オーストリア大統領選は郵送による期日前投票の結果次第 しかも、国営放送が左派候補に肩入れしたスキャンダル付き

 オーストリアの大統領選挙は “極右政党” とメディアから呼ばれる自由党の候補と与党左派政党が支援する候補の決選投票が行われるも大接戦になっているとイギリスBBCが報じています。

 即日開票分は 50:50 で差が生じず、勝敗の行方は期日前投票が行われた郵送分に委ねられると見られています。ただ、オーストリアの国営放送が情報操作を行ったスキャンダルが明るみに出ているため、“いざこざ” が続くことになるでしょう。

 

 問題は5月19日にオーストリアの国営放送に当たるオーストリア放送協会(ORF)が放送した大統領選挙のテレビ討論会で起こります。

  • アレクサンダー・ヴァン・デル・ベレン候補(緑の党・前党首、与党系)
  • ノルベルト・ホーファー候補(自由党)
  • イングリッド・テュルンヘア氏(女性司会者)

 討論会では司会者が候補者に質問を投げかけ、2人の候補者がそれに回答するという形式で行われることが一般的です。

 ホスト役の司会者には “中立な立場” であることが要求されるのですが、放送された討論会ではホーファー候補を攻撃する番組構成となっていたことが発端となりました。

 

 司会者のテュルンヘア氏が噛み付いたのはホーファー候補が過去に語っていた次のようなエピソードについてでした。

 

 2014年7月30日にイスラエルを訪問したホーファー氏が “嘆きの壁” を訪れたところ、ホーファー氏のそばにいたユダヤ人女性が武器を持って寺院に入ろうし、警備員に警告され、撃たれた

 この話に対し、ORFはイスラエル特派員が「そのような銃撃事件は起きていない」との現地当局者のコメントを引き出した映像を流し、ホーファー候補の話は嘘であると示唆したのです。

 これに対し、批判されたホーファー候補は「ORFの客観報道がどういったものかが現れている」と反撃し、司会者もテーマをすぐに変えたため、疑惑だけが残る展開となりました。ところが、この話はあっけなくどちらが嘘つきだったのかが判明します。

 

 エルサレム・ポスト』が2014年7月30日に「35歳のユダヤ人女性、警告を無視したため撃たれる 軽傷で病院に搬送」という記事を報じていることがネット上で発見されたからです。

 ホーファー候補が述べた “武器を持っていた” という部分だけが事実と異なりますが、それ以外は事実であったことが示されています。

 毛布にくるまった女性が停止警告を無視してセキュリティーチェックのポイントに近づいていたのですから、警告射撃が行われる十分すぎる理由となります。

 爆発物を隠し持ち、(人が集まるチェックポイント近くで)自爆テロをされようものなら、大きな被害が発生します。警備側は手順に基づいた対応を行ったと見ることは自然なことでしょう。

 この一件で国営放送であるORF(オーストリア放送協会)の報道姿勢に大きな疑問符が付くことになったことは言うまでもないことです。

 オーストリアの最大紙『クローネ』は「赤・緑のORF船、神殿の丘で難破」と皮肉記事を書いています。また、記事の中では Google で簡単に見つけられるとも言及しており、偏向報道をすることには無理があると示唆する内容となっています。

 

 情報発信が誰にでも可能になった時代では情報を意図的に選択することは難しくなってきていると言えるでしょう。日本のメディアも、オーストリア国営放送ORFの失態を “他山の石” としなければなりません。

 ネットが一般的になったため、メディアも twitter や facebook での情報発信に力を入れるようになっています。事実誤認に基づく内容を伝えてしまった場合、それらのツール上に「誤りの指摘」とともに「証拠」も突きつけられる時代になったのです。

 特定勢力に明らかに肩入れしているにもかかわらず、中立であるという偽善的な態度を貫くには無理があることを認識しなければならなくなっていると言えるのではないでしょうか。