“ムラの習慣” が根強く残る地方ほど、地域創成など不可能であることを自覚すべき

 東京一極化など都市部への人口集中を緩和する目的で「地域創成」の掛け声がかかり、地方へ人の流れを作り出そうとする動きがあります。

 しかし、地元住民が持つ価値観がそれを阻害していることを自覚しなければなりません。沖縄・北大東村に派遣された常勤医師を脅迫するような事件がそれを端的に示していると言えるでしょう。

 

 那覇署によると事件は2月7日夜に発生。男が酒気帯び状態で運転する車が対向車線に進入し、医師の乗る車と正面衝突した。男は「通報したらどうなるか分かるよな」などと医師を脅し、後に脅迫の疑いで逮捕された。「示談にしたかった」と供述したが、医師は事件翌日に村外へ避難し、その後に離任が決定した。

 

 地方にいる人々が考えるべき点は「なぜ、若者が地方を離れるのか」ということでしょう。「働き口がない」というのであれば、「働き口が存在ない理由は何か」と問題を深堀りしなければなりません。

 理由の1つは “ムラの掟” だと言えるはずです。

 トラブルが生じた際に『法律』より、『ムラの掟』で裁かれるのであれば、その地域で生活しようと考える人は減少する一方になります。これは掟を作る権限を持っている既存住民には魅力的な街に映りますが、権限のない若い世代や外部出身者にとっては魅力度ゼロの街となるからです。

 

 沖縄・北大東島で起きた事件は「“ムラの上位ヒエラルキーに属する男” が “最下層に当たる外部からやって来た女性医師” を脅迫し、自身の犯罪行為を揉み消そうとしたこと」と言うことができます。

 ムラでのみ通用した論理を根拠に傍若無人な振る舞いをするのですから、人口減少は当然の結果です。

 要するに、“ムラの名士” のような人々が求めるのは『自分たちに従順な丁稚』なのです。「自分たちの手となり、足となって働く奉公人」を求めていることを見透かされており、実態を知る人に距離を取られる結果となっているのです。

 同じことは漁業や農業でも言えるでしょう。漁協や農協が人材不足と叫んだところで、「漁業権や農地を譲渡する考えはなく、下働きをする人材を求めている」と見破られているのですから、騙される人が少ないことは当たり前なのです。

 

 都市部で生活すれば、地元の祭りに強制的に駆り出されることはありませんし、地域の見回りなどやりたくないことを強いられることはありません。

 「自分がやりたいこと」に費やしたい時間や労力を「地域のイベント』に提供することを強要されるのです。この姿勢が現代の価値観に合っているとは到底言えないでしょう。

 “都市部は人のつながりが軽薄” だと言われますが、しがらみがないため、「自分がやりたいこと」をやる時間・労力を捻出できれば実行に移すことに対するハードルは高くありません。この都市部が持つ『強み』を上回る価値を提供できなければ、地方の魅力は皆無に近いことを自覚する必要があります。

 

 地方創成を成功させるには “ムラの掟” を徹底的に排除しなければなりません。もし、村八分に該当するような行為をしようものなら、半永久的にネガティブな情報としてネット上でさらされ続けることとなるでしょう。

 「自分たちの価値観を貫いた結果が現時点での人口なのだ」と現実を受け入れることができなければ、衰退に歯止めをかけることはできないということを学ぶ必要があると言えるのではないでしょうか。