「男子とは別会計」を要求せずに「待遇改善」を求めている時点で、アメリカ女子サッカー代表の主張は単なる言いがかり

 NHK によりますと、アメリカ女子サッカー代表の選手たちが「待遇改善」を求めてサッカー連盟を “異例の” 提訴を行ったとのことです。

 ただ、これは政治的なパフォーマンスを言わざるを得ないでしょう。以前にも言及したように、「適切な待遇」を求めるのであれば、「男子チームとは別会計」にすれば済むことだからです。

 したがって、要求内容は「いいとこ取り」をしようとしていると考えられます。

 

 サッカー女子のアメリカ代表の選手28人は「国際女性デー」にあたる8日、アメリカサッカー連盟に対して待遇の改善を求める訴えをロサンゼルスの地方裁判所に起こしました。

 訴状によりますと、女子の代表チームは前回のワールドカップで優勝を果たすなど好成績を収めているにもかかわらず去年のワールドカップへの出場を逃した男子の代表チームよりも報酬が低く、これは性別に基づく差別にあたるとして平等な報酬の支払いを求めています。また、報酬以外にも試合を行う芝の質が劣っているなど競技環境や支援体制も不平等だと指摘しています。

 女子チームから不満が出る理由は「サッカー連盟が稼ぐ収益分の男女比がブラックボックスになっている」ことが原因です。

 そのため、「男女が同額の収益を出している」との “仮定” に基づき、女子チーム側が「サッカー連盟の支出を男女平等にすべきだ」と訴えているのです。この解決策は「男女別会計」であることは明らかと言えるでしょう。

 

収益を男女別会計にすることで、支出に対する不平・不満は霧散する

 サッカー連盟が支出を男女平等にしていまうと、稼いでいる方から不満が出るのは当然です。そのため、「収益分に応じた支出をする形」が適切と言えるでしょう。

 要するに、「収益比が男:女で7:3なら、支出比も7:3にする」というものです。

 サッカーの収入は『チケット収入』、『大会賞金』、『放映権料』、『スポンサー料』の4つに大別されており、男女比を出すことはそれほど難しくありません。これは男女の代表チームが同日・同会場で試合をすることがないため、「どれだけ稼いだか」がテニスなどと比較すると見えやすいからです。

 『スポンサー料』については「スポンサーとの現行契約」が存在するため、即座に比率を出すことは不可能でしょう。しかし、それ以外の3項目は即座に判明するのですから、揉める理由にはならないのです。

 

なぜ、アメリカ女子サッカー代表は「男女別会計」を要求しないのか

 もし、アメリカ女子サッカー代表が「収益分に適した支払いがされてない」という状況にあるなら、「男女別会計」を要求することで待遇面は大きく是正されるでしょう。

  • サッカー連盟の収入
    • チケット収入・大会賞金・放映権料
      • 男女ごとの収入額を記録
      • 代表チームごとに参加大会が異なるため計算は容易
    • スポンサー料
      • 男女比は1:1(= 50%ずつ)で収入額を記録
      • 現行契約が「連盟のスポンサー」となり、明確な配分を算出できないことが理由
      • 新契約からは「男女それぞれのスポンサー額を提示すること」を条件とする
  • サッカー連盟からの支出
    • 男女の代表チームが稼いだ収益比に基づき、支出比を決定
    • スタジアムや育成施設への支出は「男女共用」を理由に 50% ずつの負担とする

 上記の内容が “現実的な落としどころ” です。サッカー界の収益源は「男子のW杯」であり、女子サッカーではありません。これが現実なのです。

 もし、「女子サッカーは男子と同等の収益がある」と主張するなら、『男女別会計』を求めることで女子サッカー選手の待遇面は飛躍的に向上するでしょう。

 しかし、そうした要求をしていないのですから、現実は「男子サッカーが稼ぐ収益から甘い汁を吸おうとしているだけ」と批判されることになるのです。

 

「人工芝ではなく、天然芝のピッチで女子の試合をすべき」と主張するなら、それだけの大会収益を上げるべきだ

 また、「男子チームは天然芝のピッチでW杯を戦うのに、女子チームは人工芝のスタジアムでW杯が行われるのは差別」との批判もあります。

 日本では日本サッカー協会が人工芝のピッチを全否定しているため、こうした批判は起きることはまずないと言えるでしょう。しかし、海外では「維持費が安い」との理由で人工芝のピッチは身近にあります。雨が多いなど天候に恵まれない地域やサッカー途上国で目にする機会が多いはずです。

 女子選手は「天然芝のピッチでW杯を戦いたい」と要求していますが、その代償として「多額の開催費用」がかかります。大会収益が思わしくなければ、赤字を背負うのは “主催者” なのです。

 回収できる見込みのない大会費用を投じる愚かな主催者はいないでしょう。費用のかかる天然芝を要求するなら、それだけの大会収益を上げる必要があり、女子選手がピッチ上のパフォーマンスでそれを証明しなければなりません。

 男子のW杯は「放映権料の高騰」が問題視されていますが、女子のW杯ではそうした問題は起きていないのです。「男女平等」を訴えるのであれば、「収入に対する支出の平等」という形で訴えなければ理解が広がりにくいと言えるのではないでしょうか。