「文化庁が『DL 違法化の積極意見』を水増しした不正確な資料を与党・自民党に提出した」との批判が明治大学 WG から上がる
スクリーンショットの規制など、権利者の許可なくインターネットにアップされた漫画・論文・写真などをダウンロードすることを全面的に禁じるための著作権法の改正を目指す文化庁が “恣意的な資料” を自民党に提出したとの批判が専門家から出ています。
声をあげたのは明治大学知的財産法政策研究所のワーキンググループで、検証レポート(PDF)という形で公開されています。「文化庁が審議会での議論を不正確に伝えている」と批判しており、事実確認が必要と言わざるを得ないでしょう。
明大の WG が主張している内容
ワーキンググループ(以下、WG)が検証レポートで主張している内容は以下のとおりです。
- 4人の慎重派委員の意見そのものを省略
- 2人の慎重派委員の主張の重要部分を省略
- 慎重派の委員2名の意見の一部だけを切り取り積極派であるかのように誤導
- 積極派の人数を「水増し」する
批判されている内容が事実であれば、文化庁の姿勢は論外と言わざるを得ません。なぜなら、明らかにアンフェアな意見集約を行い、政治家を騙す形で立法化を図ろうとしていることになるからです。
『審議会』での発言内容が歪められているなら、これは「明らかな不正」です。文化庁は事実関係を説明する責任があると言えるでしょう。
「積極派1人の意見」が「積極派4人の見解」に “水増し” される『審議会』に存在意義はあるのか?
『審議会』は専門家が委員として参加することで「意味のある改正案」が出されるから価値があるのです。しかし、文化庁が自民党に手渡した『DL 違法化法案』は問題が多すぎます。
当事者である漫画家から「反対」の声があがり、出版社も「ここまで望んではない」と消極的な姿勢に転換しました。しかも、法案説明を受けた与党が難色を示し、潰さざるを得ない代物だったのです。
「ダウンロード規制に積極的な学者が4名いる」と見える資料も、実際には大渕哲也・東大教授の発言を4分割して水増ししたものです。その一方で、DL 規制に慎重な姿勢を示している4委員の意見は抹消しているのですから、資料としての役割を果たしていません。
このような雑な仕事しかできないのであれば、『審議会』の存在意義そのものを見直す必要があると言わざるを得ないでしょう。
理屈が伴った当事者からの陳情を受け、問題の含まれた法案を止めた自民党の働きは評価されるべき
文化庁は “問題が含まれた法案” を提出したのですから、担当者は引けないでしょう。しかも、審議会の内容に手を加えていますので、法案内容を訂正することは自らのミスを認めることと同じです。
そのため、ヒアリングなどで「現行の法案は支持されている」とのアリバイを作り、現行法案を押し通そうとすることが予想されるのです。
今回は古屋圭司衆院議員や古川康衆院議員などの働きで文化庁の “暴走” は止められました。「違反者の取り締まり」を目的としていたにも関わらず、「利用者全員を取り締まることが可能」という状況になる恐れがあったのですから、自民党の働きは評価されるべきでしょう。
当事者から「理屈と根拠が伴った陳情」を聞き入れ、問題が含まれた法案に NO を示したことは大いに評価しなければなりません。ただ、文化庁は法案内容が変更されることなく成立することを強く要望することが予想されるため、正念場は続くと言えるでしょう。
まずは『デタラメな意見集約を行った資料』の提出を平然と行った文化庁に理由を説明させなければなりません。これは政治家というより、マスコミの本分と言えるはずです。
また、意見の水増しが指摘された大渕哲也・東大教授に取材を申し込み、発言内容の裏取りをする価値もあります。「表現の自由」を露骨に規制する動きを見せている文化庁に対し、メディアがどのように動くのかも注目と言えるのではないでしょうか。