学生をタダ働きさせることを美談として伝える毎日新聞

 リオ五輪での日本語通訳ボランティアが不足しているとして、リオ大会組織委員会からの「学生ボランティアを派遣して欲しい」との要望に東京外国語大学が応じたことを毎日新聞が美談として伝えています。

 しかし、この判断は美談ではなく、タダ働きさせるブラック企業の論理と同じであることを見落としてはなりません。

 

 担当の鶴田知佳子教授によると、今年2月、知人を通じて組織委から「日本語の通訳ボランティアが不足している。学生を派遣してほしい」と打診があった。各会場で日本の選手やメディア関係者らが話す日本語を、五輪の公用語の英語に訳すのが主な仕事で、その逆も担う。

 (中略)

 ユニホームや活動日の食事は提供されるが滞在費や渡航費は自己負担。宿泊先は大学側が手配したものの、地球の反対側への渡航費約30万円は学生が賄うため、一時的に親に援助してもらう学生が多い。

 

 「困った人を助けたい」と考える姿勢はすばらしいものです、しかし、自らのスキルを安売りしてしまうと、後々になって自分たちが苦労することになることを覚えておく必要があります。

 「困った人を助けたい」と考える姿勢はすばらしいものです、しかし、自らのスキルを安売りしてしまうと、後々になって自分たちが苦労することになることを覚えておく必要があります。

 

  • ユニホームや活動日の食事は大会組織委員会が提供
  • 滞在費および渡航費は学生ボランティアの自己負担
    → 宿泊先は大学側が手配した
  • ボランティアの期間は8月5日〜20日
  • シフトは6勤1休

 明らかに、ナメられています。「ボランティア=タダ働き≒依頼者の奴隷」ではないことを十分な社会人経験を持っていない学生に伝えることが大人に求められていることでしょう。

 学生ボランティアを依頼するのであれば、滞在費・渡航費はリオ五輪の大会組織委員会が負担すべきことなのです。IOCが商業主義でたんまり儲けておきながら、実態はボランティアをタダ働きさせることは奇妙なことです。

 自らの仕事に対する “正当な対価” は絶対に要求しなければなりません。ボランティアであったとしても、コストに要した分は請求する権利があり、それを辞退するかは本人の意向が最も反映されるべきものだと認識しておくべきです。

 

 今回、リオ五輪に翻訳・通訳の学生ボランティアとして参加する学生は就職活動で人気となるでしょう。

 ただし、人気が出るのは社員を安い賃金で働かせたいと考えるブラック企業が中心になると思われます。戦後の焼け野原からの復興を成し遂げ、日本を経済大国に押し上げることに貢献した年配者のために、身を粉にして働く若者の姿は非常に美しいとメディアからチヤホヤされているだけなのです。

 尊敬すべき対象の大人もいますが、軽蔑に値するキタナイ大人もいることを頭の片隅に留めておいて損することはないと言えるのではないでしょうか。