自治体が株主総会で「電気代の値上げ」を要求するのだから、関西圏の地盤沈下が起きるのは当然だろう

 6月27日に行われた関西電力の株主総会で京都市の門川大作市長が「脱原発および再生エネの普及促進」を要求したと NHK が伝えています。

画像:門川京都市長の提案を報じるNHK

 門川市長の提案が致命的なのは「電気代の値上げ」を引き起こす内容であることです。“経済が落ち込む原因” を行政側が積極的に作り出そうとしている点で大きな問題と言えるでしょう。

 

 総会ではまず、岩根茂樹社長が、福井県にある大飯原発3号機と4号機の営業運転を受けて、来月1日から電気料金を値下げすることを説明しました。

 (中略)

 総会では、脱原発を大阪市と共同で株主提案している京都市の門川大作市長が発言し「原発依存をやめて、再生可能エネルギーの普及をさらに加速させるべきだ」と求めました。

 反原発派や脱原発派が目を向けなければならないことは「原発を運転すると、電気代が大きく値下げされる」という事実です。

 再生可能エネルギーは原発の代替エネルギーにはなりません。なぜなら、価格が異常なまでに高額だからです。この問題による弊害を隠したままでは再エネの普及は非現実的と言えるでしょう。

 

大飯原発の再稼働で電気代が 5% 値下げになったという現実

 京都市長の報酬から見れば、家庭用の電気代など微々たるものでしょう。

 ですが、「高額な電気代」は企業や団体にとっては大きな重荷です。「人件費」、「設備投資費」、「電気代」はいずれもコストであり、費やせるコストの総額には限度があります。

 つまり、『電気代が上昇する政策』が採用されると、“しわ寄せ” で『人件費』か『設備投資費』が削減される結果を招くことになるのです。

 人件費が高額な上、地元の行政が電気代を高くする経営方針を電力会社に要求する。このような地域に投資をしようとする企業は少ないでしょう。その結果が「関西経済の落ち込み」という形で現れているだけのです。

 

「反原発派からの票集め」のために地域経済を犠牲にしているだけ

 大阪市や京都市の行為は「反原発派からの票集め」に過ぎません。ただ、その代償が「地域経済」であるため、住民が “とばっちり” を受ける結果となっているのです。

 「原発依存を止めろ」との大阪市や京都市からの提案が通ることはないでしょう。

 まず、この提案内容は原子力発電所という電力会社が持つ財産に損害を与えるものです。もし、提案が通れば、発起人である大阪市や京都市は『特別背任罪』に問われることになります。

 しかし、「会社に損害を与える提案」を容認した “関電の取締役” も『特別背任罪』に問われる立場にあります。そのため、法令を遵守する立場にある電力会社が「原発廃止の提案」を通すことはあり得ないことなのです。

 要するに、大阪市や京都市は『絶対に否決される提案』を出し、反原発派や脱原発派に活動実績をアピールしているに過ぎないのです。野党が国会で見せるテレビ用パフォーマンスを市長自らがやっているだけです。何のプラスにもなっていないと言えるでしょう。

 

再生エネに将来性があるなら、『大阪府市エネルギー戦略会議』が “なかったこと” にはならない

 再生可能エネルギーに将来性はありません。少なくとも、FIT という形で多額の補助金が注ぎ込まれている現状は投機家を儲けさせるための仕組みとして機能しているだけです。

 もし、将来有望な発電手法なら、『大阪府市エネルギー戦略会議』がメディアで繰り返し登場していることでしょう。

 大阪市と大阪府にとっての “黒歴史” である『大阪府市エネルギー戦略会議』が事実上の休止状態であることから、再生エネは「補助金ビジネス」に過ぎないことは明らかです。

 再生エネが本当に有望な投資先であるなら、辻元清美議員(立憲民主党・大阪10区選出)が「舞洲に IR を誘致するんやなくて、再生エネの拠点にすべきや」などと主張し、マスコミは拍手喝采で持ち上げていることでしょう。そうした動きはない訳ですから、その程度のエネルギー源なのです。

 この視点が反原発派や脱原発派には決定的に欠けていると言えるでしょう。

 

 人件費が高い日本で、電気代まで値上がり傾向が続けば、競争力を維持するために製造業は海外移転を本格化させます。その結果、日本国内での雇用が減少し、経済が減退することになるのです。

 ただでさえ、“東京一極集中” で地方の衰退が進む中、その流れを加速させる政策を地方自治体が電力会社に要求するなど異様と言えるでしょう。

 『裕福な生活』と『貧乏な生活』を交換することができますが、反原発派や脱原発派が率先して日本の『裕福な生活』を積極的に諸外国に無償で譲り渡そうとしている姿勢には厳しい批判を向けるべきと言えるのではないでしょうか。