東京オリンピックの都市ボランティア、都立高校で担任が半強制的に申し込みをさせていた問題が発覚

 2020年に行われる東京オリンピック・パラリンピックの際の都市ボランティアへの参加申し込みに対し、都立高校の1つのクラスで担任が「全員出すように」との発言をしていたことが明らかになったと NHK が報じています。

 こうした発言は「氷山の一角」と言えるでしょう。なぜなら、自らの価値観を生徒に押し付ける傾向のある教員は他にも存在していることが考えられるからです。

 

 都の教育委員会は、多くの高校生に都市ボランティアとして参加してもらおうと先月下旬から公立高校の2年生と3年生を対象におよそ10万部の申し込み用紙を配布しました。

 教育委員会によりますと、都立高校の1つのクラスで担任の教諭が都市ボランティアの申し込み用紙を配布した際、生徒に対して「全員出して」と発言したということです。

 これは、この都立高校の生徒からとみられるSNSへの投稿で明らかになり、「強制するのはボランティアではない」などといった批判が相次いでいました。

 ネットで不評を買っていたオリンピックのボランティアが募集人数を集められたことは意外でしたが、その “からくり” が明らかになったと言えるでしょう。

 半強制的に応募させれば、ボランティアの人数は確保することは容易です。ただ、ボランティアが持つ本来の趣旨からは大きく逸脱する結果となるだけに速やかな是正が必要と言えるはずです。

 

“活動内容に強く共感する教員” が及ぼす悪影響に対する懸念が欠落している

 学校の教員が生徒に与える影響は世間の想像以上に大きなものです。なぜなら、成績を決定する権限を有しているため、一定の学力を有する生徒が教員の “強い意向” に反発することは稀と言えるでしょう。

 多くの教員は「教員が持つ権力」を自覚し、実際に行使することに対しては慎重になっているものと思われます。しかし、問題児が一定の割合で存在するのと同様に問題教師も存在するのです。

 そのため、「自分が強く共感する活動内容を生徒にも体験させたい」との欲求が前面に現れることで、「積極的に関わるべき」と生徒に価値観を押し付けることが常態化することになってしまうのです。

 自主性を重んじる必要のある教育現場で、生徒に “教員の価値観” が半強制的に押し付けられている問題は是正に乗り出す必要があると言えるでしょう。

 

「都立高校での申し込み」を禁止することが問題の根本的な解決策

 そもそも、東京オリンピック・パラリンピックの都市ボランティアの申し込み用紙が都立高校に向けて配布されていることがおかしいのです。

 申し込み用紙が配布されれば、「ボランティア活動」に意義を感じる教員は参加を促すことでしょう。生徒の成績に対する決定権を有する立場にある人物からの「要望」は「事実上の命令」と同じです。

 生徒へのパワハラと指摘されても止むを得ない行為なのですから、これは即刻止めなければなりません。

 『申し込み用紙』は職員室の前に配置する形を採用し、担任は各クラスで「都市ボランティアの申し込み用紙が職員室の前にあるから、希望者は各自応募するように」と促すことに留めるべきなのです。

 クラスごとに申し込み用紙を配布してしまうと “半強制的に応募させようとする教員” が出てくるのですから、余計な仕事を増やさないという意味でも、学校側が「都市ボランティアの応募に関与すること」は避けるべきだと言えるでしょう。

 

都立高校経由での応募分はキャンセルとすべきでは?

 半強制的に都市ボランティアへの申し込みをさせた都立高校は生徒に対し、「自由に取りやめることができる」と伝えたことが報じられています。

 ただ、この方法だと「応募を取りやめた」という記録が残るため、適切な対応とは言えないでしょう。したがって、「そもそもの応募そのものを無効にし、改めて希望者に応募を依頼する」という形を採るべきです。

 そうすれば、応募実績は存在しないのですから、「応募したことを取りやめた」という負い目が生徒に残ることはありません。

 ボランティアが本当に「自主的なもの」であるなら、そのように是正することが筋と言えるでしょう。主催者のメンツを守るために学生を半強制的に動員する形は速やかに是正する必要があると言えるのではないでしょうか。