「新型コロナの患者数が爆発路線に乗っている可能性あり」と判断した大阪府が『不要不急な往来の自粛』を要請するのは当然

 「大阪府が示した3月20日(金・祝日)からの3練習での往来自粛要請は過剰反応」との批判が兵庫県知事や一部マスコミから出ています。

 ただ、新型コロナウイルス(covid-19)の感染者が「想定の倍」という状況では大阪府の行動は理解できるものです。

 「過剰反応」と批判・揶揄している側が反証を示す必要があると言えるでしょう。

 

大阪府(の吉村知事)が示した根拠

 大阪府が「3連休での(兵庫県などとの)不要不急な往来の自粛」を要請する根拠となっているのは『緊急対策の提案(案)』でしょう。20日に大阪府庁で行われた対策本部会議の資料(PDF)として公開されています。

画像:大阪府と兵庫県の現状分析
  • 1人が生み出す2次感染者数の平均値が兵庫県で「1」を超えている
    → 感染の急激な増加が既に始まっている恐れあり
  • 大阪府と兵庫県の試算
    • 〜3月19日: 患者78名(重篤者5名)
    • 20〜27日: 患者586名(重篤者30〜39名)
    • 28日〜4月3日: 患者3374名(重篤者227名)

 元ネタは厚労省のクラスター班が3月16日に分析・作成した資料でしょう。これを3月18日に大阪府が「作成資料」として入手し、「往来の自粛要請」を行う判断材料にしたと考えられます。

 大阪府の動きに対し、兵庫県の井戸知事は「過剰反応」と批判しています。ただ、『爆発路線』に乗っていると指摘できる根拠があるだけに兵庫県知事の対応の方が疑問視せざるを得ないでしょう。

 

「大阪府と兵庫県の患者数(試算値)」を「それぞれの府県での患者数(実際値)」を上回っていることが問題

 厚労省のクラスター対策班が発表した試算値は「大阪府と兵庫県の患者数(合算値)」です。問題なのは実際の患者数が試算を上回っていることでしょう。

表:新型コロナウイルスの患者数
患者 重篤者 死者
厚労省の試算
(19日:大阪府+兵庫県)
78 5
大阪府
(3月18日時点)
81 5 1
兵庫県
(3月19日時点、PDF
80 5 4

 「大阪府だけの数値」でも「兵庫県だけの数値」でも『厚労省の試算』を上回っているのです。

 この現状で危機感を抱いて対策を打ち出す政治家に地方自治体のトップを勤めて欲しいですし、「いつも過剰反応だ」などと皮肉を述べるような首長ができるのは手遅れになった責任を国に転嫁するぐらいです。

 「政府の対応が遅いからだ」とマスコミの前で文句を言えば、知事批判が政権批判へと向かうのですから、井戸知事の無対応も “ある意味” で「正解」と言えるでしょう。

 

感染症指定医療機関の病床数は大阪78床・兵庫50床

 厚労省(のクラスター対策班)が「来週には重症者への医療提供が難しくなる恐れがある」と警鐘を鳴らしている理由は『指定医療機関の病床数』に上限があるからです。

 新型コロナウイルスの患者を原則として受けれいているのは「第2種感染症指定医療機関」ですが、近畿圏での病床数は下表のとおりです。

表: 感染症指定医療機関の病床数(2019年4月1日時点)
特定 第1種 第2種 合計
滋賀   2 32 34
京都   2 36 38
大阪 2 4 72 78
兵庫   4 46 50
奈良   2 22 24
和歌山   2 30 32
近畿 2 16 238 256

 『特定』と『第1種』の病床を「新型コロナの患者」で埋めてしまうことは本末転倒になるため、実際の上限は『第2種感染症の病床数」です。

 ただ、すべての病床が使える訳ではないため、大阪60床・兵庫40床ほどに患者を抑え込む必要があると言えるでしょう。

 ちなみに、厚労省が発表した3月19日時点での「都道府県別の新型コロナウイルスの患者数(PDF)」と「第2種感染症指定医療機関の病床数」をグラフにすると以下のようになります。

画像:都道府県別の新型コロナ患者数と病床数

 病床数を超える患者数を抱えているのは愛知・大阪・兵庫の3府県です。これらの地域では「小さな感染爆発」でも医療崩壊となるリスがあります。

 したがって、知事が「感染拡大を引き起こす恐れのある活動の自粛」を要請するのは理解できることだと言えるでしょう。

 

大阪と兵庫の “共倒れ” は関西経済にとって大打撃

 大阪府が『不要不急の往来自粛』を要請した理由は「関西圏の “共倒れ” を回避するため」と推測できます。

 近畿で「新型コロナウイルスの患者数」が「第2種感染症指定医療機関の病床数」を上回っているのは大阪と兵庫の2府県です。

 これら2府県から新型コロナウイルスが広がる可能性が大きい現状ですから、大阪府と兵庫県を対象に「他府県への不要不急な往来を自粛するように」との要望を出すのは妥当なことです。

 しかし、兵庫県(の井戸知事)は「大阪はいつも過剰反応」と冷笑する有様です。「感染者が爆発的増大が起きる兆候ではない」と主張するなら、その根拠になり得るデータを示す必要があります。

 「感染の急激な増加が始まっていると考えられる数値が出ている」との報告を受けたのであれば、首長である知事が問われるのは「『対策を採る』か『様子を見るか』のどちらを選択するか」です。

 “大阪より人口の少ない兵庫” は大阪とほぼ同数の新型コロナウイルスの患者数を抱えている現状にもう少し危機感を持つ必要があります。大阪府が過剰反応しているのではなく、兵庫県があまりに無頓着すぎると言わざるを得ないのではないでしょうか。