が生じる訳です。

 

 ただ、受け入れの上限数を増やすといっても限界があります。“住みたい街ランキング” などで人気上位に入る街でビジネスを営みたいと考える人も大勢いる訳ですから、地価は上がり、用地を確保することのハードルは非常に高くなります。

 また、国からの補助金に頼るビジネスモデルであり、待遇面での改善でまかなえる人材確保にも限度があります。子供を預かるという点では昔から大きく変化していないこともあり、地元住民から現行水準以上の協力を得ることは難しいと言えるでしょう

 待機児童問題で「共働きで子供の預け先を探す母親」ばかりに焦点が当てられていることは良い兆候とは言えません。

 これは「(共働きなどで)働く母親だけが “正しい母親像” ではない」からです。専業主婦を選択した母親も存在する訳であり、(夫婦で)そのような判断を下した母親の姿勢も同様に尊重しなければなりません。

 

 働く母親だけを優遇しようとする政策は不公平感を招くことになるでしょう。“子育て世代” の充実を訴えるのであれば、一時的な場合も含め、専業主婦を選択した母親にも支援の手が差し伸べられていなければなりません。

 保育園・保育所に予算を付けるのではなく、日本人の子育て世代に “保育バウチャー” を配り、保育園に預けたい人は保育費として使い、専業主婦を選んだ人は生活費に使うという形にスライドする必要があります。

 「保育園に子供を絶対に預けなければならない」という固定概念に捉われている子育て世代に別の選択肢も存在することを示すことが待機児童問題に取り組む政治家に求められていることなのではないでしょうか。