南シナ海の領有権問題にロシアも参戦?ベトナムと2020年までの軍事協力工程表で合意と発表
ロシアのタス通信によりますと、「ロシアとベトナムの両国は4月4日に2018年から2020年までの軍事協力ロードマップに署名した」とのことです。
この合意は「ロシアとベトナムの軍事協力が親密になる」ことを意味しており、地域情勢に少なからず影響を及ぼすことになるでしょう。なぜなら、南シナ海の領有権問題に少なからず影響が生じるからです。
MOSCOW, April 4. /TASS/. A military cooperation roadmap between Russia and Vietnam covering the period of 2018-2020 has been signed Wednesday in Moscow during a meeting between Russian Defense Minister Sergei Shoigu and his Vietnamese counterpart General Ngo Xuan Lich on the sidelines of the Seventh Moscow Conference on International Security.
署名を行ったのはショイグ国防大臣(ロシア)とゴ・スアン・リック国防大臣(ベトナム)です。
ベトナムとしては「南シナ海での中国の振る舞い」に対応する必要性があります。対するロシアも「太平洋艦隊の補給基地」となる友好国が求めていた訳ですから、両国の利害が一致したことで協力関係で合意に達したと言えるでしょう。
南シナ海の人工島を軍事要塞化する中国
中国は南シナ海・南沙諸島に設けた人工島に電波妨害装置を取り付け、軍事化の動きを活発にしていると WSJ が報じています。
露骨なほどに “力による現状変更” を行っているのです。国際機関に訴えたところで、常任理事国の立場を持つ中国は『拒否権』を行使することでしょう。
「国際社会の足並みがそろう」という事態にはならない訳ですから、南シナ海の周辺国は自力で対処するか、利害の一致する国と歩調を合わせて立ち向かうかのどちらかでしか国益を守れない状況です。
ロシアとも距離を縮めようとするベトナムは「中国に対し、利害の一致する国と歩調を合わせて立ち向かう」との選択をしたと言えるでしょう。
日本とベトナムは『自由で開かれたインド太平洋戦略』で一致済み
ロシアと2020年までの軍事協力工程で一致したベトナムですが、日本とは『自由で開かれたインド太平洋戦略』で以前から一致しています。
ゴ・スアン・リック国防大臣は4月9日に来日し、小野寺大臣との防衛相会談を実施しています。また、翌10日には安倍首相を表敬訪問しており、日本側が期待する形で「足並みがそろっている」と言えるでしょう。
ただ、日本の自衛隊だけに依存するにはリスクがあることも現実です。
“軍隊” という位置づけで諸外国から見られている自衛隊ですが、侵略を防ぐための攻撃能力による抑止力に不安があるからです。自衛隊は在日アメリカ軍と共同作戦を展開することが可能である一方、ベトナム軍はそうは行きません。
そのため、ベトナム政府は「自国軍の能力不足をカバーしてくれる国」を確保するための動きをする必要があったのです。
「ロシアが中国の肩を持ち、ベトナムを裏切る可能性」も捨てきれない
ベトナムはロシアと共同演習を行っていますし、ベトナム人兵士を受け入れて訓練するロシア人指揮官への感謝をゴ・スアン・リック国防大臣は述べています。
この点では「ベトナムとロシアの関係は良好」と言えますが、ロシアは中国とも海上での合同演習を行っているのです。つまり、ロシアは(現状で)中国・ベトナムのどちらとも組むことができる立ち位置なのです。
「ロシアは自分たちの味方」と決めつけた対応をベトナムがしてしまうと、土壇場で大失態をしてしまうリスクがあります。そうならないための予防策を講じ、命綱を用意しておくことは安全保障において必要不可欠なことです。
南シナ海は中東・オーストラリア方面からのエネルギー資源を日本に運ぶ上での最重要航路です。その中でベトナムとの関係性が占める割合は大きいものがあるだけに「政府が目指す安全保障の方向性」は国会で議論すべきテーマと言えるのではないでしょうか。