ロシアW杯・ベルギー戦の試合展望

 サッカー日本代表は6月28日に行われたロシアW杯・グループH第3節ポーランド戦に 0-1 で敗れましたが、フェアプレーポイントの結果により、決勝トーナメントに駒を進めることに成功しました。

 現地7月2日にベルギー代表と準々決勝進出を賭けて激突することが決定した訳ですが、ベルギー代表についての事前分析を行うことにしましょう。

 

ベルギー戦は西野朗監督にとっての「審判の場」

 決勝トーナメント1回戦でベルギー代表との試合が決定した日本代表ですが、西野監督にとっては「審判の場」となるでしょう。なぜなら、前任のハリルホジッチ政権時に親善試合で対戦した経験を有しているからです。

 2017年11月にベルギーで行われた親善試合に先発した両チームの選手とフォーメーションは下図のとおりでした。

画像:国際親善試合・ベルギー対日本

 結果は 1-0 でホームのベルギーが勝利しています。ただ、拮抗した試合内容でしたし、失点時は「パワープレーへの対策」よりも「テスト起用を優先する」という親善試合の度合いが強かったことを見落としてはなりません。

 つまり、「勝つための確率を 1% で上げる」という理由を掲げて就任した西野監督(と日本サッカー協会)の審判が下される試合なのです。この視点を持っておく必要があると言えるでしょう。

 

ベルギー代表の基本戦術

 ベルギー代表の基本的な戦い方は以下のとおりです。

  • “黄金世代” を有するポゼッション型チーム
  • マルティネス監督の下で 3-4-2-1 を導入
  • 攻撃を本職とする選手が多く起用されているため、守勢に回る時間が多いなるほど脆さが現れる

 ベルギー代表の特長は「エデン・アザール選手を筆頭に、黄金世代を有していること」でしょう。「速攻」でも「遅攻」でも、得点を予感させる攻撃パターンを持っていることが最大の強みです。

 DF にも足元の技術を持った選手が起用され、ポゼッションやビルドアップで困る事態に陥らないことも特筆事項です。ただ、WB (ウィングバック)にも攻撃的な選手を起用しているため、守備ブロックを構築した際の強さは他の欧州勢よりも劣ると言えるでしょう。

 

ベルギー代表のロシアW杯・グループステージでの戦い

 ベルギー代表はグループGを3戦3勝(9得点2失点)の首位で突破しました。システムは 3-4-2-1 で、先発した選手は以下のとおりです。

画像:ベルギー代表の基本システム

 11月に親善試合で日本代表と対戦した時からの大きな変更点は「カラスコ選手が左 WB のスタメンになった」ということです。それ以外の変更は想定範囲内ですから、対応に手間取ることはないと言えるでしょう。

 ベルギー代表の攻めですが、「速攻」と「遅攻」でポイントとなる選手が異なります。

 速攻の場合、「ルカク選手の存在」が脅威となります。スプリント力と屈強なフィジカルを持つルカク選手が GK と DF 間のスペースに突進する訳ですから、苦し紛れのクリアボールでさえ、絶好のアシストになる危険があるのです。

 遅攻の場合は「デ・ブライネ選手の縦パス」です。良いポジションを確保した味方の攻撃的な選手にボールを届ける能力を持っている訳ですから、マークを外すようだと大ピンチを招くことになるでしょう。

 

日本代表がベルギー代表に勝つために要求されること

 日本代表が格上であるベルギー代表を下すためには以下の点が要求されることになると考えられます。

  • 攻撃面:
    • WB の背後にあるスペースを活用する
    • 2人目、3人目がサポートする形で連動
    • 手数をかけ過ぎずにシュートまで持ち込む
  • 守備面:
    • ルカクがカウンターで使う走路を塞ぐ
    • 「ムニルからのクロス」と「カラスコのカットイン」を念頭に置いた守備陣形を素早く構築する
    • 最後まで走り切る

 ベルギー代表はサイドが手薄になる 3-4-2-1 を採用しています。そのため、攻撃では(システム上の穴である) WB の背後にあるスペースをどのタイミングで活用するかが大きなポイントになります。

 特に、「ウィンガーを本職とするカラスコ選手の守るサイド(=日本の右サイド)をどれだけ有効に使えるか」が注目点です。

 一方、守備では「相手が得意とする攻撃パターンを消すこと」が要求されます。ベルギーがビハインドの場合は「フェライニ選手を投入したパワープレー」も念頭に入れておく必要があります。

その仕事をどれだけ行えるかによって、拮抗した試合に持ち込めると言えるでしょう。

 

 ハリルホジッチ監督はベルギーで行われた親善試合に勝つことはできませんでした。ベルギー代表のチームコンセプトは当時と同じですが、より洗練されていると予想されます。

 「ハリルホジッチ監督よりも、勝つ可能性を重視する」との理由で就任した西野朗監督が “自らの価値” を試合内容で示すことができるかが鍵になります。

 ベルギー代表もグループ第3節では主力選手を温存しているため、休養十分で迎えることでしょう。一発勝負という決勝トーナメントにどのような準備をして臨むのかに注目と言えるのではないでしょうか。