定期便に強みを持つ貨物列車が再評価されている風潮は歓迎すべきだ

 NHK によりますと、JR 貨物の鉄道事業が24年ぶりに黒字転換する見込みであるとのことです。

 全国の鉄道網を活用し、様々な貨物を運搬するビジネスが採算の取れる状態になったことは歓迎すべきことと言えるでしょう。今後は長距離トラックなどとの住み分けが鍵となりそうです。

 

 JR貨物の鉄道事業は、平成2年の規制緩和で、トラックによる物流事業者の参入が相次ぎ、顧客を奪われたことなどから収益が悪化し、さかのぼれる範囲だけでも、平成5年度以降赤字が続いていました。

 しかし、長時間労働の見直しなどによって、長距離トラックの運転手の人手不足が深刻化し、輸送コストが上昇する中、企業の間で、貨物輸送の一部をトラックから鉄道に切り替える動きが広がっています。

 さらにJR貨物では、新規の採用を抑制して人件費の削減を進めてきたこともあって、鉄道事業が黒字に転換する見通しになったということです。

 

 物流事業ですが、トラックを使った輸送ビジネスの規制が緩和され、参入業者が増えたことで顧客の奪い合いが勃発したことが JR 貨物が赤字を計上し続けた理由と言えるでしょう。

 市場での競争はどの業界でも起きることです。ただ、価格競争によってトラックによる物流事業そのものが疲弊し、ドライバーの労働条件が悪化したことが問題視されたこともあり、鉄道貨物が再注目されたことが本質だと思われます。

 

 貨物列車の強みは20両を超える車両編成で運行できることでしょう。運転手の人件費は下げることが可能になる訳ですから、この強みをどう活かせるかがビジネスを安定させるための鍵になります。

 「幹線で結ばれている都市間の輸送」や「大量輸送」、「定期輸送」といった条件に該当するニーズに対しては貨物列車が最もコストパフォーマンスが高いはずです。

 逆に、「定期輸送から外れた都市への輸送」や「臨時輸送」という細かいニーズについては “小回りが効く” トラック輸送が強みを最も発揮すると言えるでしょう。

 自動運転機能で先行するトラックを追跡する実証実験を行うことがニュースとなっていましたが、これは貨物列車とロジックは同じです。そのため、現行の輸送方法を自由に組み合わせることができる土台作りをするだけでも一定の効果は得られることが予想されます。

 

 JR 貨物に対して懸念を示すのであれば、「新卒採用を抑制することで人件費を削減する」という手法を採っている点でしょう。

 これは “世代の空白” を生み出すリスクがあり、社員の世代バランスが悪くなります。転職が盛んではない日本の労働市場で空白が生まれるリスクは高いものと思われます。

 郊外に設置された『貨物ターミナル駅』への利便性を高め、物流アクセスをスムーズにすることで「貨物の取扱量をさらに増やせるだけのポテンシャルはある」と言えるはずです。輸送ニーズを上手く掴むことができるのかに注目です。