文科省局長の受託収賄容疑:『子供の裏口入学』が収賄に該当するなら、『官僚自身の天下り』も収賄になるのでは?

 NHK によりますと、私立大の支援事業を巡る便宜を図った見返りに自身の子供を不正に合格させた受託収賄容疑で現職の文科省局長が東京地検特捜部に逮捕されたとのことです。

 逮捕容疑は発表されていますが、被疑者は罪状に対する認否を明らかにしていません。そのため、捜査の行方を見守る必要があると言えるでしょう。

 ただ、逮捕された文科省局長が受託収賄で有罪となった場合、「天下り」も収賄容疑で摘発が可能となります。したがって、別の意味でも注目する必要がある案件なのです。

 

 文部科学省の局長が、私立大学の支援事業をめぐって東京医科大学に便宜を図る見返りに、受験した自分の子どもを不正に合格させたとして受託収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。

 (中略)

 特捜部の調べによりますと、佐野局長は文部科学省の官房長だった去年5月、私立大学の支援事業をめぐって、東京 新宿区にある東京医科大学に便宜を図る見返りに、ことし2月、東京医科大学を受験した自分の子どもを不正に合格させたとして受託収賄の疑いが持たれています。

 特捜部からの発表だけであり、今後の展開を見守る必要があるでしょう。なぜなら、一方の主張内容しか報じられていない状況だからです。

 もし、被疑者が事実関係を争えば、受託収賄容疑で有罪となる保証はありません。厚労省・村木厚子氏のケースもあるだけに有罪前提で騒ぐことは自重する必要があると言えるでしょう。

 

金銭なしの裏口入学が収賄なら、多額の金銭まで得る天下りも収賄である

 今回の事件で注目すべきは「金銭のやりとりはない裏口入学が収賄に該当するのか」という点です。

  • 東京医科大:
    • 文科省に支援事業で便宜を図ってもらう
  • 文科省:
    • 便宜を図る見返りに、子供を裏口入学させる → アウト
    • 便宜を図る見返りに、官僚自身が天下りをする → セーフ?

 「金銭面でやりとりのない裏口入学」が収賄に相当するなら、「高給が用意される(=金銭上のやりとりがある)天下り」は問答無用で収賄となります。

 文科省の管轄する案件で、大学側が便宜を図ってもらった “お礼” の方法が異なっているに過ぎないのです。今回の裏口入学が「収賄で有罪」となるなら、天下りに関しても「収賄で有罪」として対処すべきと言えるでしょう。

 

東京地検特捜部は名誉を挽回しなければならない事情がある

 東京地検特捜部ですが、リニア談合事件で捜査手法などに批判が生じ、信頼を失っている状況です。

 工事の発注者である『JR東海』がゼネコンが談合したことで損害を被ったのであれば、業務妨害が捜査の根拠となります。しかし、この観点での説明はなく、「談合で公平な競争が阻害された」と独禁法違反で起訴に踏み切ったのです。

 「工事を受注できる能力を持っているかもしれない企業(および企業連合)の入札が妨害された可能性を否定できない」との状態だったのですから、ポイント稼ぎに見られる上、世間からの賛同は得られないのは当然のことと言えるでしょう。

 また、大阪地検特捜部は「森友疑惑」の捜査を巡る “失態” で「特捜部体制の見直し」が要求されかねない事態を引き起こしています。そのため、起死回生を理由に東京地検特捜部が動いた可能性も否定できません。

 

 起訴される段階になれば、事件の全容が見えてくることでしょう。ただ、文科省は前川喜平氏が事務次官を務めていた時期に「天下り問題」を起こしており、組織として問題を抱えていることは明らかです。

 そのため、組織解体を視野に入れた根本的な対策を講じることは不可避と言えるはずです。また、不透明な配分が問題視されている科研費についても、メスを入れる必要があると言えるのではないでしょうか。