「なぜ厚労省は HPV ワクチンの積極的勧奨をしないのか」と質したバズフィード、当時の担当者から「報道の問題を棚に上げるな」と批判される

 バズフィード(buzzfeed)の岩永直子氏が厚労省の元健康課長に「厚労省はいつ『HPV ワクチン』の積極的勧奨を再開するのか」と質問した記事を掲載しています。

 マスコミが総出で不安を煽ったことで発生した問題なのですから、「マスコミが世論を元に戻した時」が本音でしょう。しかし、マスコミ内で自浄作用が働くことはありませんでした。

 当時の担当者の “怒り” がにじみ出たインタビュー記事は珍しく、自分たちの収益のために「世論の扇動」や「変わり身」を平気で行うマスコミの本性が現れた内容となっています。

 

ーー HPVワクチンなのですが、なぜ積極的勧奨を中止したまま6年以上も引っ張っているんですか?
今となっては、マスコミの方からそのように言われてしまうのですね。

ーー それはマスコミがHPVワクチンは危険だという印象をミスリードしてきたという意味ですか?
積極的勧奨を差し控えた当時の世論には、マスコミの影響が少なからずありました。

 (中略)

ーー でも、国が積極的勧奨再開の方針を示したら、メディアも一斉に報じるはずです。日和見的なメディアこそ、「これは行政も安全性にお墨付きを出した」と、一斉に報道し始めるでしょう。これだけこう着状態が続いているならば、行政がメディアをリードする方針を示してほしい。科学的に理があるのですから。
マスコミの方はよくそうおっしゃるけれど、感覚的にずるいなと思う。もし、それが科学的に正確だとおっしゃるなら、なぜ自らそういう報道をしないんですか?なぜ、報道のきっかけをこちらに求めようとするんですか?あなた方には世論への強い影響力がありますよね。

ーー その通りです。私は十分ではないかもしれませんが報じていますし、メディアも行政も両方が動かないといけないと思いますよ。
マスコミの側で責任を取って、世論を戻せばいいじゃないですか。メディアが世論を変えてしまった責任まで行政にあるのでしょうか。

 

「マスコミが世論を煽ったことで生じた問題は自分たちで尻拭いをしろ」というのが本音

 「子宮頸がんワクチン」として知られる『HPV ワクチン』は朝日新聞などが先頭に立ってマスコミがほぼ総出で「重篤な副作用が生じる恐れがある」と大騒ぎし、ワクチン接種の積極的勧奨が中止される事態となっています。

 科学的には「積極的勧奨を行っていた厚労省の立場」が最初から正しいものでした。しかし、マスコミは『報道の自由』を背景に「科学的な知見」よりも「被害を訴える声」を情緒的に報じて、厚労省を吊るし上げたのです。

 それを今になって「行政がメディアをリードする方針を示して欲しい」とマスコミ側が要望を出すのは虫が良すぎます。

 マスコミは『不安を煽る報道』で記事を売って収益を手にしておきながら、風向きが悪くなると「(自らのプライドとメンツを損なわずに編集方針を転換するための)きっかけとなる動きをして欲しい」と要求しているのです。

 当時の担当者が怒りを覚えるのは当然です。「科学的にワクチン接種は正しい」という情報は既にマスコミの手元にあるのです。それを報じることを避けたのは編集権を持つマスコミ自身です。

 自分たちが報じなかったことによる責任を厚労省などの行政に責任転嫁することは問題ですし、マスコミの報道によって生じた問題の尻拭いを行う責務があるのはマスコミ自身と言わざるを得ないでしょう。

 

同業他社に対して「科学的事実を無視した報道をする理由はなぜか」と批判する記事を書けない時点で致命的

 ほとんどのマスコミは「『HPV ワクチン』は危険」とのキャンペーンに乗っかり、厚労省の方針を批判し続けました。ただ、科学的な知見を無視した状態での批判でした。

 マスコミ業界で自浄作用が働いていれば、「科学的な知見を無視して危険を煽る報道内容」に対する何らかの苦言を呈するメディアが出ていても不思議ではありません。しかし、そのようなマスコミは皆無です。

 マスコミ間の相互監視機能は働いていませんし、誤報やデマの指摘も平気で聞き流せる図太さを持っています。

 『子宮頸がんワクチンの危険性を煽る記事』がネットで炎上することが当たり前となれば、マスコミは逃げます。なぜなら、関連する記事を配信するほど報道機関としての信用が低下することになるからです。

 メディア間で「質の高い記事をどれだけ配信するかの競争」をするのではなく、記事に含まれる問題点を業界ぐるみで見て見ぬ振りをしているのです。他社の誤報やデマを指摘しないことによる “貸し借り” でミスから目を背け続ける業界体質にメスを入れる必要があるのは報道関係者自身と言わざるを得ないでしょう。

 

 子宮頸がんワクチンに関する問題はマスコミが作り出した報道問題なのです。尻拭いをする責務があるのは「科学的な知見を無視して危険を煽る報道を続けたマスコミ自身」であり、その責務が果たされるとは現状では言えません。

 まずはマスコミ自身が「子宮頸がんワクチンの危険性を煽った報道は誤りだった」と認める記事を配信した上で、その記事を支持することに消極的なマスコミに『公開質問』の形でメディアとして見識を問うべきでしょう。

 誰かが述べた見解を都合良く紹介し、世論を誘導する報道機関に特別な恩恵を与える価値はありません。短期的な利益を追い求める無責任な姿勢がマスコミへの大きな不信感を招く原因であると言えるのではないでしょうか。