駐韓大使帰任の裏にある “トランプ政権が抱く北朝鮮の核問題” を頑なに触れないマスコミの姿勢は問題だ

 「慰安婦問題の合意事項が守られていない」として、日本に一時帰国していた長嶺駐韓大使を4日付で帰任させると政府が発表したと NHK が伝えています。

 問題の発端となった慰安婦像の撤去は全く進展しておらず、慰安婦問題とは別の役割があるから帰任したと見るべきでしょう。なぜなら、駐韓大使が不在ででも、日常的な業務には何の支障も来していなかったからです。

 

 事前リークが皆無の状況で駐韓大使が帰任した最大の理由は「北朝鮮の核問題」でしょう。なぜなら、長嶺大使の帰任が発表された日本時間3日午後の少し前にアメリカのトランプ大統領が『フィナンシャル・タイムズ』のインタビューで次のように語っていたからです。

 

 "China has great influence over North Korea. And China will either decide to help us with North Korea, or they won't," Mr Trump said in the Oval Office. "If they do, that will be very good for China, and if they don't, it won't be good for anyone."

 But he made clear that he would deal with North Korea with or without China's help. Asked if he would consider a "grand bargain" - where China pressures Pyongyang in exchange for a guarantee that the US would later remove troops from the Korean peninsula - Mr Trump said: "Well if China is not going to solve North Korea, we will. That is all I am telling you."

 北朝鮮の核問題に対し、「中国は北朝鮮に影響力があるのだから、解決に向けて動け。もし、中国が北朝鮮問題を解決する気がないなら、我々がやる」とコメントしたのです。

 現時点でアメリカが担当行動を起こす可能性は高く見積もったとしても10% 台と言えるでしょう。しかし、その確率が急激に高まることが一般的であり、“突発的な事態” に向けた準備は不可欠なのです。

 

 4月以降の主なトピックを見れば、駐韓大使を戻す理由は見えてくるはずです。

  • 4月6, 7日:米中首脳会談(アメリカ・フロリダ州)
  • 4月15日:キム・イルソン誕生日
  • 5月9日:韓国大統領選(新北朝鮮のムン・ジェインが大本命)

 北朝鮮はキム・イルソンの誕生日に当たる4月15日前後に「ミサイル発射」や「核実験」を行ってきた経緯があり、その姿勢はアメリカ・トランプ政権が容認できる水準を超えていると言うことができるでしょう。

 その1週間前には米中首脳会談が行われる予定であり、アメリカが北朝鮮問題に対する中国側の出方を決めることが十分にあり得ることです。もし、中国が態度を決めかねるのであれば、単独行動も選択肢としてあると見ておかなければなりません。

 

 朝鮮半島有事が勃発すれば、統帥権はアメリカが司令官を務める米韓統合司令部が持つことになります。副司令は韓国が務めるのですが、指揮系統という意味合いではアメリカ主導であることに揺るぎはありません。

 その場合に、日本の窓口である駐韓大使が不在ということは「安全保障面で問題がある」と見なされることは十分にあるでしょう。その証拠に制裁の1つであるスワップ協定の話し合い等は依然として継続されているからです。

 有事の際、在韓米軍の家族を退避させることはアメリカが責任を持って行うでしょうですが、日本人の保護にまで手がまわる保証はありません。そのため、不要不急の韓国渡航は控えるべきです。

 軍事面での緊張が高まっている国については渡航中止勧告などを出すことが外務省の責任と言えるでしょう。「邦人の保護」を目的とするのであれば、なおさらです。

 

 それと合わせ、日本国内で活動する韓国系・北朝鮮系の組織に対する動きは把握する必要性が高まります。互いの組織を狙ったテロ行為が起きる可能性があり、無関係の日本人が巻き添えになることが考えられるからです。

 十分な警戒が必要であることは当然のことであり、マスコミによる「駐韓大使の帰任は慰安婦問題だけによるもの」と決めつけた報道を鵜呑みにすることはリスクが高すぎると言えるでしょう。朝鮮半島からの難民を呼び寄せたいトラブルメーカーの主張に耳を傾けることの代償は非常に高くつくことを自覚しておく必要がありそうです。