原発再稼動から目を背け続ける安倍総理が FT に「気候変動問題に関する寄稿」をしても説得力は少ない

 日経新聞によりますと、安倍総理がフィナンシャル・タイムズ紙に気候変動問題についての寄稿を行ったとのことです。

 「温室効果ガスの排出削減」を訴えていますが、最も効果的で現実的な解決策である原発再稼動に消極的な点が残念と言えるでしょう。ただ、日経新聞はそれすらも報じていないのですから、姑息と言わざるを得ません。

 

 安倍晋三首相は23日付の英フィナンシャル・タイムズ紙に気候変動問題について寄稿し、再生可能エネルギーの普及拡大を呼びかけた。「経済成長と(石油や石炭など)化石燃料の使用削減を両立させないといけない。これは再生可能エネルギーのコストを削り、信頼性を高めさせることを意味する」と訴えた。

 日経新聞の要約記事では「再生エネに注力」となっており、これでは「原発再稼動から逃げている」と言われて当然でしょう。

 原発を再稼動することで、「電気代が下がる」ことになりますし、「化石燃料の使用も減る」からです。この現実的な解決策を上回る『提案』がない状況で「再生可能エネルギーに注力する」ことは経済の低迷を招く原因になることでしょう。

 

安倍総理が FT に寄稿した内容

 まず、安倍総理は FT に寄稿した内容(PDF)で原発に全く言及していない訳ではありません。僅かですが、触れています。

 In Japan, the volume of electricity generated from renewable sources has increased 2.5-fold in the past four years. Japan will host the world’s first ministerial meeting focused on hydrogen energy. We cannot overlook safe nuclear power generation and controls on emissions of methane and hydrofluorocarbons.

 Manufacturers with large-scale greenhouse gas emissions should be encouraged to update their production methods. Countries should stop excessive steel production, which causes massive greenhouse gas emissions and creates imbalances in markets.


 経済成長の確保と化石燃料の削減は,共に重要な課題だ。それは再生可能エネルギーのコスト削減と再生可能エネルギーの信頼性向上を意味する。日本では,この4年間で再エネ発電量が約2.5倍に増えた。また,世界初の水素閣僚会議を日本で開催する。また,安全を前提にした原子力発電,メタンやHFCの排出抑制も必要だ。

 多量の温室効果ガスを排出する製造業が製法を革新する。各国は,多量の温室効果ガスを排出するのみならず,市場を乱す鉄鋼の過剰生産を止めるべきだ。

 「安全な原子力発電を見落とすことはできない」と述べています。ただ、これだけであり、消極的であることは否定できないでしょう。

 本気で『温室効果ガスの排出削減』に取り組むのであれば、原発再稼動は避けられないと言えるはずです。

 

「再生エネのコスト削減」と「超大容量蓄電池の技術確立」が行われるまでの期間をどうするのか

 『再生可能エネルギー』が環境保護を訴える人々に “受け” が良いことは明らかです。しかし、現状では普及するために乗り越えなければならない壁があり、乗り越える見通しすら立っていないのです。

  • 再生エネのコストが高すぎる
    → FIT で割高な電気代が利用者に強いられ、経済の落ち込みを招く
  • 超大容量蓄電池が存在しない
    → 発電量が安定しない再生エネの普及には必須

 電力ビジネスは需要と供給のバランスを保ち続けることが必須ですが、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは一定量の発電をすることはできません。必要な需要分を供給できなかったり、需要を大幅に上回る供給をするなど、調整力に欠ける電源なのです。

 現在は火力発電で需給調整を一手に担っており、この状況を変えなければ、温室効果ガスは従来の変わらない量が排出され続けることになるでしょう。

 「太陽光や風力で発電した電気を大容量蓄電池に充電することで調整力を持たせる」というアイデアはありますが、実現の見通しが全く立っていないのです。実現の確固たる見通しが立ち、実証実験で成功が確認されるまでの間は最も現実的な温室効果ガスの排出削減策である原発再稼動を行うべきなのです。

 

「FIT による再生エネの普及」と「安価な電気代」は両立しない

 『反原発』を訴えることは自由ですが、「原子力発電を放棄すると、電気代は上昇する」という事実から目を背けてはなりません。この現実を無視する反原発派に「高額な電気代を何とかしろ」と主張する資格はないのです。

 また、再生可能エネルギーは FIT (全量固定買取制度)で “他の発電源よりも高額な価格” で買い取ることになっています。そのため、原発の稼動状況に関係なく、再生エネの割合が増えるほど電気代は上がるという現実も存在します。

 こうした現状を無視し、両立できないことを要求する個人・団体は極めて悪質と言えるでしょう。

 「経済成長」を求めるなら、コストである電気代を下げることは重要です。ただ、安倍総理は電気代を大きく引き下げる能力を持つ原発再稼動に消極的ですし、マスコミは原発の存在そのものを消し去っている状況です。

 電気代が上がっても許容できるのは『FIT を使って再生エネで儲けている事業者』か『そうした業者から仕事を得ている界隈』に限定されるでしょう。市場で決められたのではない高価格が消費者にのしかかっている現状はおかしいと言えるのではないでしょうか。