山口二郎・法政大教授は科研費6億円の使途および成果を国民に分かりやすく提示・説明する責任がある

 大阪大学・牟田教授が科研費を政治活動に流用した疑惑に端を発した騒動が “飛び火” しています。

 6億円もの科研費を手にした法政大学の山口二郎教授は「研究の成果や科研費の使途」に疑念が持たれている状況です。なぜなら、遠藤乾・北海道大教授が「(山口二郎)先生が獲得されたファンドで好き勝手やらせてもらった」と発言しており、批判が起きない方が不思議と言えるでしょう。

 

山口二郎・法政大教授が手にした科研費は6億円

 山口二郎氏は北海道大学や法政大学で教授職を務めた経歴を持つ政治学者です。“文系に分類される教授” が2002年以降に6億円もの科研費を手にしているのです。

表:山口二郎教授が獲得した科研費
期間 交付額 研究課題
2002
〜2006
4億4577万円
直:3億6822万円
間:7755万円
グローバリゼーション時代におけるガバナンスの変容に関する比較研究
2007
〜2011
9854万円
直:7580万円
間:2274万円
市民社会民主主義の理念と政策に関する総合的考察
2012
〜2017
4498万円
直:3460万円
間:1038万円
政権交代の比較研究と民主政治の可能性に関する考察

 2002年以降、1年も途切れることなく合計で約6億円もの科研費を文系の教授が手にしているのです。

 IPS 細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授(京都大)よりも多額の科研費を得ているのですから、研究成果だけでなく、使途を公開する必要があると言えるでしょう。

 

“税金を原資とする科研費” を『エビデンスなしの申告書類』で研究者が自由に使えることが問題

 科研費の問題が炎上することになった要因として、以下の項目をあげることができます。

  • 科研費(=科学研究費助成事業)の原資は税金
  • 申請時の審査で給付額が決まる
  • “紳士協定” (=性善説)に基づく運用方針
    → 給付金の使途や報告書に対する審査はない

 税金が投入されているのですから、「何に使ったのか」と質問が出るのは当然です。政治に費やされる税金の使途を明らかにすることと同様に、学問に費やされた税金の使途も同じ水準で公開されるべきことなのです。

 しかし、現状は「受け取った科研費をどのように使うかは研究者の裁量に委ねられ、使途に対する報告義務は存在しない」のです。この状況で “学術目的” ではなく、“政治的活動” に科研費を流用していると疑われる事例まで浮上しました。

 科研費の運用ルールが現行のままで継続される見通しは「極めて難しい」と言えるでしょう。

 

政治家の収支報告書と同じ規則を科研費にも適用すべき

 山口二郎氏が6億円もの科研費を得たという事実は「山口二郎氏の研究にはそれだけの価値がある」と判断されたからでしょう。山口氏には「研究成果でその期待に報いる」と同時に、「科研費の使途」を公開する責務があります。

 「チェックが可能」と主張しても、事務的なものに留まるでしょう。“書類の記載内容” を確認することは可能でも、記載内容の裏付けを取り、不正を見抜くのは極めて困難です。

 旅費・会議費・謝礼などの金の動きを証明する義務は負っていないのですから、「政治家よりも金の動きは不透明」なのです。研究費は効率的・効果的に配分する必要がある訳ですから、「どのように研究費が使われたか」を事後的に確認できる体制に変更することは避けられないと言えるでしょう。

 山口二郎教授の共同研究者であった遠藤乾・北海道大教授が「山口二郎先生が獲得されたファンドで好き勝手やらせてもらった」と発言し、山口教授自身も「楽しかったですね」と賛同しているのです。

 山口教授は『遠藤教授の発言』に対する説明責任があります。もし説明ができないのであれば、科研費の運用そのものを見直し、『山口二郎ルール』という形で是正を図るべきでしょう。

 

 「研究者が何の制約も科されずに税金である科研費を使えること」は問題ですし、「科研費を使った政治的な活動」も容認されることではありません。

 反政権活動をするなら、科研費以外の資金で行うべきです。『学問の自由』を理由に「科研費を私的流用している」と世間に見ていることが反感を買う大きな原因になっていることを強く自覚する必要があると言えるのではないでしょうか。