ダウンロード違法化の対象範囲拡大をめぐる調整が自民党内で本格化、スクリーンショットまで違法化されるのかの山場を迎える

 NHK によりますと、自民党内で違法ダウンロードの対象を漫画や写真などにまで拡大する著作権法改正案の調整が本格化しているとのことです。

 「リーチサイトの規制」は必要な考えですが、「ダウンロード違法化の対象範囲拡大」が法案そのものを台無しにする内容になっているのです。当事者の漫画家などが後者の改正案に批判の声をあげており、自民党が法案を党内でどのように調整するのかが大きな注目点と言えるでしょう。

 

 インターネット上の海賊版サイトの対策を強化するため、政府は、違法とするダウンロードの対象を、音楽や映像だけでなく、漫画や写真など著作物すべてに広げる著作権法の改正案を今の国会に提出する方針です。

 (中略)

 自民党では、文部科学部会と知的財産戦略調査会は改正案を了承していて、刑事罰を科すのはダウンロードを繰り返した場合に限定していることなどを踏まえ、すきのない対策が必要だとして、今の内容で法改正を目指すべきだとしています。

 一方、総務会では、漫画家など関係者の理解が不十分だという慎重な意見が出され、了承が見送られたままで、党内からは「権利者の利益が不当に害される場合に限って違法とすべきだ」などとして修正を求める声も出ています。

 

自民党の総務会での了承が見送られた著作権法改正案がどうなるのかが争点

 自民党・総務会で著作権法の改正案が了承されなかったのは「違法ダウンロードの定義が拡大され過ぎた内容だから」です。

 「漫画や写真など著作物すべて」が対象となると、表現活動に支障が生じることになります。サイトにアクセスしたユーザーが「権利者の許可を得ているか」を判別することは不可能ですし、他者の著作物を無断利用する輩は「許可取得済」と詐称することでしょう。

 創作活動を行う時は「様々なデータを保存」します。風景を描く際に “参考にする画像” をダウンロードするでしょうし、その行為まで「違法」とすることはマイナスと言わざるを得ません。

 「原作のまま(= トレースをする)」という条件を設けても、本来の著作権者の利益は守られます。しかし、「ダウンロードすら許さない」という『弊害が大きすぎる改正案』を通そうとしているのですから、批判が起きる事態になっているのです。

 

『原作のまま条件』を超えて対象の範囲が拡大していることが問題

 著作権法の改正で求められているのは「海賊版対策」でしょう。具体的には次の2点です。

  1. 『他者の著作物』を丸ごと(= 一括で)無断で配信
  2. 『他者の著作物』を分割して無断で配信

 これらは「違法ダウンロード」や「リーチサイトの規制」で行うことに異を主張する著作権者はいないでしょう。なぜなら、『海賊版対策』の “本丸” に該当する部分だからです。

 ところが、文化庁から提出された改正案には上記2項目に加え、次の2点も違法になると提示されていたのです。

  1. 『他者の著作物』を『自分の著作物』に無断転載して配信
  2. 素材(=『他者の著作物』)をライセンス違反して配信

 3は「引用の条件を満たしていない記事」、「著名人や漫画キャラクターの画像を SNS のアイコンに使う行為」などが該当します。この部分についても、『原作のまま or 著作者の利益が不当に侵害される』との条件を設けたところで、違法行為の大部分を取り締まることはできると言えるでしょう。

 しかし、4に該当する配信物をダウンロードすることも違法にする法案が成立に向けて動いているのです。これは「 “著作物Aをライセンス違反する形で使用された著作物B” をダウンロードする行為」が違法になるのですから、(資料集めをする機会が多い界隈から)反対意見が出るのは当然のことなのです。

 

 『海賊版対策』を “狭義” で行っても、効果は得られるはずです。これを “広義” で解釈することで創作活動そのものが成り立たなくなれば本末転倒と言わざるを得ないでしょう。

 「著作権」を持たない出版社の意向を汲み取るほど、利益を生み出す源泉に該当する作者の創作活動に制約がかかり、新たな知財が生まれなくなるという現実に目を向ける必要があると言えるのではないでしょうか。