『文化庁のDL違法化法案』の提出が見送られてから、「自民党は選挙対策で取り下げた」と批判する辻元議員の方が下心がある

 漫画家などから強い批判が出ていた『DL違法化法案(=著作権法・改正案)』を自民党が今国会への提出を見送った件で、立憲民主党・辻元清美国対委員長が「参院選対策という下心が見え見えだ」と批判していると NHK が伝えています。

 「法案内容に重大な欠陥がある」との批判が “当事者” から出ていたのですから、提出を見送るのは当然でしょう。これを「参院選の選挙対策」との批判は筋違いです。

 また、法案化に向けた動きが報じられた時点で「対策の方向性がズレている」との批判も出ていましたので、ネット上を中心に炎上が起きたにもかかわらず、『表現の自由』に対する “党の見解” を何も述べていなかった立憲民主党の姿勢を反省する必要があると言えるでしょう。

 

 海賊版サイトの対策を強化する著作権法の改正案を政府が今の国会に提出するのを見送ったことについて、立憲民主党の辻元国会対策委員長は「参議院選挙対策という下心が見え見えだ」と批判し、国会で追及する考えを示しました。

 (中略)

 立憲民主党の辻元国会対策委員長は党の代議士会で、「参議院選挙対策という下心が見え見えで、『インターネットの利用者から批判が多いため、選挙での離反を恐れて、取り下げた』という動機は不純だ」と批判しました。

 批判の声を(最初に)あげたのは「インターネットの利用者」ではなく、「漫画家などのコンテンツ製作者」です。要するに、創作活動を行っている人々が “インターネット上で” 批判の声を上げたことを皮切りに、『文化庁のDL違法化法案』が炎上したのです。

 辻元議員が主張する「選挙対策」という批判は本筋から外れていると言わざるを得ないでしょう。

 

創作活動が頓挫すれば、コンテンツ産業政策や知財戦略で “守るべき対象” が消滅する

 安倍政権は『コンテンツ産業』に力を入れ、国の税収に繋げようとしています。映画や音楽がコンテンツの代表例ですが、日本製で世界に通用するコンテンツは「漫画やアニメが中心」と言えるでしょう。

 いずれのコンテンツにおいても重要なのは「創作活動が続くこと」です。もし、創作する環境が悪化すれば、市場で売れるコンテンツを作ることが難しくなり、コンテンツ政策そのものが無駄になってしまいます。

 今回の著作権法改正案は「漫画家などの創作環境を著しく悪化させる」という “強烈な副作用” を含んでいたものだったのです。

 既存コンテンツの著作権を保有する人は『DL違法化法案』を歓迎するでしょう。なぜなら、「既存コンテンツからの収益」は確保できるからです。そのため、新たなコンテンツを生み出す能力が衰えた “老害” となっている人ほど肯定的と考えられます。

 しかし、創作意欲に溢れる人々やコンテンツを作る仕事に現在従事している人々にとっては “大きな足かせ” 以外の何物でもありません。産業を潰すことによる損害は「税収減」という形で政府にも跳ね返ってくるのですから、問題のある法案の提出は見送ることが当然なのです。

 

『規制賛成派の意見が水増しされた法案』の提出を見送ることは「選挙対策」とは言わない

 辻元議員は「選挙対策で取り下げた」と批判していますが、“問題点が指摘されている法案” の提出を見送るのは当然です。指摘された内容が事実であるなら、尚更でしょう。

 規制賛成派の意見が水増しされ、守るべき対象である漫画家などからは「不備」が指摘されているのです。

 “下心” があるのは「政権批判に使ってやる」と考える野党側でしょう。文化庁が与党・自民党に提出した法案に問題があることが有識者から指摘され、自民党の部会で紛糾することになったのです。

 野党は自民党内での出来事については蚊帳の外ですが、有識者からの指摘で炎上が起きた時点で「有識者が指摘している問題点が含まれた法案が国会に提出されれば、野党は『表現の自由』を守るために反対する」との立場を表明することはできたはずです。

 そうした動きは見当たらなかったのですから、批判の対象がおかしいと言わざるを得ないでしょう。

 

『選挙対策』とは「野党になると “政権時に自らが主導・決定した消費税率の引き上げ” に反対すること」だ

 選挙対策を露骨にやっているのは立憲民主党など、旧・民主党の政党です。民主党政権時に「消費税率の引き上げ」を当時は野党だった自民党・公明党を含む “三党合意” で決定しました。

 ところが、その後の総選挙で民主党は野党に転落すると「消費税率の引き上げ反対」を選挙の度に主張するようになったのです。

 これを『選挙対策』と呼ばずに何と呼べばいいのでしょうか。「立憲民主党は民主党とは違う政党」と主張したところで、幹部議員の顔ぶれは同じです。社会保障や教育面での歳出増を訴えながら、国民に痛みを伴う消費税率の引き上げは反対では財政が持ちません。

 あまりに無責任な主張となっているのです。自分たちがやっている露骨な『選挙対策』から目を背けさせるために言いがかりを付けていることと同じでしょう。辻元議員はまずは自分たちの姿勢を反省し、国政の課題に正面から取り組むべきと言えるのではないでしょうか。