トランプ大統領が高速鉄道網に言及するのであれば、私鉄のビジネスモデルも売り込むべきだ

 安倍首相が日米首脳会談のため訪米を行っていますが、それに先立つ形でトランプ大統領がインフラ整備を促進する狙いがあるとの発言を行ったとNHKが伝えています。

 その中で新幹線など高速鉄道に言及したこともあり、建設に後押しをするのであれば、日本にとっても追い風になることでしょう。

 

 アメリカのトランプ大統領は9日、ホワイトハウスで航空会社の幹部らと会合を開きました。この中で、トランプ大統領は、「日本や中国は至る所で高速鉄道が走っているが、アメリカにはない」と述べて、日本の新幹線をはじめとした交通網を評価したうえで、アメリカの交通インフラが時代遅れになっているという認識を示しました。

 そのうえでトランプ大統領は、アメリカ企業がインフラ整備を進めることができるよう税負担を軽くする必要があるとして、「数週間後に驚くべき税制改革について明らかにする」と述べ、法人税の減税など税制改革の具体的な内容を近く公表する考えを示しました。

 

 インフラ整備ですが、メンテナンスを行うことで長く利用するが可能になります。しかし、あくまでも “延命策” であり、根本的な老朽化には対応できないという問題があります。

 トランプ大統領の考えは「アメリカ国内の老朽化したインフラ設備の再整備を行うことで雇用ニーズを起こし、インフラ事業に携わる企業に減税という形で恩恵を与えること」と言えるでしょう。

 特に、道路網や鉄道網の再整備は長期間に渡るプロジェクトが多く、また従事する人員も多く必要とするため、雇用政策として十分に考えられるものです。

 

 また、日本企業にとってはトランプ大統領が高速鉄道に言及したことは追い風になる可能性があります。

 高速鉄道は航空機と比較すると、「500キロ圏内での大量輸送」という点においてアドバンテージを持っています。このニーズがあると考えられる地域で実績を積むことの後押しが行われるかが注目点と言えるでしょう。

画像:テキサス州の主要都市

 現時点でニーズが高く、建設の現実性が帯びていると言われているのがテキサス州です。

 ダラス、ヒューストン、サン・アントニオと主要都市が 200〜400 キロの距離にあり、高速鉄道を整備することによる利益を見込むことができるからです。現時点では「ダラス〜ヒューストン」での建設計画が進んでおり、ビジネスが軌道に乗ることで3都市をつなぐ形の高速鉄道網になることも十分に考えらえるでしょう。

 

 高速鉄道を売り込むのであれば、私鉄のビジネスモデルも売り込むべきです。

 海外では「鉄道ビジネス=赤字」という印象が強く、“私鉄” というビジネスモデルがほとんど存在しません。都市部で渋滞が問題になり、排気ガスによる環境問題への解決策の1つとして「私鉄のビジネスモデル」も売り込む価値はあります。

 例えば、年中渋滞しているロサンゼルスに私鉄や地下鉄という形で鉄道網を整備することで、通勤通学で車を利用する人を減らすことに貢献することが期待できるからです。

 ただ、「鉄道事業者が列車運行のために所有する土地は所得税の対象外とする」という形で自治体がサポートする必要もあるため、日本政府など行政側にも鉄道事業者が海外進出する際に現地自治体との橋渡しを行うなど支援に乗り出すべきと言えるでしょう。

 

 鉄道ビジネスは建設だけではなく、運行ノウハウや保守・点検ノウハウなど長期的に収益を上げることが期待できるビジネスです。鉄道網が日本国内で飽和状態になっているのですから、海外進出を現実的に考えなれない時期に来ているのではないでしょうか。