パク・クネ大統領からパク・クネ容疑者へ?

 韓国の検察がパク・クネ大統領の側近や知人が職権乱用などで起訴された件について、「大統領は共謀関係にあった」と発表したとNHKが伝えています。

 発表内容が事実であった場合、大統領の求心力はほぼゼロになるでしょう。このような状況下で日中韓による首脳会議に出席するどころではないことは明らかです。

 

 韓国の検察は20日、パク・クネ(朴槿恵)大統領の長年の知人と、大統領の側近2人の合わせて3人を職権乱用などの罪で起訴するとともに、「パク大統領は、相当な部分で共謀関係にあったと判断した」と発表し、パク大統領に退陣を求める圧力が一段と高まるのは、避けられない情勢です。

 

 “セウォル号沈没事故での空白の7時間” についての疑惑を報じた産経新聞の加藤達也元ソウル支局長を在宅起訴するなど強硬姿勢を貫いていたパク・クネ大統領がホームページ上で突如「執務室で指揮していた」と弁明しました。

 タイミングとしても非常に不自然だと思った矢先に韓国の検察から「大統領は共謀関係にあった」との発表があったのですから、大統領自らの保身に走った兆候であると言えるでしょう。

 ただ、韓国の大統領は在任中に刑事訴追されることはありません。しかし、スキャンダルが生じると、大統領退任後に一気に責め立てられるため、事前に自らの権限をフル活用することでダメージコントロールを先にしておく必要があるのです。

 

 ところが、パク大統領は「韓国大統領の地位を維持すること」に手一杯であり、自らの地位を脅かしている職権乱用問題への関与について有効な手立てを講じることができていません。

 典型的な悪徳政治家としてイメージされる手法では側近や知人を “とかげのしっぽ” として切り、大統領権限で『恩赦』を下すというやり方もあったはずです。

 しかし、検察が「相当な部分で共謀関係にあった」と発表したため、パク・クネ大統領は “とかげの頭であり、胴体である” と宣言されたに等しい状態です。そのため、大統領退陣を求める声はさらに強くなることでしょう。

 野党が弾劾を成立させるハードルは高かったのですが、検察発表を受けて韓国世論の風向きが大きく変わるかもしれません。先の選挙でパク・クネ派と反パク・クネ派で割れた経緯がありますので、与党側からも弾劾に賛成する議員も出てくるものと思われます。

 

 大統領に就任してから1度も記者からの質問を受け付けず、一方的な談話を発表するだけの政治スタイルでは現状を打破することは絶望的です。

 少なくとも、現在のパク・クネ大統領に新たな政治的業績を達成させようとする勢力は韓国内にはいないでしょう。もし、存在するなら韓国に寄り添う姿勢を鮮明にしている日本国内の親韓派ぐらいだと言えるでしょう。

 求められる職務を遂行することに問題が生じた人物を現状のままにしておく必要はありません。デモ活動でパク・クネ大統領に退陣を迫るのではなく、弾劾など法で定められた手法に基づき、問題のある大統領を退陣させることが民主主義と言えるのではないでしょうか。