EU離脱派が勝利、イギリス政府は “民意” を政策に反映できるか

 現地6月23日(木)に行われたEUからの離脱の是非を問う国民投票で離脱派が勝利したとNHKが伝えています。

 次なる注目点は「キャメロン政権がこの “民意” を政策に反映する気があるか」という点です。

 

 イギリスで23日に行われたEU=ヨーロッパ連合からの離脱の賛否を問う国民投票でイギリスの公共放送BBCは、離脱の票が多数を占めることが確実になったと伝えました。これによってイギリスは今後離脱に向けた手続きを進めるものとみられます。

 

 多くのメディアは「離脱に向けた手続きを始める」と見ていますが、イギリスで行われた国民投票には結果に対する法的拘束はありません

 したがって、『ガーディアン』が記事で言及しているように議会での支持を背景にキャメロン首相が国民投票の結果を無視するというオプションは存在します。しかし、“民意” を無視することになる訳ですから、リスクが大きすぎると言えるでしょう。

 

 国民投票という形で示された「離脱」という “民意” を無視することになるのです。議会では「残留」が多数派だと理由で、国民投票の結果を無視するのであれば、“民意” を無視された有権者の怒りを買うことになるでしょう。

 もし、離脱の意向を無視するのであれば、“民主主義を無視する政治家” と名指し批判されることは避けられません。政治生命が断たれる政治家も出てくると思われます。

 残留派の立ち位置を明確にしているメディアはそのような姿勢を採る政治家を称賛するかも知れません。ですが、民主主義による決定を蔑ろにする政治姿勢を容認するようでは単なる機関紙と同じです。

 今回の離脱という “民意” はアンケートや世論調査とはレベルが圧倒的に異なる形態の『国民投票』で示されたのです。結果を無視し、自分たちが主張する「残留」が正しいと主張する姿勢はエスタブリッシュ層の勝手なロジックです。

 そのような姿勢が反感を買った一因と言えるでしょう。

 

 また、国民投票で事前予想以上の大敗したことによって、キャメロン首相が辞任に追い込まれる可能性は十分にあります。“パナマ文書問題” の火種が燻っていることを考えると、「合わせ技で辞任」となるシナリオも考えられるからです。

 EUに対する「離脱通告」をどのタイミングで通達するのかも見落とすことはできません。

 離脱の道筋が定り切っていない状況で離脱を通告することはイギリスだけでなく、経済的な悪影響は世界中へと広がります。どうソフトランディングさせるかはイギリスの責務です。

 他にもEUからの離脱を考える国や地域は存在します。それらの国や地域を牽制するためにイギリスに対して厳しい対処することも考えられますが、連鎖的に離脱が波及した場合、その流れを抑えることは難しいと言えるでしょう。

 2017年はオランダ、フランス、ドイツなどで選挙を控えています。イギリスが「離脱」を選択したことは少なからず影響を与えることになると思われます。政治・経済に対する波紋は広がり始めた段階と見えるべきでしょう。