一部の熱狂によりマクロン政権の安定基盤が誕生するも、先行きには不安を残す

 「マクロン大統領の支持基盤ができるか」が注目されたフランス議会下院の総選挙が行われ、マクロン大統領の『共和国前進』が過半数を獲得したと NHK が伝えています。

 しかし、決選投票の投票率は 42% と前回(55.41%)と前々回(59.98%)を大きく下回っています。この点から「フランスはすでに大きく分断されている」ということができるでしょう。

 

 フランスの議会下院の選挙で、マクロン大統領の新党「共和国前進」が単独で過半数の議席を確保し、フィリップ首相は「国民は怒りでなく希望を、内向きな志向ではなく信頼を選んだ」と述べ、国民の融和を進め政治の刷新に取り組む考えを示しました。

 (中略)

 一方で、決選投票の投票率は過去最低の42%余りにとどまり、野党からは「政権が国民の信任を得たとはいえない」といった批判も相次いでおり、マクロン政権は今後、具体的な成果を上げて国民の信頼を勝ち取ることが課題となりそうです。

 

 フランスの議会下院は小選挙区・決選投票制という形が採用されています。そのため、政党支持率が高くない政党でも過半数を大きく超える議席を獲得することが可能になります。

 表面上は安定基盤を手にすることできます。しかし、“安定した支持基盤” とは異なる訳であり、政策が有権者に支持されなかった場合のマイナス面は非常に大きいと言えるでしょう。

 

 マクロン政権にとっても不安要素は「棄権した有権者の数が多すぎること」です。経済政策でフランスの有権者を満足させることができなければ、すぐに政権運営に行き詰まることになると思われます。

 左派・社会党のオランド政権で経済運営に失敗しており、マクロン政権に残された時間はあまりありません。その上、経済成長の “起爆剤” となる要素も見当たらない状況です。

 しかし、移民・難民の受け入れに前向きであることを示すなど支出が増加する政策に踏み切り、有権者の反感を買うリスクの方が高いと言えるでしょう。

 「移民・難民との融和」という反発を招く政策を進めるのであれば、「経済成長による恩恵」を有権者に与えることで “不満の種” が育つことを防がなければなりません。それができなければ、フランスはさらに混迷することが予想されます。

 

 キレイゴトを述べるだけで「雇用の創出」ができなければ、批判の声が大きくなることは容易に想像できます。「重税+バラマキ」で失敗したオランド政権の反省を活かし、政策に反映することがリベラル派が復権する鍵となるでしょう。

 そのためには “自国の有権者” が満足する政策でなければならないのです。「世界全体で見れば、恵まれている」との主張は詭弁でしかありません。

 自国の政治家・政党が自国の有権者の生活より、移民・難民という外国人の生活の方を心配し、「より多くの予算を費やすべきだ」と主張することは社会全体の生活水準を押し下げていることと同じなのです。外国人が政治家として国政に関与することはできないのですから、明らかなご都合主義と言えるでしょう。

 

 欺瞞的な政策でボロを出さずに、マスコミが期待する成果を示すことができるのか。マクロン政権がどのような舵取りを見せるのかに注目と言えるのではないでしょうか。