トランプ政権の鍵は「政策実行能力があるかを示すことができるか」だろう

 トランプ大統領がアメリカ上下両院の議員を前に施政方針を示す演説を行ったとNHKが報じています。

 大統領選の時に訴えた内容から大きな変化はありませんが、CNNの世論調査で約8割が好意的に受け取っていると報じられています。政権の命運は「大統領が掲げた政策を実行する能力を持ち合わせているか」に集約されると言えるでしょう。

 

 アメリカのトランプ大統領は上下両院の議員を前に施政方針を示す初めての演説を行い、国防費を大幅に増やして強いアメリカを目指す考えを示し、オバマ政権で失ったとも指摘される国際社会での指導力を取り戻す姿勢を打ち出しました。

 (中略)

 また、日本円で110兆円余りに上る国内のインフラ整備を目指すことや不法移民対策、さらに、入国管理を厳格化するための新たな措置を行うことなどを訴え、アメリカを再び偉大にすると強調しました。そして、そのためには国民が対立よりも融和すべきだと繰り返し呼びかけました。

 アメリカメディアからは「これまでで最も大統領らしい演説だった」などと評価する声が上がっていて、トランプ政権に批判的な論調のCNNテレビが演説後に行った世論調査でも、およそ8割が好意的な意見を示しています。

 

 

 「国防費の大幅な増額」や「1兆ドル規模のインフラ整備」が演説内容に含まれていたこともあり、予算の点を中心に実現性に乏しいと批判する声もあります。

 ただ、“実現性” を論点とするのであれば、前任者のオバマ大統領が述べたスピーチ内容についても同じように批判していなければ説得力を持たないことを自覚しなければなりません。

 トランプ大統領が示した施政方針に含まれていた政策は必要なものがほとんどです。費やすコストは少ない方が良いのですが、必要分を下回る予算では肝心の効果を見込むことはできないのです。

 誰かが必要予算を肩代わりすれば、負担額は軽微なものとなるでしょう。しかし、“難民・移民歓迎” を掲げるスーパーリッチなセレブリティーでさえ、自腹を切る形での支援事業は形作られていない現実を見落とすべきではないと言えるでしょう。

 

安全保障はタダではなく、国防費という予算が不可欠である

 “平和ボケ” をしている人々は「平和や安全は無料で手に入れられるもの」という間違った認識を持っている場合がほとんどです。現実にはそのようなことはありません。

 「事件・事故、火災が起きないから警察・消防で働く人々の給与待遇は低くて良い」とはならないでしょう。24時間365日いつでも稼働できる状態であることが必須ですし、問題が生じた際に速やかに動けるよう組織を精錬しておく必要もあるからです。

 装備品が古くなれば、新調することを検討しなければなりません。そうした考えを間違っていると主張することは非現実的ですし、「必要であるなら予算増額は当然だが、予算を効率的に使えているかを示すことが前提だ」と述べることが限界です。

 ドイツのように、NATOに加盟しておきながら国防費を GDP 比 1% に抑制し、安全保障にタダ乗りする姿勢はアメリカが批判を強めることになるでしょう。「難民受け入れ用の施設を建設する予算があるなら、それを国防費に回せ」と言われるのは時間の問題だからです。

 

不法移民(=密入国者)対策をどの部分で実行するのか

 メディアは『不法移民』と表現していますが、実態は密入国者です。“被害者” として同情の対象にしようとするマスコミが多いのですが、違法行為をした人物であることは紛れもない事実です。

 密入国者が引き起こす問題を「入国審査」という形で事前にスクリーニングするか、犯罪を起こしてから「通常犯罪」という形で罪に問うのかを明確に示すことが求められています。

 トランプ政権は前者を採りました。問題のある人物、もしくは問題を引き起こす可能性のある人物の入国を未然に防ぐことができれば、そのような人物が引き起こした犯罪による被害者をゼロにできるからです。

 もし、後者の選択肢を訴えるのであれば、不法移民(=密入国者)が起こした犯罪による被害者への救済措置の整備が不可欠です。ですが、誰もその運動をしていません。加害者がマイノリティーであることを理由に “ポリコレ” を掲げ、被害者に泣き寝入りを強いているようでは移民全体への風当たりが強くなる一方です。

 ハリウッドセレブたちが資金を出して基金を創設し、不法移民による犯罪被害者に対する損害賠償に当てる活動を行うことが必須条件と言えるでしょう。

 

インフラ投資による経済政策と予算確保

 老朽化しているインフラ整備に必要な投資を行わなければなりません。“騙し騙し” ではオロビルダムのように限界に達した場合では対応ができなくなってしまうからです。

 ただ、長期間に渡る大型プロジェクトになることが多い公共工事ですから、予算を確保することも不可欠となります。

 トランプ大統領は「法人税の引き下げ」や「税制改革」で予算を捻出するものと予想されます。どのような税体系に変更するのかが大きな関心点と言えるでしょう。

 アメリカは法人税が高く、国際的なシェアを持つ企業は “ブランドライセンス料” をタックスヘイブンに設置した別会社に支払うことで税金の支払いを逃れる手法を採っている場合があります。狙うとすれば、このようなアメリカのインフラにタダ乗りをしているグローバル企業でしょう。

 税制の抜け穴を突いた節税は違法ではありませんが、好ましくないことは事実です。トランプ政権がどのように穴を防ぎ、アメリカに納税させる絶対値を増やすことができるのかが今後の注目点になると思われます。

 

 トランプ大統領が演説で述べた項目の内、どこにプライオリティーを置いているのか。実現するための予算や行動力が存在するのか。今後の動きに注目する必要があると言えるでしょう。