最低賃金引き上げ政策に反発する自営業者らが反発し、ムン・ジェイン政権の支持率が大幅下落

 朝日新聞の牧野愛博ソウル支局長が「ムン・ジェイン政権の支持率が急落した」との記事を書いています。

 下落の原因は「最低賃金の引き上げ政策に反対する自営業者」が主な原因でしょう。賃上げを要求する界隈は韓国ムン・ジェイン政権の方針を “反面教師” として活かさなければならないはずです。

 

 韓国の世論調査会社リアルメーターは19日、文在寅(ムンジェイン)大統領の7月第3週の支持率が前週から6・4ポイント下がって61・7%になったと発表した。不支持は32・3%だった。文政権が14日に来年の最低賃金引き上げを決めたことに、自営業者や保守層が反発した。

 ムン・ジェイン政権は発足から支持率は7割前後で推移して来ました。大きく上下動することもありましたが、国内政策によって支持率が下落した原因は認識しておく必要はあると言えるでしょう。

 

ムン・ジェイン政権の支持率

 韓国は世論調査が好きな “お国柄” ですが、支持率調査を行うリアルメーター社が発表しているムン・ジェイン政権の支持率を抜き出すと下表のようになります。

表:ムン・ジェイン大統領の支持率(リアルメーター調べ)
2017年12月 11月第4週は 73% だったが、12月に入ると徐々に低下。最終的に 68.7% で終える
2018年1月 ピョンチャン五輪を前に「女子アイスホッケー南北合同チーム」の設置を発表。若者が反発し、59.8% に急落
2018年5月 4月末に北朝鮮との南北首脳会談を実施したことで、支持率が過去最高の 78.3% を記録
2018年7月 最低賃金の引き上げが自営業者の反発を招き、支持率が5週連続で下落。61.7% を記録。下落幅 6.4 ポイントは最悪の数字

 まず、ピョンチャン五輪の際に「女子アイスホッケー南北合同チームの発足」を発表。これに若者層が反発し、支持率を急減させました。

 しかし、五輪中から北朝鮮への宥和政策に奔走。4月末の南北首脳会談が決定打となり、支持率は過去最高の 78.3% にまで上昇しました。

 ところが、その後は「最低賃金の引き上げ」という経済政策に自営業者が反発。支持率の大幅下落を招く結果になってしまったのです。

 

「地域・年齢で例外規定を設けた上で最低賃金を引き上げる」との約束を平気で破ったムン・ジェイン政権

 ムン・ジェイン大統領は「2020年に最低賃金を1万ウォンに引き上げる」との公約を掲げ、大統領選に勝利しました。これが『聖公約』となっており、実現に向けたあらゆる動きを見せています。

 ただ、最低賃金の引き上げスピードが速すぎることに加え、「例外規定を設ける」との約束を平気で反故にするなど中小企業経営者や自営業者から反発が強まっている状況でした。

 毎年 10% 超の賃上げに耐えるには、それ以上の売上高を記録し続けることが不可欠です。しかし、そのように既存企業を成長させることができる経営者はほんの一握りであり、多くの経営者や自営業者はコスト増に苦しむことになるでしょう。

 ムン・ジェイン大統領は「すべての業種において最低賃金を引き上げる」との “騙し討ち” をしたため、経営環境の苦しい零細自営業者から強烈な反発を受けてしまったのです。

 

ムン・ジェインにとっての “ウリ” は「市民」ではなく、「労組に加入する労働者」である

 韓国では敵・味方の認定は熾烈です。仲間である “ウリ” として認められるかで立場が劇的に変わるからです。

 ムン・ジェイン大統領は左派政権ですので、「市民=ウリ」という認識が持たれているでしょう。ただ、市民の中でも『濃度』が異なるという点に注意が必要です。

 どういうことかと言いますと、『市民』の中でも『労働者』が “国民” として扱われます。また、『労働者』の中でも『労働組合に加入している労働者』が “一等国民” という立ち位置なのです。

 ムン・ジェイン大統領には集票機関として動く労組に手を差し伸べる理由があります。一方、雇用が保証されている労組も「大幅な賃上げを約束してくれる大統領」は理想的です。

 つまり、左派系大統領と労働組合に属する労働者が私腹を肥やすために最低賃金の引き上げを要求し、負担を企業や自営業者に押し付けているのです。この実態を痛感させられた人は左派系の政治的思想を持っていても、不支持に回ることでしょう。

 

 それだけムン・ジェイン政権の経済政策は「悲惨」なのです。韓国では若い世代の就業率が悪いため、日本に「韓国の若者を雇用しろ」と恥もなく、要求しているという現実を覚えておく必要があります。

 また、“無敵の人” が韓国社会で大量に生み出され、『義士』となるために日本でテロ行為に手を染める輩も発生するシナリオに向けた備えもしておかなければなりません。

 まずはリベラル派がムン・ジェイン政権の経済政策を反面教師として分析し、どうすれば望んだ成果を出せたのかをレポートなどで発表する必要があると言えるのではないでしょうか。