「現在利用中であれば、老朽化・衛生面の課題は問題なし」と主張する東京都の小池知事

 豊洲市場の移転問題について、現在利用されている築地市場が抱える問題を都議会の予算委員会で指摘された小池都知事は「豊洲市場は安全だが安心できない」と述べたと NHK が伝えています。

 「安心できないこと」を理由に認めて良いのなら、データに基づく議論が成り立たなくなります。これは “気に入らないこと” を言いがかりで封じ込めることが可能となるだけに非常に問題のある主要と言えるでしょう。

 

 小池知事は、施設の老朽化や衛生面の課題は認識しており、適切に対応するとしたうえで「土壌はコンクリートで覆われていて法令上の安全性は満たしている。課題はあるが、市場は今も使われていることから安全安心だと宣言できる」と述べました。

 一方、同じく土壌がコンクリートで覆われた豊洲市場については法令上の安全性は確保されているとしながらも、消費者の信頼が得られていないとして安心だとは言えないとする認識を示しました。そのうえで、専門家による検証などを踏まえて総合的に判断するとの考えを繰り返し強調しました。

 

 築地市場で指摘されている問題点には以下のようなものがあります。

  1. 土壌汚染
  2. 老朽化し、耐震基準を満たしていない建物がある
  3. 建物にアスベストが利用されている
  4. 屋外開放型でネズミや鳥類の侵入を防げない

 これらの諸問題が築地市場が運営されていることを根拠に「問題ない」と判断される一方で、豊洲市場は「問題あり」と結論づけられるのは無理があることと言えるでしょう。

 

 消費者の不安を煽ったのは小池都知事本人です。そのことを棚に上げ、「消費者から安心を勝ち取れていない」と主張することは単なるマッチポンプに過ぎません。

 小池都知事ら豊洲市場への移転を妨害している面々は「自宅で作ったパンは安心だが、工場で作られたパンは不安」という “情弱” のロジックを振りかざし、不安を煽っているのです。

 工場製のパンが腐りにくいのは単に衛生管理が完璧だからです。

 もし、衛生面を無視して問題ないなら、医療ドラマで外科医が手術前に丁寧に手を洗い、腕を上げたままで手術室に入るようなシーンは描かれることはないでしょう。病院には『無菌室』があるほどなのですから、衛生面は重要視されなければならない項目なのです。

 

 専門家から「安全である」との科学的根拠に基づく結論が提示されたにもかかわらず、「不安だ」という心境を根拠にできるのであれば、様々な分野に悪用できることでしょう。

 「在日米軍の関係者が犯罪を起こすかと思うと不安だ」、「在日韓国朝鮮人が混乱に乗じて暴動を起こす可能性があることを考えると不安だ」、「フクシマが未だに放射能で汚染されているかと思うと不安だ」などと誹謗・中傷に直結する主張に “お墨付き” を与えることになるのです。

 個人がどのような見解を持つのは自由ですが、公共の福祉に反する内容を主張したり、要求することを自重しなければなりません。

 ですが、小池都知事は地方自治体の首長という立場でありながら、科学的根拠ではなく自らのイデオロギーを優先させているのです。その結果、風評被害を撒き散らす元凶となっているのですから、態度そのものを改める必要があると言えるでしょう。

 

 小池都知事の主張内容は「豊洲市場に対する風評は問題ないが、築地市場への風評は謹むべき」としか聞こえません。

 これをダブルスタンダードと言わずに何と表現すべきなのでしょうか。「与党・自民党には如何なるバッシングも問題ないが、野党の問題行為を批判する報道は慎むべき」との奇妙な価値観を持つマスコミと “同じ穴のムジナ” だと言えるでしょう。

 自分たちの描くシナリオを補強する都合の良い根拠だけをつまみ食いし、世論を誘導しようとするスタンスの請求書を回されるのは有権者であることを覚えておいて損はありません。

 小池都知事のダブルスタンダードに疑問を呈することができないマスコミが報じる豊洲移転問題には偏りがかなりあると見ておく必要があると言えるはずです。