オランダ議会選挙:与党が第1党に留まるも、連立政権の発足に不安を残す

 オランダで行われた議会選挙は “極右” とマスコミから報じられている『自由党』がどれだけ議席数を伸ばすかが焦点となっていました。

 NHK によりますと、与党・『自由民主国民党』が第1党の座に留まることが確定したとのことです。ただ、連立政権のパートナーであった『労働党』が議席数を激減させており、連立交渉の行方に注目が集まります。

 オランダ放送協会が報じた政党別獲得議席数は以下のとおりです。

 

表1:オランダ議会の議席配分(定数:150)
政党名2012年2017年

自由民主国民党
(中道右派)
40 (41) 33
労働党
(中道左派)
35 (38) 9



社会党
(左派)
15 (15) 14
キリスト教民主同盟
(中道右派)
13 (13) 19
自由党
(右派)
12 (15) 20
民主66
(中道左派)
12 (12) 19
フルンリンクス
(緑の政治)
4 (4) 14

 

 ※ カッコ内の数字は前回選挙による議席配分数で、カッコ外の数字は2017年の選挙前の議席数です。

 議席数を減らしたものの、『自由民主国民党』が第1党の座を死守しました。そのため、「自由民主国民党が過半数を確保するため、どの政党と連立を組むのか」が次の焦点と言えるでしょう。

 

1:左派政党は政権を取った際に現実的な政策で結果を出せなければ凋落する

 2017年のオランダ議会選挙で最も議席を減らしたのは連立政権のパートナーであった『労働党』でした。

 中道左派を掲げる政党でありながら、政権が移民抑制へと舵を切ることを止められなかったことで支持者離れが起きたのでしょう。その結果として、『民主66』や『フルンリンクス』という左派系政党が支持を伸ばすこととなりました。

 これはリベラル政党の宿命で、政権入りした際に “現実的な政策” で公約を果たすことができなければ支持者離れが起きるのです。

 「多文化共生」を掲げたところで、自国民が一方的に我慢を強いられることになれば不満が起きることになります。有権者の不満を “現実的な政策” を使い解決することができなければ、口先だけと見られ、有権者が別の政党に票を入れることになるのです。

 

2:オランダ全体としては右傾化している

 日本のマスコミは「右傾化」という言葉を良く持ち出しますが、オランダでの総選挙の結果こそ、その言葉が合致すると言えるでしょう。

  • 右派:+7
    • 自由民主国民党:-7
    • キリスト教民主同盟:+6
    • 自由党:+8
  • 左派:-10
    • 労働党:-26
    • 社会党:-1
    • 民主66:+7
    • フルンリンクス:+10

 主要左派政党が議席総数を減らしていることは問題として捉えるべきでしょう。野党の右派政党が伸ばした議席数で与党『自由民主国民党』が減らした分をカバーしているからです。

 「右傾化は排外主義を招く危険な兆候」と声高に叫ぶ日本のマスコミはオランダの選挙結果にも同様に苦言を呈する責務があります。「極右の台頭は抑えられた」と好意的に報じるだけでは不十分なのです。

 

3:連立のパートナーとなるのはどの政党なのか

 比例選挙で議席数を配分するオランダのような国では単独政党が政権を握ることは稀なケースです。政党別の支持率は 40% 台が限界であることを考えると、連立を組むことが不可欠と言えるでしょう。

 定数150の議会で過半数を確保するためには76議席を固める必要があります。ただ、『自由民主国民党』が今回の選挙で獲得した33議席では到底足りず、他の政党と連立交渉をしなければ政権発足とはならないのです。

 ここで、20議席を持つ『自由党』は厄介な存在です。

 『キリスト教民主同盟』に加え、『自由党』か『民主66』のどちらかを連立政権入りさせた上で、さらに少数の議席を持つ政党に声をかけることになると考えられるため、政権がスタートするまでには時間を要することになると思われます。

 

 トルコ閣僚のオランダ入国を拒否したことが外交問題に発展したこともあり、この問題にどのように対応するのかが大きな鍵を握っています。オランダの新政権がどのように “落とし前” を付けるのかにも注目です。