教員の長時間勤務は “業務改善アドバイザー” では解決できない

 教育現場での長時間勤務が問題視されていることを受け、文部大臣が対策を発表したことをNHKが報じています。

 長時間勤務は「根本的な仕事量自体が多すぎること」が原因であり、休養日を設けたり、“業務改善アドバイザー” を派遣することでは効果は生まれることは見込めないでしょう。なぜなら効果が生じる範囲が限定的だからです。

 

 松野文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、教員の長時間勤務の負担軽減につなげるため、学校の部活動について、適切な練習時間や休養日を設けるよう、全国の教育委員会などに通知したことを明らかにしました。

 (中略)

 これに関連して、松野文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で、部活動について適切な練習時間や休養日を設けるよう、6日付けで、全国の都道府県の教育委員会などに通知したことを明らかにしました。

 そのうえで、松野大臣は「業務改善に集中的に取り組む重点モデル地区を、20か所程度指定する。また、知見のある有識者などを業務改善アドバイザーとして教育委員会に派遣する」と述べ、教員の働き方の改革に取り組む考えを示しました。

 

 

部活動の顧問を引き受けることは重荷

 部活動の顧問を引き受けることは重荷です。

 唯一の例外は全国大会常連校で名前が知れ渡った教職員でしょう。この場合、該当教員のプライオリティーが「部活動>授業」と学校側が実質的に容認しているからです。

 しかし、多くの教職員は前提条件が違います。担任として40名前後の生徒を管理する責任がある上、授業以外にも生活指導など様々な責任を担う立場にあり、部活動で土日休日も拘束されると本来の業務にも支障が生じることは明らかです。

 仮に、練習時間や休養日を設けたとしても、生徒が “自主的に行っていた” 時間帯に怪我など問題が発生すれば、顧問が対応することが求められるでしょう。

 例えば、サッカー部は地元のJリーグクラブと提携するなど部活動のアウトソーシングを推進する形で教員の業務量そのものを見直すことが不可欠と言えるのではないでしょうか。

 

“業務改善アドバイザー” は仕事効率の悪い組織には有効

 “業務改善アドバイザー” は業務量が圧縮できる場合には非常に効果的です。ですが、教育現場が抱えている長時間勤務の問題に対しては限定的に留まるでしょう。

 『授業(テスト含)』『クラブ活動』『生活指導』『教育研修』など教員の業務は多岐に渡っています。

 負担度の平均が90という状況で、一部の教員は『クラブ活動』で120になっているというケースなら、“業務改善アドバイザー” は効果を発揮するでしょう。また、『生活指導』で110になっている場合でも同様です。

 しかし、負担度の全体平均が115である状況では “業務改善アドバイザー” を入れても、平均を長時間勤務にならない100に下げることは現実的な解決策ではないのです。

 「特定の共通点がある教員」や「特定の学校」だけが抱えているなら、“業務改善アドバイザー” を活用することが最良の判断です。ただ、教育現場全体が長時間勤務に陥っているのですから、「現場に求められる人材を増やす」か「現場に求める業務を削減するか」のどちらかが必須なのです。

 

 文部科学省が「教員の長時間勤務問題」に対する取り組みを開始させたことは評価されるべきことです。次は、「問題に対して適切な対応策が採られているか」が評価される項目となります。

 「教職員は高尚な子守である」という保護者側の過度な期待から『教職員の生活』を守ることは質の高い教育を提供するためには不可欠なことです。「長時間勤務勤務に加え、モンスターペアレンツから守られない」という現状では教員の質が落ちて当然です。

 生徒40人前後の担任を受け持つことはマネジメントを行うことと同じです。しかも、ステークホルダーが口を出し、信賞必罰が行使できない現場であることを踏まえた上で対処が求められるという難しい現場なのです。

 学校が担う業務にプライオリティー(優先順位)を付け、明確化しない限りは教員が長時間勤務に悩まされ続ける現状は好転しないと言えるのではないでしょうか。