イギリスのボリス・ジョンソン新首相、「国に活力を与えて10月31日までに EU から離脱する」と意気込みを述べる
イギリスの与党・保守党の党首選が行われ、ボリス・ジョンソン前外相が勝利したと NHK が伝えています。
イギリスは議院内閣制であり、与党のトップが首相を兼任することになります。ジョンソン新首相は「EU 離脱」に強い意気込みを示しており、停滞しているブリグジットが結末に向けて動き出すことは間違いないと言えるでしょう。
イギリスではEUからの離脱をめぐる混乱の責任をとってメイ首相が辞任を表明し、先月、与党・保守党の党首を退いたことから後任を選ぶ党首選挙が行われ、およそ14万人の党員が郵送による投票を行いました。
投票の結果が23日、ロンドンで発表され、ジェレミー・ハント氏が4万6656票、ボリス・ジョンソン氏が9万2153票でジョンソン氏がハント氏に大差をつけて新たな党首に選ばれました。
(中略)
離脱の進め方をめぐってはEUとの合意がまとまらなくても10月末の期限には離脱することも辞さない強硬な姿勢を打ち出しています。
党首選のいずれの投票でもトップに立ったジョンソン前外相が勝利
メイ首相が辞意を表明したことで行われたイギリスの与党・保守党の党首選挙には複数の政治家が出馬しました。
議員投票で候補者の絞り込みを行い、残った2名が党員投票による決選投票で新代表が決まる方式だったのですが、ジョンソン前外相はいずれの投票でのトップでした。そのため、順当な選出と言えるでしょう。
ジョンソン前外相は「EU 離脱推進派」であり、決選投票で争ったハント現外相は「EU 離脱懐疑派」でした。また、ハント現外相の妻が中国人という事実もネガティブに作用したことを否定できません。
したがって、イギリスは今後の外交政策において「メイ首相時よりも強硬な姿勢」を打ち出すことを念頭に置いておく必要があります。
ハード・ブレグジットが再び現実味を帯びる状況
今後の展開ですが、ジョンソン新首相は「EU に離脱条件の再交渉」を要求するでしょう。しかし、EU が離脱条件の再交渉に応じる可能性は低く、門前払いになる可能性が大です。
また、メイ首相時代から「懸念事項」として指摘されていた「アイルランドと北アイルランドの陸続きの国境管理問題」に対する方針も不透明なままです。
イギリスの与党・保守党は北アイルランドの地域政党・民主統一党との閣外協力で議会過半数を維持しています。民主統一党の方針は『帰属派(= イギリス連邦維持派)』ですから、「EU 離脱後も自由に行き来が可能」では党の主義に反することになります。
『ソフト・ブレグジット』に向けて動くのであれば、北アイルランドの国境問題は避けて通れません。この問題に対する有効な打開策を保持していなければ、『ハード・ブレグジット』が起きる可能性は十分にあると言えるでしょう。
諸外国からの「秩序ある離脱を期待」はアリバイ作りに過ぎない
ジョンソン新首相の就任に対し、各国の首脳は祝福のメッセージを送っています。安倍首相は「秩序ある離脱を期待」に触れたことが報じられていますが、これは “アリバイ作り” の域を出ないでしょう。
「どの離脱方法を選択するか」はイギリス国民が決めることであり、内政干渉に該当する行為はすべきではないからです。
「『ハード・ブレグジット』も厭わない」との姿勢をジョンソン新首相が見せているのですから、「発言が現実のものになる」との認識を持って準備しておくことは政府および企業の責務と言えるはずです。
9月頃から『ブレグジット』に関するニュースが再び注目される形になるでしょう。イギリスは「タンカー船の拿捕」を巡り、イランとの緊張も高まっている状況にあります。
日本経済にも大きな影響が出る『ブレグジット(= 金融面)』と『ホルムズ海峡(= エネルギー資源)』の2点でジョンソン新首相がどのような方針で政治を進めていくことになるのかが注目点と言えるのではないでしょうか。