二子玉川での多摩川氾濫による洪水被害、「現状で十分」との立場を採った地元住民と蓮舫議員が “呼び水” となる

 読売新聞によりますと、台風19号の影響で12日夜に氾濫した多摩川の下流部にある世田谷区玉川では堤防が一部整備されていない区間があったとのことです。

画像:二子玉川付近での多摩川の堤防(読売新聞より)

 堤防が作られることに懸念を表明した地元住民や「優先順位が違うのでは」と疑義を呈した蓮舫議員が “氾濫被害の呼び水” となったことは否定できません。堤防未整備の下流域で浸水被害を受けた住民が最大の被害者だと言えるでしょう。

 

 12日夜に多摩川が氾濫した東京都世田谷区玉川には、下流部で唯一、堤防が整備されていない区間があった。

 (中略)

 この地域を巡っては、2007年の台風9号で2000袋以上の土のうを積んで浸水を防いだケースもあった。同省京浜河川事務所はこれまで、「大雨が降ると多摩川では最初に浸水する」などと周辺住民に説明。堤防整備計画を進めようと説明会なども度々行ってきたが、「景観を大切にしてほしい」「家をのぞき見られる恐れがある」といった声が根強く、同意を得られていなかった。

 

「(多摩川下流域の左岸で)最初に浸水する」と説明されていたことが現実に発生

 世田谷区玉川で発生した浸水被害は「堤防が未整備だった区間から越水したこと」で発生しました。そのため、整備が完了していなかった点について議論することが必要と言えるでしょう。

 その中で問題視されるのは「地元住民からの反対」です。

 河川事務局は「最初に浸水が発生する」と周辺住民に説明していたものの、景観が悪化することなどを理由に反対運動がありました。そのため、東急・二子玉川駅の上流域では堤防未整備の “空白地帯” が発生し、ここから越水が発生してしまいました。

 河川の流下能力を高めるためには「下流から整備すること」が前提ですから、堤防の整備が間に合わなかったことが大きな理由と考えられます。

 

事業仕分けで「多摩川の堤防は整備されている」と主張した蓮舫議員

 堤防の整備事業を妨害したのは(皮肉なことに)参院・東京選挙区から選手された蓮舫議員でしょう。なぜなら、平成22年(2010年)10月に行われた事業仕分けで次のように言及(PDF)しているからです。

画像:事業仕分けでの蓮舫議員の発言

 今、スーパー堤防をやろうとしているところは、二子玉川沿いを視察に行かせていただきましたけれども、既に堤防が整備されて、その上でまちづくりという機会があれば、更にスーパー堤防化しよう、ダブルで大切にしている。

 つまり、住宅、人口密集地だからやりたいという思いはわかるんですが、優先順位が違うと私は思うんですが、いかがでしょうか。

 「二子玉川沿いを視察に行ったが、既に堤防が整備されている」と蓮舫議員は主張していますが、これは完全な誤りです。

 まず、二子玉川下流側の堤防を巡り、反対派が2010年の1月末に建設差し止めを求めて提訴しています。住民側の訴えが退けられたため、堤防は平成26年度(2014年)に完成するのですが、蓮舫議員の「堤防が整備されている」との認識は間違いと言わざるを得ません。

 しかも、二子玉川駅の上流域については「手付かず」なのですから、「視察に行った意味すらない」との厳しい批判を受けなければならないでしょう。

 

「台風19号による洪水被害は特殊事例」と割り切るのか、河川改修などの公共事業を必要とするのかの見解を示すべき

 多摩川が二子玉川の堤防未整備区域から越水した件に対し、蓮舫議員は自身の見解を公表する必要があるでしょう。なぜなら、以下の理由があるからです。

  • 地元・東京から選出された参議院議員
  • 「二子玉川沿いは堤防が整備済み」と過去に公式発言
  • 「(多摩川の堤防整備は)優先順位が低い」とも言及

 蓮舫議員の主張は「2010年に視察を行った際の防災水準で十分」であると考えられますが、台風19号による水害から「現状のままでは再発する恐れがあること」が現実味を帯びることとなりました。

 そのため、蓮舫議員には「二子玉川の堤防未整備区域から越水被害が起こる可能性をどう捉えているのか」を明らかにする責務があるのです。

 「台風19号が巨大であり、様々な不運が重なっただけ」と主張できるなら、「堤防整備の優先順位は低い」とする蓮舫議員の主張は最もです。しかし、自らの見解を明らかにしないのであれば、単なる卑怯者と言わざるを得ないでしょう。

 

 国家予算には限りがありますから、「とにかく堤防を作れば良い」という雑な仕事をするのは論外です。しかし、「堤防が未整備の区域がある」など “必要性が高いと考えられる地域” もあるのですから、費用対効果などを踏まえた優先順位を付けて整備を行い続けることが重要であるはずです。

 一級河川の規模になると流域の規模が大きくなるため、都道府県で対応できるレベルを超えることになります。こうした対応をどうするかを国会で議論し、結論を出して防災対策を行う必要があると言えるのではないでしょうか。