Jリーグの秋春制への移行は否決、“夏休みの集客狙い” が優先される形に

 現在のJリーグは春秋制で行われているのですが、代表チームの強化を主目的にヨーロッパの日程と同じ秋春制への移行が検討されています。

 12月12日に行われたJリーグの定例理事会で「秋春制への移行」が審議されたのですが、「移行は行わない」との結論が出たと NHK が報じています。この決定はあまり良い動きとは言えないでしょう。

 

 Jリーグでは、日本代表の強化を目的に、ヨーロッパのリーグ戦に合わせる形で現在の春から秋にかけての開催時期を、夏から春にかけてのシーズンに移行できないか、およそ1年がかりで議論を重ねてきました。

 その結果、12日の理事会で、シーズンを移行しないことが賛成多数で可決されたということです。移行を見送った理由としては、現在のシーズンのほうが試合間隔にゆとりが生まれるなどの理由が挙げられたということです。

 

 「試合日程にゆとりが生まれる」と NHK は伝えていますが、豪雪地帯に本拠地を置くJリーグ加盟クラブに配慮した結果と言えるでしょう。

 豪雪地帯では冬場に屋外での試合を行うことは絶望的です。春秋制であれば、この問題に直面することはありません。しかし、その代償として、高温多湿の夏場に試合を余儀なくされるため “消耗戦” が起きることになるのです。

 

1:W杯のために2ヶ月の中断期間を設けるという現実

 春秋制を採用しているJリーグですが、W杯は6月に行われることが基本です。そのため、準備期間などを含めると選手が2ヶ月ほど代表チームに拘束されることになるのです。

 代表選手を多く抱えるチームほど、チーム力はダウンします。この状態でリーグ戦を開催すれば、魅力度が低下することを招いてしまいます。これを避けるために「中断」という措置が採られているのです。

 「試合日程にゆとりが生まれる」との主張にあまり説得力があるとは言えないでしょう。

 

2:豪雪地帯に本拠地を置くなら、発想を転換する必要がある

 「冬場のホーム主催試合が積雪で困難になる」という主張が秋春制への移行に反対する大きな要因の1つでしょう。

 「Jリーグチームを持ちたい」と考える(豪雪地帯の)地方自治体は「秋春制には断固反対」の立場を採ることが予想されます。しかし、秋春制になれば、Jリーグチームが本拠地を置かない豪雪地帯の地方自治体が恩恵を受けることが可能になることを見落としているのではないでしょうか。

 秋春制であれば、夏場のプレシーズンキャンプを “冬が厳しい北日本の地域” が招致できるのです。この恩恵は大きいと言えるでしょう。

 現在の春秋制ではJリーグチームのキャンプ地はプロ野球と同じ九州・沖縄がメインです。それを東北・北海道など日本海側の都市にすることができるのです。

 地方中核都市だけに属するJリーグチームを持つより、人気チームのプレシーズンキャンプを誘致し、夏休みの1ヶ月ほどを過ごしてもらう方が地域経済への影響度を大きくできる可能性はあるはずです。ファンとの交流イベントを上手く立ち上げれば、相乗効果が得られる訳ですから、方向性を見直す時期に来ていると言えるでしょう。

 

 代表チームでの飛躍が期待される有望な選手は秋春制のヨーロッパに移籍することがほとんどでJリーグ勢は格下という扱いになっています。トップレベルの選手を春秋制のJリーグに呼び寄せられるほどの資金力もない訳ですから、ジリ貧になることは時間の問題です。

 秋春制にして、移籍の流動性を確保した上で抜本的な改革に乗り出す必要があると言えるのではないでしょうか。