「プロとしての実力不足」を「男女間の待遇格差」にすり替えるのは論外だ

 アメリカのサッカー女子代表選手5名が男女の待遇格差に不満を持ち、訴訟を起こす構えであることが『USA TODAY』を始めとするアメリカメディアが報じています。

 彼女たちによる主張内容はフェミニズムに沿ったもので、「アスリートとしてのパフォーマンスによる報酬制度は受け入れられない」と言っているだけに過ぎません。

 

 では、彼女たちの主張を見ていくことにしましょう。

  • 2015年は女子代表が男子代表より、2000万ドル多く稼いだ
  • 女子代表の報酬は男子代表の4分の1である
  • 男子代表はW杯で全敗しても10万ドルが保障されている
    → これは女子代表が全勝した場合の金額に相当
  • 親善試合での報酬額に約3倍の開きがある
  • 女子代表にはインセンティブはないが、男子代表はインセンティブが存在する

 上述した内容が主なものですが、女子代表が男子代表と同じ待遇を勝ち取ることは難しいと言わざるを得ません。彼女たちの主張のどの部分に弱点があるのかを示すことにしましょう。

 

 まず、2015年の収益ですが、この年は特殊であったことを認識する必要があります。男子代表は北中米カリブの国々が参加するゴールドカップを戦っていましたが、女子代表はW杯を戦っていました

 W杯優勝チーム(=女子代表)の方が獲得賞金・肖像権/放映権収入・チームスポンサーからのボーナスという点で、ベスト4に終わったチーム(=男子代表)よりも売上高が多くて自然と言えるでしょう。

 ここで注意すべき点は直近の男子W杯がブラジルで開催された2014年の収益について、彼女たちは言及していないことです。

 W杯は4年に1度の周期で開催されます。つまり、男子代表と同じ待遇を求めるのであれば、女子代表側の主張に肩入れする人々は4年分の売上高を提示した上で、「男子代表が過剰に優遇され、女子代表への待遇が明らかに悪い」と主張すべきなのです。

 なぜ、そのように主張しないのでしょうか。おそらく、そう主張したくてもできないことが実情だからでしょう。

 

 2014年に行われたブラジルW杯の賞金総額は5億7600万ドルでした。ちなみに順位による賞金は以下のとおりです。

  • 準備金として全参加国に150万ドルを支給
  • グループステージで敗退:800万ドル
  • ベスト16:900万ドル
  • ベスト8:1400万ドル
  • ベスト4:2000万ドル
  • 3位:2200万ドル
  • 準優勝国:2500万ドル
  • 優勝国:3500万ドル

 

 アメリカ代表(男子)はブラジルW杯でベルギー代表に敗れて、ベスト16という成績でした。つまり、獲得賞金だけで1050万ドルを手にしていることになるです。

 当然、W杯に向けたスポンサー企業の広告にも代表選手は起用されているでしょうから、肖像権収入なども売上高に大きく寄与したことでしょう。オリンピックもなければ、W杯も行われていない2014年にサッカー女子代表が男子を上回る収益を記録することができたとは考えづらいものがあります。

 

 お騒がせ発言の多いホープ・ソロ選手は「私たちは世界最高のチームで、ワールドカップで3回、オリンピックで4回優勝した」と述べていますが、それは女子というカテゴリの中での話です。

 “世界最高のチーム” を名乗るのであれば、年齢・性別を問わずに戦い、勝利したという成績を有していることが最低限のことなのではないでしょうか。

 また、収益についても男子サッカーの放映権料高騰はW杯だけではなく、イングランド・プレミアリーグでも問題となるなど世界的にニュースとして報じられています。それと連動するようにスポンサー費も高騰していることが実情です。

 逆に「女子サッカーの放映権料が高騰し、問題となっている」というニュースは聞いたことがありません。要するに一部の女子選手が “勘違い” をしていると言えるでしょう。

 

 この問題の解決策はいたってシンプルなものが有効になります。要するに「男子代表の会計と女子代表選手の会計を完全に分けてしまう」と良いのです。そうすれば、報酬の分配方法について男女間での待遇格差を問題視する声はなくなります。

 知名度アップ、イメージアップや売上アップを念頭に置いた企業がスポンサーに名乗りをあげるのですから、彼らには特定のスポーツに投資しなければならない義務はないのです。

 スポンサーが求めるのは“自分たちが求める広告イメージを体現している世界最高のパートナー”です。その対象がサッカー男子代表ということは十分にあり得るでしょう。

 「世界最高のサッカー選手は誰か」という問いに対し、現役選手ではメッシ選手とクリスティアーノ・ロナウド選手に二分されています。しかし、この問いに対する答えで女子選手の名前が挙がることはありません。

 この現実を度外視して、「女子も雇用機会均等の観点から男子が得ている待遇と同じ待遇でなければならない」と主張するのは無理があります。

 もし、そう主張するのであれば、女子選手権に男子が参加できるようにする必要があります。それに加え、“見た目は男性だが心は女性” と強弁する男性アスリートが現れた場合、女子選手側の拒否権を失うことを意味します。

 

 パフォーマンスというアウトプットの質に大きな差があるのですから、男女同一賃金というのは詭弁であると一蹴されて当然と言えるのではないでしょうか。