サッカー・アジアカップ2019、カタールとの決勝戦の敗因は「監督や選手にピッチ上での修正力が不足していたこと」

 UAE で行われていたサッカーのアジアカップが2月1日に決勝戦を迎え、日本は 3-1 でカタールに敗れました。

 試合後に森保監督が「かみ合わせが上手く行かなかった」と振り返っていたと NHK が報じていますが、日本だけがかみ合っていない状況ではなかったのです。状況を活かしたカタールが栄冠に輝いたのであり、修正力の不足が日本の敗因と言えるでしょう。

 

 敗れたカタールとの決勝。森保監督は「かみ合わせがうまくいかず、序盤の時間帯で失点してしまって、難しいゲームになったと思っている。選手が思い切ってプレーできる状態の準備ができなかった自分の責任だ」と振り返りました。

 そのうえで、これからの課題について「攻撃では引いて守る相手をこじあけられるように、守備では押し込まれても守り切れるように細部を詰めていきたい」とレベルアップを誓いました。

 日本とカタールが選択したフォーメーションが異なるのですから、かみ合わせがズレるのは当然です。これはメンバー発表の段階で予測ができたことであり、試合が開始してから確信に変わったはずです。

 “かみ合っていない状況” が放置され続けば、守備網が機能しません。それが前半での2失点に直結したのであり、敗因の所在は明確と言えるでしょう。

 

ミスマッチが生じるフォーメーションを互いに選択していた

 アジアカップ決勝で日本代表は 4-4-2 (= 4-2-3-1) を、カタール代表は 3-5-2 を選択して試合を迎えました。図示すると以下のようになります。

画像:アジアカップ2019決勝・日本対カタールのフォーメーション

 異なるフォーメーションを使っていたため、最初から「かみ合っていない状態」だったのです。つまり、両チームともに攻撃時に相手が使うフォーメーションによって発生する “ミスマッチ” を突くことができる状況でした。

  • 日本:カタールのサイドが薄いため、攻撃時の起点を作れる
  • カタール:日本のプレス時の枚数が足りないため、DF がボールを持てる

 要するに、両チームともに「一長一短」がある状況下だったのですが、日本側が “短” の部分を試合中に修正できず、カタールに前半だけで2失点を喫して窮地に追い込まれてしまったのです。

 

「4-4-2 のままで3バックの相手にハイプレスをかけ続けたこと」が敗因

 日本代表がアジアカップの決勝戦で効果的なプレスをかけられなかった根本的な原因は「カタールがパスを繋ごうとしたエリアで常に数的不利が発生する状況だったから」です。

 大迫選手と南野選手の2人がプレスに行っても、相手は3バックですから1人余裕のある選手がいます。また、中盤も柴崎選手と塩谷選手の2人対し、カタール代表は3人と常にミスマッチを抱えた状態にあったのです。

 これではパスサッカーを志向するカタール代表の思惑どおりの試合展開になるのは当然です。ただし、これは 4-4-2 の陣形を保ったままで3バックの相手にハイプレスをかけた場合に起きることであり、自陣深くに 4-4-2 のブロックを築いた場合は別です。

 ブロックの外側でパスをどれだけ繋いだところで得点にはならないのです。「状況に応じた適切なプレスの選択」ができなかったことが敗因の大きな割合を占めていると言えるでしょう。

 

代表選手が適切なプレス方法を判断できないのはハリル監督時に分かっていたこと、采配でカバーできなかった森保監督の責任も大きい

 アジアカップの決勝では両チームが用意したフォーメーションがミスマッチを生む形であったことに加え、試合はカタール側の思惑に近い状況になっていました。そのため、日本代表が試合中に “何らかの” 対策を行う必要があったのです。

  • 試合開始後に鮮明となった問題点:
    • 4-4-2 によるハイプレスがカタールの 3-5-2 に対して機能しない
  • 対応策:
    • 4-3-3 などにシステム変更してハイプレスを継続
    • ハイプレスを放棄
      → 自陣内で 4-4-2 のブロックを敷いてロングカウンターで対抗

 用意したゲームプランが試合終了まで機能すれば良いのですが、相手チームも試合に向けた準備をするため、プラン通りに試合を運べる保証はありません。カタールのペースで試合が進む中、対策を講じることなく時間の経過を待ったことで取り返しが付かなくなってしまったのです。

 ただ、日本代表の選手たちが適切なプレスのかけ方を判断できないのはハリルホジッチ監督時代から判明していたことです。状況(= 4-4-2 のままでハイプレスをかけることは自殺行為)の判断ができないのですから、森保監督が采配でカバーする必要がありました。選手と監督双方の責任なのです。

 

ハリルホジッチ元監督の記者会見での発言を再確認し、試合中の修正力を高める必要がある

 ハリルホジッチ元日本代表監督が「プレスのかけ方」に対して発言した内容は以下のとおりです。

 ハイプレスをかけるのか、ミドルブロックを形成するのか、ローブロックにするのか。それは私が「ここで作りなさい」と決めることではなくて、ゲームの状況に合わせて作るものだ。つまりブロックは「ハイ」「ミドル」「ロー」と3つあるが、自分たちで決めることではなく、相手を見ながら状況によって形成する位置を決めるのだ。

 これは2017年11月に行われたベルギー戦の前日会見でのコメントです。この発言の中に飛躍のヒントがあるのです。

 カタール戦の試合状況を見れば、「ハイプレス」が機能していないことは明確でした。もし、森保監督が「守備時は 4-4-2 の陣形維持」にプライオリティーを置いていたなら、「ハイプレス」は捨て、『撤退戦』をピッチ上の選手たちは選択・判断しなければなりません。

 逆に、森保監督が「カタールにハイプレスをかけてボール奪取からのカウンター」を指示していたなら、選手たちは『相手の3バックに合致するシステムを使ったハイプレス』を選択・判断しなければならなかったのです。

 

 こうした問題点の追求は代表監督や選手を “取材の場” に引き出せるマスコミのする仕事です。「押し込まれても守り切れるようにする」と発言する代表監督に「ビルドアップの起点を封じれなかったことが発端であり、その改善はどうするのか」と質問しなければなりません。

 ミスマッチの状況を活かしたカタールに対し、効果的に活用できなかった点に対する反省を促すことができなければ、リアルタイムデータの活用が可能になった近代サッカーで結果を残すことは困難になったと言えるのではないでしょうか。