過去10年で中国とロシアが軍事費を飛躍的に増大させている現実を日本のマスコミは直視し、世間に周知しなければならない

 日経新聞によりますと、2008年からの10年間で世界の軍事費が約 10% 増加したことが明らかになったとのことです。

画像:主要国の軍事費(日経新聞より)

 その数値を引き上げる要因は中国(+110%)とロシア(+36%)です。どちらも “日本の周辺国” であり、日本も防衛費を増額することは避けられない状況になっていると言えるでしょう。

 

 ストックホルム国際平和研究所の推計では世界の軍事費の支出額は2017年に1兆7390億ドルと08年比9.8%増えた。冷戦終結後は減少していたが21世紀に冷戦期を上回る規模に戻り、近年は伸び続けている。

 (中略)

 中国の軍備増強は質・量の両面で際立つ。国産空母を建造し、次世代戦闘機やミサイルを配備する。南シナ海では軍事拠点化が顕著だ。

 触発されるように周辺国も動く。東南アジアの軍事費の合計は10年間で4割増。カンボジアは4倍、バングラデシュやインドネシアも2倍を超えて急激に伸ばした。

 

「中国の南シナ海侵出」が軍事費増加に呼び水

 10年前の水準から軍事費を倍増させた中国は「南シナ海の軍事拠点化」など軍備の増強が顕著に現れています。

 侵略される側に位置する東南アジア諸国は “中国の膨張” を抑え、自国の権益を守るために軍事費を増加。中国の姿勢が呼び水となり、結果的に数値を引き上げる要因になってしまいました。

 また、ロシアはプーチン政権が「強いロシア」を訴えたことに加え、兵器の近代化を図ったことで軍事費は大きく伸びました。この姿勢を EU は懸念しており、NATO の軍事費増加という形で示されることになるでしょう。

 軍事費が増加する引き金を引いたのが「日本の周辺国」であるとの現実は無視できるものではありません。左派界隈の「平和を訴える国が侵略されることなど起こり得ない」という主張は無防備を強いるものであり、安全保障には寄与しないものなのです。

 

中国やロシアを名指しして、「軍事費より人道支援に予算を回すべき」と主張しなければ意味がない

 リベラル派は「軍事費の増大」を批判し、「人道支援への拡充」を要求しています。8月9日に長崎でスピーチした国連のグテーレス事務総長の発言を喝采していることでしょう。

 「核保有国は、核兵器の近代化に巨額の資金をつぎ込んでいる。2017年には1兆7千億ドル以上のお金が武器や軍隊のために使われた。これは冷戦終了後、最高の水準だ。世界中の人道援助に必要な金額のおよそ80倍にあたる」

 しかし、日経新聞が紹介した記事を確認すると、巨額の軍事費をつぎ込んでいるのは中国やロシアなのです。

 中国とロシアは常任理事国でもある訳ですから、「巨額の軍事費を投入するなら、人道支援にも積極的でなければならない」と苦言を呈さなければなりません。

 人権を平気で抑圧するような常任理事国は批判せず、民主主義が根付いた他の先進国に「人道支援用の予算増額」を要望しても聞き入れられないでしょう。「諸外国への人道支援」より「自国民への安全保障」を優先した予算編成をしなければ、自国の権益が奪われる結果を招いてしまうからです。

 

集団的自衛権を否定する野党やマスコミは「日本の防衛費で中国・ロシアの脅威に対処できる」という確固たる根拠を示せ

 日本の周辺国である中国とロシアが日本の防衛費を上回る軍事費を計上している現実をマスコミが積極的に報じていないことは問題でしょう。なぜなら、集団的自衛権に反対しているからです。

  • 日本の防衛費:454億ドル
    1. 集団的自衛権を肯定:日米同盟が機能
      → アメリカの軍事費(6100億ドル)が部分的に加算
    2. 集団的自衛権を否定:防衛費は454億ドルのまま
  • 中国の軍事費:2280億ドル
  • ロシアの軍事費:663億ドル

 ロシアは日本の1.5倍、中国は日本の5倍もの軍事費を計上しているのです。集団的自衛権を否定することは「これらの国との緊張関係は単独で対処する」と宣言していることと同じです。

 日本よりも多額の軍事費を計上していることに加えて核保有国でもある中国やロシアに対し、日本単独でどのように安全保障を確保すると言うのでしょうか。集団的自衛権の行使に反対する野党やマスコミは『具体的な計画』とともに、計画の確固たる根拠を示さなければなりません。

 

 「日本が防衛費予算を増強しなければ、平和が維持される」という考えは『中国の海洋侵出』で根拠が崩れました。“お花畑外交” を続けた結果、国家の安全保障が脅かされている現状は大きな問題と言えるでしょう。

 日本の周辺国が軍拡を進めているという現実をマスコミはシビアに報じる責務があると言えるのではないでしょうか。