中国共産党の影響が色濃く反映される条例改正へと舵を切った香港で『一国二制度』が終焉へと進み始める

 日経新聞によりますと、香港で容疑者として当局に身柄を拘束されると中国本土に引き渡しが可能になる条例改正案が審議され、『一国二制度』が揺らいでいるとのことです。

 香港の魅力は「中国本土とは異なる」という点だったのですが、その魅力が失われつつある状況です。「中国本土と変わらない」のであれば、『一国一制度』であり、“例外” でもありません。

 沖縄などで『一国二制度』を主張する界隈がありますが、現実に目を向ける必要があると言えるでしょう。

 

 香港政府が身柄を拘束した容疑者を中国本土に引き渡せるようにする条例改正案が波紋を広げている。民主派は中国共産党に批判的な活動家などを本土に連行できるようになると批判、香港に拠点を置く外国企業も懸念を示し始めた。独立した司法制度など香港に高度な自治を認める「一国二制度」の揺らぎは経済活動にも影響しかねない。

 「中国のようで中国でない」から、香港は “アジアのビジネス拠点” として魅力があった訳です。これが「中国本土の法律が適用される」となれば、魅力は一気に失われることでしょう。

 もし、魅力度は変わらないと判断している企業があるなら、市場規模の大きい北京や上海に本部を置いているはずだからです。しかし、実際には違う訳ですから、経済面での影響が出てくる可能性は十分にあると言えるでしょう。

 

「中国国歌を侮辱なら罰則」との条例が “香港で” 審議されている

 どういった形で『一国二制度』が損なわれているのかと言いますと、例えば「中国国歌を侮辱すると罰則」という条例を香港は審議中です。

 中国は2017年に国歌法を施行し、香港にも立法措置を求めていた。

 条例案は香港の行政長官や立法会議員の就任宣誓の際に国歌の演奏を義務付け、替え歌を歌うなどの侮辱行為に罰則を科す。インターナショナルスクールを含む小中学校にも国歌教育を求める。

 サッカーの試合では相手国の国歌演奏時にブーイングが発生するケースがあります。香港代表チームがプレーする際は『中国の国歌』が演奏されるのですが、これに香港サポーターがブーイングをしたことで中国共産党が「罰則の制定」を要求しているのです。

 『一国二制度』なら、「中国の国歌だけではなく、すべての国の国歌を侮辱する行為を禁じる」といった内容でも良いはずです。しかし、実際には「中国本土と同じ国歌教育」を要求しているのですから、『一国二制度』とは言えない状況になりつつあると言えるでしょう。

 

中国の法体系が強まるほど、『一国二制度』の色合いは薄れる

 香港では民主派が厳しい条件下で運動を続けていますが、容疑者の身柄を中国本土に引き渡せるようになれば運動は風前の灯火となるでしょう。

 なぜなら、現状でも中国政府に批判的な活動家が忽然と姿を消しているからです。表ルートで堂々と引き渡しが可能になるなら、民主派の運動が消滅することは時間の問題です。

 日本では沖縄で「『一国二制度』を導入すれば経済発展する」と主張する界隈がありますが、“例外扱い” をすることのメリットを相手側に与えることができなければ制度は行き詰まることになるのです。

 沖縄の場合は「現状でさえ、日本政府からの補助金依存の財政」なのですから、話にならないレベルと言わざるを得ません。「中国と天秤にかけて日本政府から好条件を引き出す」という見え透いた戦略は外患誘致に該当するため、戦略そのものを間違えていると言えるでしょう。

 

沖縄が「中国化する香港が失った魅力」をアピールできる “環境” を整えれば、企業のアジア本社を引き抜けるだろう

 香港の環境が中国と変わらなくなっているため、アジア本社を置く外資系企業にとって魅力度が低下しています。つまり、これは香港の周辺国にとってはチャンスと言えるでしょう。

 生産拠点が香港に置かれているのではなく、“本社機能” が香港にあるのです。税制面などで競える環境を用意すれば、香港撤退を検討している外資系企業の多くを引き寄せることができるはずです。

 『米軍基地』があるのですから、英語は日本の中での身近と言えるでしょう。税制も優遇されていますので、「本社機能の移転+役員を含む本社従業員の沖縄居住」を条件にした法人税特区も設立しやすい土壌があります。

 企業にとって(沖縄が)魅力的に映れば、投資が行われますし、沖縄の税収は増えるのです。「基地依存の経済」と揶揄される状況を脱却するチャンスが訪れているのですから、これを活かせるかがポイントです。

 ビジネスに適した市場環境を作り出し、維持する政治家が沖縄や日本にどれだけいるのかでビジネスチャンスの結果が大きく変わると言えるのではないでしょうか。