アメリカ・フロリダ州での銃乱射事件、すべては今後の対応次第

 アメリカ・フロリダ州で男が銃を乱射し、100人以上が死傷する事件が発生しました。今後、事件背景の解明や具体的な対策が議論されることになると思われますが、その対応がアメリカの国内世論に大きく影響を与えることでしょう。

 

 アメリカ南部、フロリダ州のナイトクラブで12日未明、男が銃を乱射し、これまでに50人が死亡、53人がけがをしてアメリカで起きた銃の乱射事件としては過去最悪となりました。捜査当局は男が過激派組織IS=イスラミックステートへの忠誠を誓っていたとして動機の解明を進めています。

 

 今回の事件は「イスラム過激派によるテロ」と決めつけるには時期尚早でしょう。ターゲットとなった場所が特殊だったからです。

  • 犯人はアフガニスタン系アメリカ人
  • 3年前にテロリストとの関係が疑われ、警察から事情聴取を受けた経歴を持つ
  • 犯行中に警察に『ISに忠誠を誓う」と電話
  • 犯行には殺傷力の高い自動小銃や拳銃が使用
  • 狙われたナイトクラブは「LGBTのクラブ」と公言
  • ISは戦闘員による行為と宣言

 マイノリティーの属性を持つ加害者が別のマイノリティーの属性を持つ人物たちを攻撃した事件ですから、日本国内での報道は二の足を踏むことでしょう。なぜなら、普段の報道でよく見る “善悪の対立構図” を作り上げることができないからです。

 

 事件発生を受け、我田引水をすることで自らの主義・主張を後押ししようとする勢力も出てくることが予想されます。

 特にフロリダ州が大統領選の鍵を握っているを考えると、波紋は大きくなることでしょう。現に民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン氏は銃規制強化を訴え、共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏は移民対策強化を訴えています。

 ただ、問題点としてはどちらの候補が掲げる政策も効果が現れるには時間と労力を非常に要するということです。

 

 まず、ヒラリー氏の掲げる銃規制強化の鍵は「徹底的にできるか」に尽きます。殺傷力の高い兵器用だけを制限しようとしても、古くなった軍用品が民間市場に払い下げられるという形で出てくるため、効果は見込めません。

 したがって、殺傷力の高さで制限するのではなく、銃そのものの所持を徹底的に取り締まる必要が出てくる訳です。憲法に記載された銃を所持する権利を一般のアメリカ国民から剥奪し、陸続きのメキシコからの銃の密輸入も並行して防ぐという政策を通し、実行することが求められているのです。

 対するトランプ氏のアイデアも実現度が低く、非現実的です。アメリカ国内には多数のイスラム教徒が生活していますし、市民権を持っている人も大勢います。

 彼らをアメリカ国外に追放するには事務手続きだけで膨大な時間を要することになりますし、アメリカで合法的に居住権を所有している善良なイスラム教徒も追放の対象になるのですから、訴訟や国際批判を引き起こす要因となる可能性があります。

 

 LGBTを支援するリベラル界隈からは「多様性を受け入れよう」というキャンペーンが繰り広げられることが予想されます。

 しかし、現実にはその多様性の中には「LGBTの存在は断固認めない」という考えや「厳格なイスラム主義」という多くの人が認めがたいと感じる主張も含まれているというジレンマに陥るのです。

 口先だけのキレイゴトで誤魔化しきれない事件が発生してしまったのですから、棚上げや先送りにするメリットはありません。議論を呼びかけることは重要ですが、それによる結論を導き出すことがより重要なことなのです。

 アメリカが出した “結論” に対し、どういった準備をしておく必要が日本にはあるのかを考えるべき時だと言えるのではないでしょうか。